武藤吐夢
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感想 夜と霧新版 ヴィクトール・E・フランクル ナチスによるユダヤ人虐殺の事実というのか収容所体験を書いた名著として有名な本です。医師という職業もあるのか客観的に描かれていて遠い感じがしました。名著ではあります。
両親と妻をアウシュビッツでなくし、当人も収容所に入れられていた医師の体験談。 あの非道な歴史事件を冷静な筆致で描いています。分析していると言ってもいいと思います。 これは名言です。 著者はユダヤ人として収容所に入れられ、仕事や地位、妻や両親も失い。自分もいつ殺害されるのかという不安の中、つまり未来に対する希望がない時間を過ごしていたのでした。 そういう人だからこそ、こういう考えに至ったのかと思えます。 生きる意味があるからこそ、人は生きることができるとも言えます。 それ
感想 月と日の后 冲方 丁 女が政争の道具だった時代に、夫に死なれ、絶対的な権力者の父が死に。その後、まるで中国の西太后のように君臨した女傑の葛藤を描いた秀作。
「光る君へ」の世界そのままでした。 びっくりしたのは道長の妻倫子が90歳まで生きのびたことでした。 息子の頼道と弟、この物語の主人公である藤原彰子も80まで生きます。 これは倫子の血だと思います。 最初の望月の章で、まだ、少女だった主人公彰子に夫の一条天皇の母藤原詮子が語る藤原家の黒歴史のインパクトが強かった。大河ドラマのダイジェスト版のようでした。ここからの話しもあるので予告編なのかもしれません。 道長の父の兼家の悪行から、兄道隆の子伊周との確執。 藤原詮子の恨み節さく
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春のとなり 高瀬 乃一 息子の無念を晴らすため江戸で薬屋をしている盲目の医師とその義理の娘の物語。息子、夫の冤罪を晴らすという目的があるが一つ一つの話しは医師と患者の物語でした。
この設定が良い。 主人公は、江戸で薬屋を営む未亡人だ。 義父である盲目の元藩医と暮らしている。 薬屋なのに、患者がやってきて治療する。 患者は貧乏人が多く薬代もまともに払えない人たちだった。 そこには金持ちとは違う理由が存在する。 それが物語の深みになっている。 義父を主人公はこう評している。 そんな奈緒は義父の元で医師の手助けをしている。 盲目の義父の目なのだ。 しかし、彼女の中には一つの想いがある。 それは・・・ 夫の命と義父の目の光、奈緒のささやかな幸せを奪
感想 少女 湊 かなえ 「人が死ぬ瞬間を見てみたい」という二人の少女の夏休みの物語。最後、あの結末は想像できなかった。遺書の謎が読後感にかなり影響してくる。
僕には、二人の少女がまったく理解できない。 それが大人になり切れていない人たちの思考なのか。 青春のジレンマなのか。 それとも世代間の格差なのか。 よくわからない感情が、その不穏なものがずっと読んでる自分に付きまとってきた。 「人が死ぬ瞬間を見てみたい」って・・・、ほんと、よくわかんない。 最初に遺書が紹介される。 その後に続くのは、「人が死ぬ瞬間を見てみたい」って考えに取りつかれている二人の少女たちの別々の夏の物語だ。 最後で、遺書の意味がわかるミステリー形式になっ
感想 俺たちの箱根駅伝 池井戸 潤 駅伝に興味がなくても、この物語の熱量の凄さには圧倒されると思う。池井戸作品の中でも珠玉の一つだと思う。
池井戸さんの小説は銀行や企業などのお仕事小説が多いのですが、スポーツを扱ったものにも優れた作品はあります。 本作は、恐らく、池井戸作品の中でもスポーツを描いたものの中では一番熱量がある作品だと思われます。何度も何度も読んでいて目頭が熱くなりました。 僕は箱根駅伝は見たことがない。興味すらない。ですが、これを読んで夢中になりました。 10人の走者みんなにドラマがあり、一瞬たりとも飽きさせない話しになっています。 描き方が秀逸でした。 箱根の代表校に選ばれなかった人たちから
感想 マリーゴールド町心の洗濯屋さん ユン・ジョンウン 韓国文学。魔法使いの女性の物語。彼女が開く心の洗濯屋は、傷ついた人を癒す店。短編集の集合体のような形式で客を次々と癒していく。そこには韓国の社会問題が凝縮されていて、それは日本でもかぶる部分があり共感できた。
著者は韓国人で、韓国ではベストセラー小説ということです。 魔法使いの話しなので、村山早紀の作品のような感じと思いきや、癒し系の自己啓発的な面が強く。 韓国独特の社会問題も取り扱っていて、ヒット作というのもうなづける内容でした。 ジウンは魔女です。 「悲しみを癒す力」と「願いを現実にする力」を所有しています。 彼女は能力を暴発させ愛する両親が消えてしまいました。魔法の力で何度も生まれ変わり、あちこち探し回るが、両親は見つからない。100万回目に生まれ変わったとき、ジウンは「心
感想 ヒポクラテスの憂鬱 中山七里 ヒポクラテスシリーズ第二弾。今回はコレクターという男の存在が重要になる。キャラ設定が面白い。今回は、死体の吊るしが気になった。いくら捜査のためとはいえ、そんなことをしていいのかと考えてしまう。
シリーズ第二弾。 あいかわらずキャラがいい。だからテンポが良くなり物語全体が面白くなる。 ちょっと個性が強すぎですよね。 今回は、コレクターの存在が大切になる。 コレクターは事件性がないと解剖されない案件に、何かあるとネット上で指摘する人物だ。 警察が動き、遺体は解剖される。そして、それが事件であったとわかるパターンが続く。 二巻目で、こういう変化球を投入することで、物語全体の面白みが増えた気がする。 それにしても、あの遺体を吊るした場面。 いくら捜査のためといっても
感想 ヒポクラテスの誓い 中山七里 舞台は法医学教室、死体の解剖という手段を使う謎解きは手垢がついているのだが、キャラが良くて引き込まれる。シリーズ第一作品。
舞台は法医学教室。 死体の解剖をして死因を特定する部署ですが、そこの教授、准教授、新人の三人のキャラが魅力的。特に、毒舌の教授の俺様キャラが作品をけん引します。 短編集なので一話完結。 しかし、最後にびっくりする展開が待ち受けています。 こういう癖のある王様キャラの教授ですから、何かと追い詰められます。 毎回、新人さんはやきもきさせられます。 そして、見事に教授の思うままの結果になるというパターンです。 どんな怪事件も教授は解決するのです。 教授は内科だった新人に辛辣
感想 CHANCEチャンス文庫版 犬飼ターボ 小説形式の自己啓発本です。具体的に事業を起こし成功するまでのことが書かれています。
小説形式の自己啓発本です。 こういう本では、夢をかなえるゾウシリーズが有名ですが、本書は具体的に事業を起こし成功するまでのことが書かれています。 内容はわかりやすく問題はないのですが、整体はいいのですが、サプリはどうかなと感じます。色んなことを考えました。ツッコミどころもあるにはあります。 ということで、主人公は整体の医院を開業します。三か月学校に通うだけで免許がとれるのも驚きましたが、何か胡散臭さも感じました。 さらに、赤字解消のため、痩せるという高額サプリの販売もしま
感想 プレゼントでできている 矢部 太郎プレゼントとして貰ったモノは、たしかに捨てられない。その人の気持ちを捨てるみたいだから・・・。
お笑い芸人である役者の矢部さんのコミックエッセイです。 漫画です。 一時間で読めます。 それにしては内容が濃くて、読後感は良い。 ただし絵はあまり上手くない。 独特の優しいタッチです。 プレゼントとして貰ったモノは、たしかに捨てられない。その人の気持ちを捨てるみたいだから・・・ って感覚は共感できます。 矢部さんの家にある絨毯の話しから、それをプレゼントしてくれた仕事で世話になったモンゴル人の家族の話しになるのですが、そのエピソードが楽しい。 そこには矢部さんの視線