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目川探偵事務所The GORK 2部「十龍・チェルノボグ」編

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The GORK   13: 「五番街のマリー」

The GORK 13: 「五番街のマリー」

13: 「五番街のマリー」

「私の名前は只野マリー、勿論、本名じゃないけど、もう本名なんて忘れちゃったわ。」
 微苦笑を口元に浮かべながらマリーと名乗った女が、俺の肩から上腕にかけてを包帯で手際よく巻いていく。
 マリーの身体からは、サーファーの女の子達が良く付けているボディコロンの匂いがした。
 俺はその手元を眺めながら、自分の事をアクション映画の中の傷ついた主人公のようだと間抜けた事を考えて

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The GORK   14: 「気絶するほど悩ましい」

The GORK 14: 「気絶するほど悩ましい」

14: 「気絶するほど悩ましい」

 ミッキーとの会見以外、主だった収穫もないまま過ぎ去った二日目の夜中、俺のスマホが震えた。
 蛇喰に持って行けと、指示されたスマホだった。
 平成十龍城の中では電波ごと盗聴されているような気がしたが、蛇喰の呼び出しに応じないわけには行かなかった。
 俺は素早くマリーの気配を彼女の寝室に探ってから、部屋を抜け出て、夜間は半分照明を落としてある住民用エントランスに出

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The GORK  15: 天使のお菓子 マリービスケット

The GORK  15: 天使のお菓子 マリービスケット

15: 天使のお菓子 マリービスケット

 三日目、俺は各階のエレベーター前にあるエントランスフロアを巡り歩いて、マンウォッチングに励んだ。
 それは、煙猿の姿を探す為でもあったし、蛇喰のいう白目十蔵の手がかりを掴むためでもあった。
 それで判ったのは、平成十龍城の住人達は、下のショッピングゾーンの関係者以外は、ほとんど自分の部屋から出てこないという事実だった。
 エントランスフロアに置かれてある

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The GORK  16: 「『いちご白書』をもう一度」

The GORK  16: 「『いちご白書』をもう一度」

16: 「『いちご白書』をもう一度」

 マリーに教えられた展望フロアーに向かう非常階段を探している間に、俺はこの階で小さな映画館を発見した。
 平成十龍城が今の姿になるまでは、ビル自体のインテリジェントぶりが売りだったのだから、この映画館の前身は、公共用に設置されたオシャレな視聴覚施設だったのだろう。
 何気なく「受付」にあたるブースの壁に貼ってある上映プログラムを見て、俺は思わず腰を抜かしそう

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The GORK  17: 「遠くで汽笛を聞きながら」

The GORK  17: 「遠くで汽笛を聞きながら」

17:「遠くで汽笛を聞きながら」

「昔、俺が助けた、。それであんた、今は白目十蔵と呼ばれているのか?」
 記憶の底に、繁華街の裏路地に連れ込まれ、宋の履くヤクザ靴の尖った靴先で脇腹を蹴りまくられ、のたうち回っている若いチンピラの姿が微かに浮かんでくる。
 だが俺には、そのチンピラを「助けた」という記憶はない。
 たまたま宋が、自分のそんな姿を堅気の友人である俺に見られるのが嫌で、蹴り込むのを程々

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The GORK  18: 「ガンダーラ」

The GORK  18: 「ガンダーラ」

18:「ガンダーラ」

 猪豚の次は河童、、そして額にワッカのある煙猿。
 これじゃ、まるで西遊記だ。
 ・・じゃぁこの僕は三蔵法師なのか。
 三蔵法師はテレビの世界じゃ、ずーっとノーブルな顔立ちをした女優が演じるものと決まっている。
 そしてハゲヅラが似合う女優は数少ない。
 僕は男子で、一度、女子に化けて、もう一度、男子になるわけだから、三蔵役の女優が男装をしてる状態との関係は、、えーい、もう

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The GORK  19: 「12時過ぎのシンデレラ」

The GORK  19: 「12時過ぎのシンデレラ」

19: 「12時過ぎのシンデレラ」

 初めて同性の男とキスをした。
 なんとも言えず不思議な感じがしたし、正直に告白すると、恐ろしく興奮した。
 それでも俺とマリーは、結ばれなかった。
 肌を合わす前に、自ら身を引いたのはマリーの方だった。
 蛇喰への自分の想いを思いだし、それを大切にしようとしたのだろうか、それは判らない。

 とにかくその翌日、俺はマリーに教えて貰ったパスワードと、非常通路

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The GORK  20: 「禿山の一夜 魔女たちの集合。そのおしゃべりとうわさ話」

The GORK  20: 「禿山の一夜 魔女たちの集合。そのおしゃべりとうわさ話」

20: 「禿山の一夜 魔女たちの集合。そのおしゃべりとうわさ話」

 その巨大倉庫は夢殿三区の外れの寂れた工場地帯にあった。
 つまり酔象川の川原に近い。
 倉庫前の広場には数台の車が止めてある。
 いずれも場所柄に似合わない高級車だ。
 倉庫の入り口には数人の物騒そうな男達がたむろしていて、僕たちが近づいていくと、中で一番頭の良さそうな男が出迎え役をかって出てきた。
 ピアノの白の鍵盤見たいな歯

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The GORK  21: 「禿山の一夜 サタンの行列」

The GORK  21: 「禿山の一夜 サタンの行列」

21: 「禿山の一夜 サタンの行列」

「お二人ともチェルノボグは初めて?」
 妙にテカテカした素材で出来た、竜の模様のある白いチャイナドレスの女が近づいて来た。
 背が高くて筋肉質な身体に、白い生地がぬめるようにまとわりついている。
 でもその生地はラバーでもない、PVCでもない、、一体何で出来ているんだろう、、、それにしてもこの女、腰は見事にくびれているけれど、肩幅が立派過ぎる。
 その女もゴ

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The GORK  22: 「禿山の一夜 サタンの邪教賛美」

The GORK  22: 「禿山の一夜 サタンの邪教賛美」

22: 「禿山の一夜 サタンの邪教賛美」

 俺は、文字通り「早鐘のような鼓動」を味わっていた。
 もしかしたら窃盗犯の何割かは、金品目当てではなく、この興奮を味わいたくて、盗みを働いているのではないかと俺は思った。
 部屋から出て行く十蔵の後ろ姿を見届け、緊急避難通路にある緊急電話からパスワードを打ち込み、十蔵の部屋のドアノブに手をかけた。
 ドアが開いた瞬間の喜びから、いつ十蔵が帰ってくるのか

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The GORK  23: 「禿山の一夜 魔女たちの盛大な夜会」

The GORK  23: 「禿山の一夜 魔女たちの盛大な夜会」

23: 「禿山の一夜 魔女たちの盛大な夜会」

 俺はついに、オルゴン蓄積器こと、オルゴン・アキュムレーターを見つけた。
 それは悪の秘密結社の秘密基地等ではなく、何の変哲もないマンションのテーブルの上に置かれてあった。
 日帰りキャンプに持っていくような、クーラーボックス程度の容量の代物だった。
 今は、持ち運ぶ必要がないためか、透明カバーが剥き出しになっていて、内容物が丸見えになっている。
 

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The GORK  24: 「どうにも止まらない。」

The GORK  24: 「どうにも止まらない。」

24: 「どうにも止まらない。」

 下りのエレベータに駆け込んだ俺は、このエレベーターが降りるのにいつもより倍以上の時間をかけているのではないかと思った。
 それで俺は、睨み付ければ降下スピードが上がるのではないかという程、階移動を表示するパネルを擬視していた。
 そのディプレイが突然止まった。
 ショッピングゾーン階との共通フロアまで、あと3つの階だった。
 そこでエレベーターに乗り込んで来た

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The GORK  25: 「夜と朝のあいだに」

The GORK  25: 「夜と朝のあいだに」

25: 「夜と朝のあいだに」

 ※今回の章は、やや過激な性的・暴力的表現が含まれますので「課金制限」を設けたいと思います。
 尚、通常版は「小説家になろう」に本作品をアップしていますので、そちらをお読みください。
http://ncode.syosetu.com/n6823dl/25/

前章 https://note.mu/zainitinihonjin/n/nafebcb503bfa
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