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クシシュトフ・ザヌーシ監督『太陽の年』光と影が躍動するクラシカルな名作


<作品情報>

第2次世界大戦終わりのポーランドの街で出会ったアメリカ兵とポーランド女性の愛の行方を描く。製作はミハウ・スチャルビッツとミヒャエル・べーメ、監督・脚本は「コンスタンス」のクシシュトフ・ザヌーシ、撮影はスラヴォミル・イトシアク、音楽はヴォイチェフ・キルアルが担当。出演はマヤ・コモロフスカ、スコット・ウィルソンほか。

1984年製作/106分/ポーランド・西ドイツ・アメリカ合作
原題:A year of the Quiet Sun
配給:俳優座シネマテン
劇場公開日:1988年5月14日

https://eiga.com/movie/46489/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

上村
ザヌーシ監督は初鑑賞。というか日本で現状観られる作品がほぼないんですよね。淡々としつつ、時々ギョッとするような場面も入れてくる、非常に上手い作品でした。
なんといっても光と影の使い方が素晴らしいんです。見つめ合う二人に後ろからカメラを当てたショットが好きですね。
ダンスは妙に上手すぎて笑ってしまいました。想い出の中で彼らは踊るのです。ジョン・フォード『駅馬車』をもう一度観たくなる名作です。

クマガイ
一見すると淡々としていますが、全体を通してみると情熱に満ちた作品だったと感じました。
この作品で特筆すべきは照明──光の使い方の巧みさですね。
どのシーンでも全く違和感がなく、それどころか物語に完全に惹き込まれるような印象的な光の使い方が多かったです。

北林
『太陽の年』は、戦後のポーランドの厳格な背景の中で、アメリカ人のノーマンとポーランド人のエミリアの言葉の壁を超えた愛を描いた作品です。とても重い話なんですが、ちらちらとコメディ的要素があるんです。
まず、彼らの出会い方が、笑えるんです。エミリアが絵を描いているときにノーマンが偶然にもその近くで立ち小便をするという、最悪なシチュエーションから始まります。また二人は言葉が通じませんから、通訳を呼んで三人で会話をするシーンがありますが、そこもチグハグな会話でクスリと笑えるんです。
しかし、戦後の話なので、ベースとしては非常に重たい。はたまた閉塞感たっぷりの室内のシーンがこの映画の多くを占めています。息苦しい作品とも言えるのです。
でも、最後のシーンがすごい。二人の愛が自由に飛び回るような激しい運動が画面を占めます。これは本当にすごい。激しくて激しくて、驚いてしまうくらい目まぐるしい動きなのです。この嘘偽りのない彼らの動きは、僕は目の当たりにできたこと、心底良かったと思っています。

吉原
戦後間もないポーランドでの未亡人と米兵の愛を描いた作品です。建物は破壊され、治安も悪化した街の中で、言語の隔たりがあるにもかかわらず愛し合う二人の物語は、印象的な光の使用も相まって非常に美しく描かれています。ストーリー自体はよくあるラブロマンスなので、意外性はなかったですが、先にも述べた特徴的な光の使用と終盤のダンスなど記憶に残るようなシーンが多い良作でした。

<おわりに>

 とにかく光と影の使い方が上手い作品でしたね。よくあるラブロマンスではあるものの、コメディチックな描写もあり飽きさせない作品でした。
 ただ、非常に地味な作品ではあるので観る人は選ぶかなという作品です。

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