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機械/深層学習を用いたコミュニケーション解析の最前線〜人とAIの調和がもたらす未来の社会とは?〜

今回は、オンラインセミナー【機械/深層学習を用いたコミュニケーション解析の最前線〜人とAIの調和がもたらす未来の社会とは?〜】の内容をレポートします!

本セミナーでは20年近く人工知能の開発・研究に従事され、人工知能学会理事・編集委員も務められる株式会社スクウェア・エニックス・AI&アーツ・アルケミー取締役/CTOの三宅 陽一郎氏と、ZENKIGEN代表の野澤とデータサイエンティストの勝田が、「コミュニケーション×AI」 の未来についてトークセッションを行いました。

前回のオンラインセミナー【未踏の地に挑戦するデータサイエンティストがつくる「未来の働く」とは】に続き、今回も特に下記のような方にはとても参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

・急成長市場でデータサイエンティスト(AIエンジニア)として挑戦したい方
・「人」×「データ」、「コミュニケーション」×「AI」に興味のある方
・データサイエンティスト(AIエンジニア)としてのキャリアに悩まれている方

登壇者紹介


ZENKIGENのAI社会実装「人とAIの調和による新たな社会づくり」

ーまずはじめに、AI×HRで事業を展開するZENKIGENがどのようにAIを社会実装しているのか、そのアプローチ方法やコミュニケーション解析について教えてください。

野澤:当社は『テクノロジーを通じて人と企業が全機現(=人が持つ能力のすべてを発揮するという禅の言葉)できる社会の創出に貢献する』というVisionのもと、大人が最も多くの時間を使う“働く”ことに直結するHR領域で事業を立ち上げ、Web面接サービス「harutaka(ハルタカ)」からスタートしました。

AIにはビッグデータが必要不可欠ですが、これまでのHR領域における膨大なデータはほとんどがテキスト情報であり、動画のビックデータはほぼ存在しませんでした。
「harutaka」は、このビッグデータの収集エンジンとして位置付けられています。我々が保有する1分間の動画はWebサイト3,600ページ分の情報量に相当するビックデータであり、さらには「表情」まで解析できる非常に鮮明な動画です。人が一対一で話しているという「コミュニケーション」に特化した動画というのは希少性が高く、その動画データ数は創業から5年で300万件を突破しており、国内ではトップクラスの保有数となっております。
もちろん、データを保有しているだけでは意味がなく、データを活用して事業化し、社会実装をしていかなければ意味がありません。手前味噌ですが、これを実現しているZENKIGENの強みは、①大手企業を中心とした約500社の顧客基盤②指数関数的に増え続ける動画データ③事業の構想力④AIを完全内製できる技術力⑤UI/UXを洗練できる専門家が在籍している社内体制です。特にAIを完全内製できる技術力には創業時からこだわっており、自社で動画データを保有していながらAIの開発も内製している会社は世界的に見てもまだまだ少ない と言えます。

また、当社のプロダクトの開発コンセプトは一貫して『人とAIの調和』を大切にしており、AIが“人を評価する”世界ではなく、人とAIが持続的に調和する世界を目指しているため、あくまでもAIが“人をサポートする”ことで、人々がより生産性高く、幸せに働ける社会(=全機現社会)を後押ししていくことにAIを活用しています。

では、具体的な事業展開についてですが、大きく分けて2つございます。採用のDXを支援する「harutaka(ハルタカ)」と、社内のコミュニケーション改善を支援する「revii(リービー)」を提供しています。

それぞれのサービスにAIを搭載しており、現在3つのAIプロダクトがございます。

1つ目の「harutaka EF(エントリーファインダー)」は、「harutaka」の基本機能である「エントリー動画」の動画データをAIが解析し、候補者の表現特性や印象を定量化する機能です。エントリー動画から表情や声など様々な情報をAIが解析することで、従来のエントリーシートや適性検査などの文字情報では分からない、また評価のバラつきが大きくなる候補者の「印象値」を客観的に定量化します。これによって、面接官のバイアスを排除し、より多面的で公平な採用をアシストしています。

2つ目の「harutaka IA(インタビューアセスメント)」は、「harutaka」の基本機能である「ライブ面接」の動画データをAIが解析し、面接官にフィードバックする機能です。
候補者と面接官の表情の変化や発話比率などを面接品質の指標としてAIが解析し、定量化したデータをもとに、面接中に面接官へアドバイスを提示することでコミュニケーションの改善を促します。さらに面接実施後には、より詳細なフィードバックレポートを面接官に提示することで、面接官のスキル向上をサポートし、候補者の面接体験向上へと貢献しています。

そして、3つ目の1on1改善サポートAI「revii(リービー)」は、マネージャーとメンバーの1on1におけるコミュニケーションをAI解析し、その関係性を定量化するプロダクトです。
AI解析により、関係構築に役立つ改善アクションをマネージャーに提案することで、マネジメントスキルの改善をサポートします。これによって、メンバーやチーム、そして組織全体がより生産的でより良い状態へと変化し、企業の継続的な成長に貢献できることを目指します。

現在は主に採用と職場のHR領域において事業を展開しておりますが、今後は我々が磨いたAI技術とデータをもとに「コミュニケーションAI」としてHR領域に留まることなく、あらゆる領域におけるコミュニケーションの質向上に取り組んでいきたいと考えております。


最新のコミュニケーションAI事例

ーコミュニケーション×AIに関して、ゲーム産業ではどのような事例やコンテンツがありますか?

三宅:ゲームのようなデジタルコンテンツにおいては、AIとの対話が非常に重要です。
そしてゲーム内でのコミュニケーションにおいて一番矢面に立っているのが「キャラクター」です。最近では、ゲームAIの仮想世界の制御システムを都市全体のAIシステムとして、スマートシティを現実に組み込もうと構想して研究を進めています。これがキャラクターとどう絡むのかというと、都市がAI化したときに「都市のAI」と「一般ユーザー」とのコミュニケーションにおいて、間にキャラクターが入るイメージになります。

例えば、我々が日頃使っているスマートフォンにはたくさんのアプリケーションが入っていますが、本来は複数のアプリケーションは不要で、一体のエージェント(AI)があれば全て操作できるはずなのです。おそらく20年後にはアプリケーションベースの概念は消えて、エージェントベースに変化していくでしょう。これが「エージェント指向ソサエティ」と言われるもので、コンピュータの代理としてキャラクターがあり、そのキャラクターとユーザーが会話するAI技術がとても重要になります。

先ほどのスマートシティにおいても、都市のAIシステムと人間が直接コミュニケーションを取るというよりは、間にキャラクターたちがいて、エージェントとして情報を提供してくれるようになります。
このように、今後はコンピューティング全体がアプリケーションベースからエージェントベースに変化することで、人間と人間の関係においても間にエージェントが入ってくるようになり、社会はどんどん変わっていくと考えられます。そのためにはやはりAIの会話技術や対話技術がコアとなり、社会をより良くするコミュニケーションの解析技術が主流になっていくのではないかと考えております。

(参考)ゲームAIの3種類
①メタAI:ゲーム内の一段階高いレイヤーからほかのAIを制御してゲーム全体を制御する役割をもつAI
②キャラクターAI:ゲーム内に登場するキャラクターが自身で環境を認識しながら自律的に意思決定をして行動するためのAI
③スパーシャルAI:ゲーム内の空間にかかわる思考を担うAI

ーコミュニケーションの新しい形でありながら、解析技術も非常に重要になってきそうですね。ZENKIGENにおける解析観点の事例はいかがですか?

勝田:エントリー動画を解析する「harutaka EF」においては、エントリー動画をインプットし、事前に定義された印象値の指標に沿って解析が行われた後、定量化された印象値がアウトプットされます。

様々な定義作りや開発にはディープラーニングを用いています。
そして非常に鮮明で質の高いデータから、音声解析やテキスト情報だけでなく、目の動きや体の動き、表情を解析するなどマルチモーダル解析しているところがポイントです。これによって、従来のエントリーシートや適性検査などのテキスト情報では分からなかった応募者の「印象値」を定量化することに成功しています。このような技術はここ数年で一気に進んできている領域ですね。

こうした中で、私たちデータサイエンスチームは、これまでのAIプロダクトの知見を集約することで、プロダクトに依らない汎用的なコミュニケーション解析エンジンを開発するという構想をしています。これが実現すると開発の効率化や新規サービスの開発速度の向上が見込まれます。

私たちはデータサイエンスチームと一言で言っても、データサイエンスだけではありません。人文学系の研究者とともに開発を進め、顧客から課題点をヒアリングするなど社会的な視点をはじめ、コミュニケーションは人とのインターフェースであることから、UIデザインも重要になります。そのため、ビジネスサイドから、データアナリスト、デザイン、研究、開発など他部署と近い距離で連携しながら日々活動しています。

人とAIの対話における社会実装の可能性

○AIが人間を理解する

ー人とAIの対話における社会実装について、これから社会はどのように変化すると思いますか?

三宅:これからの社会は、AIの技術進歩はもちろんのこと、AIがますます私たちの身近に存在するようになると思います。そうなった際に、AIに今後求められるようになるのは「いかに人間を理解するか」ということです。先ほど勝田さんがおっしゃっていたZENKIGENのコミュニケーション解析エンジン。とても名前が素敵で、“人間を悟る”ということだと感じました。
AIが人間の様々な感情やその人がどのような人なのかを理解するというのは時代の中心的な課題になると考えています。

勝田:面白いですね。データが貯まることでパーソナライズが可能になるだろうということですね。まさに先ほど話した「harutaka EF」を例に取ると、これまで採用の場面で評価者の主観や直感に頼らざるを得なかった判断において、AIの解析データが貯まることで応募者の特性などでタイプ分けができるようになってきています。このカテゴライズはパーソナライズにはまだまだ及びませんが、一つ大きな未来があると考えています。

○無意識レイヤーのコミュニケーションへのアプローチ

野澤:今後、AIが人のことを理解する存在になっていくと、人間は様々な場面でAIに相談したり、考えることをアウトソーシングするような世の中になっていくと思いますが、AIが個人の思考や特性などの学習を重ねてどんどん発達していくことで、自分のことを自分以上に理解するようになる可能性は十分にありえるのでしょうか?

三宅:十分にあり得ると思います。
“人間の人間に対する理解”とは大きく違うと思いますが、“人間の無意識の領域に対する無意識的な発露”に関しては人間よりAIの方が的確に捉えることができるのではないかと思います。例えば、ゲーム内でのユーザーの無意識の癖は統計を取るととても分かりやすく、ゲーム上の動作に反映させて実装されることもあります。
しかし、AIは表面的なことを理解するのは得意ですが、深い次元で何か理解することができるのかというと、それは今後の課題だと思います。その人のトラウマや思い出、心情などまで深く入っていくということはまだ出来ていません。ただ、将来的にそこまで理解することができるようになると、世の中は大きく変わると思いますね。

対話というものはその内容以外にも、身振りや手振り、目線、顔や首の動きなど複合的な要素から成り立っており、「意識のレイヤー」と「無意識のレイヤー」が並行して進んでいます。Zoomなどのオンラインツールでは意識のレイヤーしか捉らえることができず、言語以外のデータを取ることで初めて無意識のレイヤーのコミュニケーションがわかるようになります。そのため、先ほどのZENKIGENさんのマルチモーダルなデータはとても重要なデータになってきます。
つまり、身振り手振りを含め仕草や音声などマルチモーダルにデータを取得するということは、言語には表れていないその人の深層心理をモニターしているということになりますので、言語だけを解析するよりも、より深みのある情報が得られるのだと思います。


コミュニケーション解析が目指していくビジョン

ーコミュニケーション解析を通じて企業として目指すビジョンや実現したい社会について、どのようにお考えでしょうか?

野澤:コミュニケーションによって、人は幸せになることもあれば不幸になることもあり、やる気が出ることもあれば、鬱になってしまうこともあります。そのため、コミュニケーションはとても重要で人間に与える影響はとても大きなものです。故に、コミュニケーションにおけるAI開発は、日本人こそが取り組むべきだと思っています。

現在、欧米、中国、ヨーロッパ、日本がAI開発の主流となっていますが、技術的には特に中国とアメリカが進んでいます。彼らは人種的に合理主義であるため、開発されるAIも合理的に物事を捉えていることが特徴であり、日本との大きな違いです。例えば、採用の場面ではジョブ型が主流のため、一定の仕事ができるかできないかを基準にAIが評価し、効率的に合否をつけていくということが実際に行われています。
映画の世界でもその違いは明確で、欧米では「ターミネーター」のようにAIやロボットが人間と敵対する映画が多くありますよね。一方で、日本では「ドラえもん」や「鉄腕アトム」のように人間はAIやロボットとお友達になれてしまうという価値観が浸透しているのではないでしょうか。実際、欧米の方に日本人のこういった感覚が羨ましいと言われたこともあります。
「和を以て貴しと為す」という精神を持つ日本人だからこそ、人とAIが調和することで人や社会をより豊かにするコミュニケーションの実現が可能になるのではないかと強く思っています。

三宅:野澤さんがおっしゃる通り、海外ではAIがどんなに進化しても、人間とAIは上下の縦の関係でしかないですよね。上の人間から下のAIへの命令、そして下から上への報告だけなので、開発することもあまり難しくありません。
一方で、人間とAIの横の関係をつくるのは、命令と報告の関係ではなく、“相手の意図を読み、理解する関係”となるので、とても難易度が高くなりますよね。

勝田:作り手として「日本人らしさ」に縛られ過ぎるのはよくないと思っていますが、やはり西洋人は個人主義であるのに対し、日本などの東洋人は集団主義であり人との繋がりに幸せを感じやすいという部分があります。そのため、海外では生み出せない世界観や発想が我々には生み出せるのではないかと思っています。


データサイエンティストとしてZENKIGENで働く理由

ー最後に、勝田さんご自身が、コミュニケーション解析に興味を持ったのはなぜでしょうか。ZENKIGEN社への入社の決め手と併せてデータサイエンティストとして感じていらっしゃる事業成長の可能性について教えてください。

勝田:元々私はポストドクター(博士研究員)として宇宙物理学の研究に従事しており、文字通り天文学的なスケールでの仕事をしていました。AI技術が世の中に拡がるタイミングで、ビジネスを通じて社会変革を起こしていると実感できる領域に携わりたいと考えるようになりました。人間は「人の間」と書くようにコミュニケーションは人間の本質だと以前から考えていたことから、コミュニケーション解析ができるZENKIGENに興味を持ちました。

入社の一番の決め手は、ZENKIGENのVisionへの共感ですね。ZENKIGENが事業を展開するHR領域においては、現在はデータやAI技術が少しずつ蓄積されてきているものの、業界全体は旧態依然としているところがまだ多くあるように感じています。例えば採用においては、いまだにエントリーシートだけで応募者を不合格にしているところもあり、昭和の採用の形が続いています。時代とともに採用の在り方をアップデートしていき、企業にとっても応募者にとってもより良い方向へと変えていきたいです。そして何よりその可能性を十分に感じることもできていて楽しいです。


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