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小学校に『遊び』を取り入れよう 理論編  第1章 《遊び》が実行機能(見る・聞く・注意集中の使い方)を育てる  3️⃣実行機能をどうやって育てるか?

3️⃣ 実行機能をどうやって育てるか?

 私がかつて所属していた教育委員会では巡回参観という制度があり、新一年生全員を観察に回っていました。
 その時の結果で言うと、7歳で小学校に進学してくるうち、学校生活(集団生活)がうまく送れない状態で上がってくる子どもが、約20%程いました。だいたい毎年の平均は、①脳機能の凸凹が原因の子どもが10% ②愛着の未形成が原因の子どもが10%くらいでした。(2️⃣の記事参照)

 その子たちは、まるで自分一人で学校生活しているかのように行動するのです。
 
  ・自分が見たいところしか見ない
  ・自分が聞きたいことしか聞かない
  ・自分の興味があることしか学ぼうとしない。


 先生たちは、その新1年生を苦労して学級経営や学習を通して集団生活ができるように育てようとするのですが、近年うまくいかないケースが増えてきました。小1プロブレムと呼ばれているのは、この現象を指しています。 

 うまくいかないのは「実行機能」を育てないからです。①の子どもも②の子どもも実行機能が弱いために、学校生活(集団生活)がうまくいっていないのに、そこに手を当てていないからです。先生たちの取組みが、対処療法だけになってしまいっているのです。

 見るべきところを見て、聞くべきことを聞いて、学ばなければならないことを学べるように、実行機能、特に『抑制機能』を育てて行く必要があります。そして、先生やクラスメイトから模倣を通して、

  ・小学生としての語彙
  ・学習していくための方法
  ・小学生としてのコミュニケーション
  ・集団行動のルールとスキル

を学んでもらわないといけません。

 では、それは、いつやるのか?3年生からは『抑制機能』を使いながら、抽象的な本格的学習が始まります。それまでに、『抑制機能』は育っていないといけません。つまり、低学年のうちに育立て終わていないとだめなのです。低学年が「実行機能」補う絶好の機会なのです。

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 では『抑制機能』を学校で育てるためには、どんなことに取組むことが必要なのでしょう?前の記事2️⃣で述べた「実行機能と社会的行動が育つ理論」から考えてみると、その取組には、次の3が必要なことが分かります。

⑴自分から進んでやりたいと思うこと  
⑵子ども同士でコミュニケーションすること(親密な関係)
⑶周りの仲間の模倣を通して、語彙や知識、適切な社会行動を学ぶこと
  
3つの条件を、もう少し解説します。

⑴自分から進んでやりたいと思うこと 
 抑制機能が働かない子どもに「自分から進んでやりたい」と思わせるのは大変です。自分がしたいことよりも、面白い、興味がある、熱中する取組みでないといけません。さらに、嫌なことがあっても我慢できるほど、面白い、興味がある、熱中する取組みでないといけません。

   ・学習では、難しい 面白くなるのに時間がかかる
      ➪本当は逆で、抑制機能を利用して学習をする
   ・ルールが簡単で、すぐ面白くなる取組み
      ➪0か100かの考え方あるので、面白くないとすぐやめる
   ・勝ち負けがある取組み
      ➪勝負にこだわるので、熱中しやすい
   ・ごっこ遊びの要素がある取組み
      ➪興味を持ちやすい     
   ・体を動かす取組み
      ➪子どもは、熱中しやすい      

⑵子ども同士でコミュニケーションすること(親密な関係)
 異年齢なら、高学年が指導的な役割をして仲間づくりをしてくれます。しかし、低学年だけでは、クラスメイトでも親密な関係づくりがなかなかできません。
 そのためには、上手に仲間づくりを支援してくれる大人が必要です。それは、先生の役割です。先生がうまく、子どもたちをつないでiく仕掛けをしないといけません、
 つまり、低学年のこども達だけで自由に遊んでいても、コミュニケーションは発生せず実行機能は育たたないのです。

⑶周りの仲間の模倣を通して、語彙や知識、適切な社会行動を学ぶこと
 語彙や知識、コミュニケーションや社会的行動を学ぶために、模倣の対象となるような発達が進んでいる人が必要です。それは同年齢でも異年齢でも構いませんが、そのような人が混ざっている必要があります。
 低学年の内に育てるなら、その役割を担うのは同年齢の発達の進んでいる子どもが模倣の対象ということになります。つまり、グループ分けするときに模倣の対象となる子どもを、分散させる必要があるのです。それも先生の役割です。

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 さて、3つの条件を満たす取組みは、何でしょう。『自ら望んでやり始めるくらいおもしろくて、すぐ熱中し、親しい仲間でコミュニケーションしながら学び合う取組み』。それを、先生が指導していく取組み。それは、私の経験からして 《集団遊び》以外にはありえません。学習では、それらのことは実現できませんでした。 

 つまり、子どもが「見たいところしか見ない」「聞きたいことしか聞かない」「興味あることしか学ばない」状態で小学校に入学してきた場合、親からバトンタッチして先生が実行機能を育てるしかないのです。つまり、低学年の内に「教育活動の一環として、集団遊びを取り入れていく必要がある」ということです。
  ※個々で言う集団あそびは、集団を単位とした遊びのことです。

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これで本として完結しています。小学校で実行機能の発達を促すのは、遊びだけです。その理論と実際に休み時間や授業の隙間、体育で使える遊びを精選…

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