宮本松

【月・水・金に配信予定】身近に起こる出来事を、時には真面目に、時には面白く、エッセイに…

宮本松

【月・水・金に配信予定】身近に起こる出来事を、時には真面目に、時には面白く、エッセイにまとめています。読んでもらえるとうれしいです。娘のミドリー、再婚夫のテル坊、息子のドラちゃんなどの家族が登場します。童話は不定期で配信中。

マガジン

  • みじかいお話。

    こどもの頃の体験や空想をもとに、5000字くらいのお話を作りました。短めのストーリーのものを掲載しています。

  • ながいお話。

    動物たちも登場する、ちょっと不思議な世界のお話です。長めのストーリーは分けて掲載しています。

記事一覧

固定された記事

#37居心地のいい図書館。

みなさんは、一週間に、あるいは一ヶ月に何回くらい図書館に出かけますか。わたしは、週に3回から4回、足を運んでいます。まるで、自分の仕事が図書館に通うことであるかの…

宮本松
4か月前
67

キツネになったココ。(2)

<2> 「信じられない?じゃあ、いいよ。証拠を見せてやるから」 キツネはニヤっと笑った。 「いいかい、おいらの言った通りにしてみて。目を閉じて心の中で十数えるんだ…

宮本松
10時間前
16

#93「どうしました?」の男の子(コンビニ物語3)。

仕事には一緒に働く相手(同僚)によって、楽しく感じられたり、反対にしんどさが増してしまったりする、なんとも不思議な性質があります。ミドリーの働くコンビニでも、次…

宮本松
1日前
24

#92ソフトクリームの試練(コンビニ物語2)。

「今日もやらかしてしまったよ」 これは最近、バイトから帰ってきたミドリーの報告に含まれているフレーズの一つです。 「ええ、またなの?それってミドリー?」 「ううん…

宮本松
3日前
27

#91ひよこマークをつけた人々(コンビニ物語1)。

娘のミドリーがコンビニのバイトに行くようになってから、五ヶ月が過ぎようとしています。はじめの頃あれほど緊張していたのが嘘のように、今ではバイトの朝だけは目覚まし…

宮本松
5日前
34

キツネになったココ。(1)

<1> 漢字の書き取りノートをテーブルの上に広げたまま、ココはぼんやりしていた。何かを考えているわけではない。ただボーッとしていた。宿題をやりたくないわけでもな…

宮本松
6日前
20

#90電話とLINE。

わたしは実家に電話をかける時以外は、自分からはめったに電話をかけません。元々、苦手なほうです。電話はかけるタイミングも切るタイミングも考えなくてはならない、なか…

宮本松
8日前
30

#89お肉屋さん。

二月にぐうぜん見つけた小さなお肉屋さん(精肉店)は、家から自転車で20分ほどのところにあります。「もつ煮」と書かれた山吹色の旗が、店先で風にゆらゆらゆれているのが…

宮本松
10日前
26

#88宮本松、再始動。

記事を読んでくれている皆さま、いつもありがとうございます。表紙のイラストがこれまでと変わっていることに「あれ?」と思われた方もおられるかもしれません。そうなので…

宮本松
12日前
34

マフラーを巻いたうさぎ。(5)

< 5 > 翌週の金曜日の夜。 (やった、とうとう出来た) ようやく初めてのマフラーが完成した。巻き心地をたしかめるべく自分の首に巻いて鏡の前に立ってみる。いい…

宮本松
2週間前
21

#87アイロン瞑想。

(もしかして、この時間が一番、わたしの頭の中は整っているかもしれない) それは週に一度か二度、アイロンをかける時。アイロン台の足を伸ばし、小さなひし形のアイロン…

宮本松
2週間前
32

#86やあ、また君の季節かい。

「いた」(テル坊) 「何が?」(わたし) 「…たぶん、蚊」(テル坊) 「あちゃあ」(わたし) 寝苦しい夜に、なかなか寝付けなくて、となりでゴロゴロ布団の上で転がって…

宮本松
2週間前
26

#85手ごわいクッキー。

「うーん、これを買うべきか、買わざるべきか」 今日もへんなおばさん(わたし)が、スーパーのお菓子売り場で腕組みしながら、考え込んでいます。どうやら品物選びが難航…

宮本松
2週間前
39

マフラーを巻いたうさぎ。(4)

(うさぎさん、心配してるかな) まい子は自分の手のひらの上にある懐中時計を見つめながら、うさぎのことを考えている。この前の土曜日、うさぎと別れたあとに図書館の司…

宮本松
3週間前
27

#84そんな風に生きているから。

心がざわざわして、理由もなく落ち着かなくなった時、わたしは銀色夏生さんのエッセイを読みたくなります。 銀色さんを知ったのは高校生の時。友だちから借りた詩集を読み…

宮本松
3週間前
49

#83感謝とは湧いてくる思い。

「ありがたいことだよ。感謝しないとな」 何かにつけて感謝、感謝と父が口にしていたのは、わたしが高校生の時でした。 何事にも感謝する。感謝すべきことは、日々の暮ら…

宮本松
3週間前
44
#37居心地のいい図書館。

#37居心地のいい図書館。

みなさんは、一週間に、あるいは一ヶ月に何回くらい図書館に出かけますか。わたしは、週に3回から4回、足を運んでいます。まるで、自分の仕事が図書館に通うことであるかのように、図書館に出現していることになります。

それほど通うのには、理由はあるのか。まずは家から徒歩10分足らずという、近場にあること。それから蔵書数が多くて、さまざまなジャンルの本がそろっていること。最後に、居心地がいい場所であること。

もっとみる
キツネになったココ。(2)

キツネになったココ。(2)

<2>

「信じられない?じゃあ、いいよ。証拠を見せてやるから」
キツネはニヤっと笑った。
「いいかい、おいらの言った通りにしてみて。目を閉じて心の中で十数えるんだ。それからもう一度、鏡の中をのぞいてごらん」
ココはギュッと目を閉じた。一、二、三、四…、十。しずかに目を開けてみた。

鏡には、文房具屋さんが写っていた。学校のすぐそばにある、いつもおばあさんが店番をしているお店だ。お客さんはだれもい

もっとみる
#93「どうしました?」の男の子(コンビニ物語3)。

#93「どうしました?」の男の子(コンビニ物語3)。

仕事には一緒に働く相手(同僚)によって、楽しく感じられたり、反対にしんどさが増してしまったりする、なんとも不思議な性質があります。ミドリーの働くコンビニでも、次から次に新しいバイト生がやってきては、嵐を巻き起こしているそうです。

「どうしてそんなに人が必要なんだろうね?」(わたし)
「さあ、よくわからないね」(ミドリー)
店長の考えなのか、本部の方針なのか。いちバイト生のミドリーには、その方針の

もっとみる
#92ソフトクリームの試練(コンビニ物語2)。

#92ソフトクリームの試練(コンビニ物語2)。

「今日もやらかしてしまったよ」
これは最近、バイトから帰ってきたミドリーの報告に含まれているフレーズの一つです。

「ええ、またなの?それってミドリー?」
「ううん、ちがう。わたしはもう、あれには手を出さないって決めてるから」
自分の実力をよく分かっているミドリーは、早々に諦めたようです。

なんの話かというと…。暑くなってきた季節にがぜん売り上げを伸ばすソフトクリーム作りのことなのです。

有名

もっとみる
#91ひよこマークをつけた人々(コンビニ物語1)。

#91ひよこマークをつけた人々(コンビニ物語1)。

娘のミドリーがコンビニのバイトに行くようになってから、五ヶ月が過ぎようとしています。はじめの頃あれほど緊張していたのが嘘のように、今ではバイトの朝だけは目覚まし時計のアラームでちゃんと起きて、身支度をととのえ、朝ご飯もしっかり食べて、彼女は出かけていきます。

「うちのコンビニは店内がすごくきれいなんだよ。トイレの掃除も手抜きしてないし」
観察するのが得意なミドリーは、コンビニのバイトを始めてから

もっとみる
キツネになったココ。(1)

キツネになったココ。(1)

<1>

漢字の書き取りノートをテーブルの上に広げたまま、ココはぼんやりしていた。何かを考えているわけではない。ただボーッとしていた。宿題をやりたくないわけでもない。でも、やる気が出てこない。ボリュームを小さくしぼったテレビの、明るすぎる画面の光が目のはしに写り込んで、チラチラとまぶしい。

「ココ、これどうしたの?」
ママが手ににぎっているのは、まだ削られていない新品のえんぴつだった。夕食の片付

もっとみる
#90電話とLINE。

#90電話とLINE。

わたしは実家に電話をかける時以外は、自分からはめったに電話をかけません。元々、苦手なほうです。電話はかけるタイミングも切るタイミングも考えなくてはならない、なかなかにスキルの必要なコミュニケーションツールだと思っているので、なるべくならLINEですませたいと思ってしまうのです。

文字を打つのが苦にならないわたしにとって、LINEは伝えるべきことを忘れずに書き込める安心感があります。言いたいことを

もっとみる
#89お肉屋さん。

#89お肉屋さん。

二月にぐうぜん見つけた小さなお肉屋さん(精肉店)は、家から自転車で20分ほどのところにあります。「もつ煮」と書かれた山吹色の旗が、店先で風にゆらゆらゆれているのが目印です。地元に根ざしたお店らしく、夕方はお客さんが店の前にあふれていることもあります。

(良かった。こんなお店が見つかって)

スーパーと農協以外に、贔屓にしているお店のないわたしには、時々買い物に行くのが楽しみな大切なお店です。

もっとみる
#88宮本松、再始動。

#88宮本松、再始動。

記事を読んでくれている皆さま、いつもありがとうございます。表紙のイラストがこれまでと変わっていることに「あれ?」と思われた方もおられるかもしれません。そうなのです。今回からエッセイについてはnoteの画像を利用させていただくことにしたのです。

これまでは娘ミドリーにイラストを描いてもらっていました。宮本松というのは二人のユニット名で、わたし(真希おかげ)が文章を、娘ミドリーがイラストを担当し、半

もっとみる
マフラーを巻いたうさぎ。(5)

マフラーを巻いたうさぎ。(5)

< 5 >
翌週の金曜日の夜。

(やった、とうとう出来た)

ようやく初めてのマフラーが完成した。巻き心地をたしかめるべく自分の首に巻いて鏡の前に立ってみる。いいぞ、なかなかいい。極太の毛糸で編んだマフラーは弾力があって、肌にあたってもチクチクしない。中学生の女の子たちは、もっとたっぷりした幅のある長めのマフラーを巻いているけれど、うさぎが身につけているマフラーを考えると、このくらいの大きさが使

もっとみる
#87アイロン瞑想。

#87アイロン瞑想。

(もしかして、この時間が一番、わたしの頭の中は整っているかもしれない)

それは週に一度か二度、アイロンをかける時。アイロン台の足を伸ばし、小さなひし形のアイロンをコンセントにつなげ、霧吹きをセットしてから、その日の分のシャツを一枚ずつ、台の上に広げていきます。

アイロンがちゃんと熱くなっているか、手を近づけて確かめてから、霧吹きをほんの少しシュシュッと吹いて、シャツの上をゆっくりとアイロンを滑

もっとみる
#86やあ、また君の季節かい。

#86やあ、また君の季節かい。

「いた」(テル坊)
「何が?」(わたし)
「…たぶん、蚊」(テル坊)
「あちゃあ」(わたし)
寝苦しい夜に、なかなか寝付けなくて、となりでゴロゴロ布団の上で転がっていたテル坊があいつを見つけたようです。あいつとは?もちろん蚊のことです。

「明日ベープの替えを買ってこないとね」
翌日ホームセンターで、詰め替え用のベープを三つ購入しました。家族が気ままに過ごす、それぞれの居場所に置いておくためです。

もっとみる
#85手ごわいクッキー。

#85手ごわいクッキー。

「うーん、これを買うべきか、買わざるべきか」

今日もへんなおばさん(わたし)が、スーパーのお菓子売り場で腕組みしながら、考え込んでいます。どうやら品物選びが難航しているようです。ちょっと声をかけてみましょう。

「どうしましたか?」(リポーター役のわたし)
「お菓子が日に日に値上がりしていくし、持ってみると中身も軽くて。買おうかどうしようか迷ってるんです」(お客さん役のわたし)
「もし、購入され

もっとみる
マフラーを巻いたうさぎ。(4)

マフラーを巻いたうさぎ。(4)

(うさぎさん、心配してるかな)

まい子は自分の手のひらの上にある懐中時計を見つめながら、うさぎのことを考えている。この前の土曜日、うさぎと別れたあとに図書館の司書さんがあわてて追いかけてきた。
「これ、忘れてましたよ」
それはうさぎが胸のポケットにいつもしまっている懐中時計だった。
「ありがとうございます」
時計を受け取ったまい子は、うさぎが帰って行った方にむかって走り出した。まるで司書さんから

もっとみる
#84そんな風に生きているから。

#84そんな風に生きているから。

心がざわざわして、理由もなく落ち着かなくなった時、わたしは銀色夏生さんのエッセイを読みたくなります。

銀色さんを知ったのは高校生の時。友だちから借りた詩集を読み、日常にある普通の風景を、これほどはかなく、愛おしく、懐かしい写真におさめながらが、心の奥深くに響く言葉を発することの出来る人がいるなんてと驚いたのを覚えています。

時は流れ、わたしは結婚し、慣れない育児に奮闘していた頃、育児日記のよう

もっとみる
#83感謝とは湧いてくる思い。

#83感謝とは湧いてくる思い。

「ありがたいことだよ。感謝しないとな」
何かにつけて感謝、感謝と父が口にしていたのは、わたしが高校生の時でした。

何事にも感謝する。感謝すべきことは、日々の暮らしの至るところに見つかる。身近にいる人たちにしてもらったこと、助けられたこと。今元気でいられることも有難いし、ご飯を食べられることも有難い、それから毎日、家族がそろって食卓を囲めるなんていうことは、当たり前のことじゃないんだぞと、機嫌のよ

もっとみる