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親友が家に来た。
帰り際に「これあげる」と一万円をもらった。
ジャケットを羽織りながら、ポンと渡された”ほんの気持ち”と書かれたポチ袋。

私はその時、家のリビングで帰り支度をする彼女を、見るともなく眺めていた。
今日の彼女は、UNIQLOのスキニーパンツに白のロンTにデニムジャケットを着ている。
そして、今日もヒョウ柄のカバンだ。
こんなにアニマル柄が似合う女も珍しいし、私には似合わないので、いいなぁと思って眺めていた私に渡された一万円。
さて、困った。何に使おう。

彼女とは高校生からの付き合いだ、もう20年になる。
出会った頃の、私たちが高校生の頃。
いつもバカ騒ぎをしていたし、なにかにずっと怒っていたし、ずっと恋愛をしていた気がする。
彼女とのケンカもたくさんあった。

よく彼女の家に泊めてもらっていた私は、ケンカをして彼女の家に泊まれないことが悲しかった。

彼女の実家が好きだった。
お母さんが換気扇の下でタバコを吸いながら作るご飯はとても美味しかった。
私の母はタバコを吸わない専業主婦だったので、タバコを吸うお母さんも働くお母さんを見るのも初めてでとても新鮮だった。

そして偏食がひどい私は、彼女の家でもあまりご飯が食べられず、彼女とお母さんにいつも「本当に好き嫌いが多いね!」と怒られ「えへへ~」と笑ってごまかしても、ごまかされてくれず「いいから一口食べなさい」と毎回怒られていた。
なんとか一口食べるとお母さんがにやりと笑ってくれるのが嬉しかった。

彼女が実家を出ても、彼女は「いいから食べろ」
とご飯屋さんに連れて行ってくれて私の好き嫌いを無くしてくれる。

彼女と彼女の実家のおかげで食べられるようになったものがけっこうある。
茄子、キムチ、白子、ルイボスティー、茶わん蒸し、パプリカ。皆彼女と彼女のお母さんのおかげで食べられるようになったものだ。

ここまで書いて、はたと思った。
ケンカの理由も仲直りのきっかけも全く思い出せない。

仲直りは、当時付き合っていた彼氏に「仲直りしたほうがいいよ」と言われしぶしぶ話しかけたような気もするし、彼女が折れてくれた気もする。
理由はもう思い出せない。

一緒にミニスカートをひるがえしていた私たちは、お互いに子持ちになり、あの頃の砂っぽいけれど暖かい空気を共有できる唯一の友人になっている。

彼女がくれた1万円は、今年の春から始まった私の別居に対して「おつかれ」の気持ちと「がんばれ」の気持ちなのがよくわかる。
けれど、彼女は何も口にしない。
なにも言わずに「好きに使いな」「おこずかいだからね」としか言わなかった。
「うん、わかった。ありがとう。」だけで私が分かったことが伝わる感じがとても貴重なものだと知っている。


親友がくれた1万円は、たぶん好きな香水を買うと思う。

彼女は香水が嫌いだから買った香水はおすそ分けをできないけれど、彼女からもらった香水を身にまとえば私の勇気になると信じている。

PROFILE

【zizideza】なかちゃんプロフィール
ファッションコーチング/パーソナルスタイリスト

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01.一軍だけのクローゼットを作ろう講座

02.ファッションと向き合うコンサルティング講座

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なかちゃん|ファッションコーチング・パーソナルスタイリスト
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