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白湯(さゆ)じゃなくてお湯だろうが

 ただの熱い水に何個も名称をつけるんじゃない。お湯はお湯、ひいては熱湯であろう。最近のガキャは何でもすぐにこうやってオシャレに言い換えようとする。ベロアじゃなくてコーデュロイ、援助交際じゃなくてパパ活みたいに。

優雅にお湯をわかしてコーヒー飲むのよ

 温度が高いお水はお湯である。これは紛れもない事実で、たとえば浴槽を満たすときも「お湯張りをします」というアナウンスが流れるし、チェーン店のウォーターサーバーにも「お湯」というピンクのボタンがついている。お湯は、温度の低いお水の対義語として「お湯」という名称が使われていることは熱湯を見るよりも明らかである。私は昔から「温度の高い水はお湯だ」と、そう教えられてきた。

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 だが最近、このお湯に生意気にも「白湯(さゆ)」という洒落た二つ名があることを知った。「ぱいたん」ではなく「さゆ」。この白湯(さゆ)というのは、どうやらお湯の中でも飲用に適したお湯のことを言うらしい。お湯なんて回転寿司で仕方なしに飲むことしかなかった私にとって、これは大きなカルチャーショックだった。
 そもそも日常生活でお湯を飲むことがそうそうない。朝起きたらポットで沸かした一杯のお湯を薄暗い部屋で静かに飲む、日本各地でこんな丁寧な暮らしが密かに営まれているということに、私はとても驚いた。

  お湯をブランド化したものが白湯だ。ただのお湯に、白湯(さゆ)というブランド名が刻印されるだけで価値がグンと上がる。大きなくくりで見ればただのお湯なのに、少しでもお湯との差別化を図りたいという女子の願望が表れたその産物が「白湯(さゆ)」なのだと思う。女子のブランド好きって、いよいよ来るとこまで来てる。

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お湯の中にナイフ

 私はこの白湯(さゆ)とやらに異議を唱えてやりたい。白湯(さゆ)なんて言うな、お湯って言え!…と。
 当初、私はてっきり、白湯(さゆ)というのはただのお湯に塩か何かをひとつまみ加えているのかと思っていた。白い湯と書くぐらいなのだから、何か成分が異なるから名称も違う、そういうロジックだろうと思っていた。
 しかし聞いてみれば、お湯と白湯(さゆ)に成分の違いなどは一切ないと言うではないか。成分も温度感も同じであって、ここで両者を区別する意味がわからない。沸騰のさせ方も同じ、水を熱してお湯にしているだけ。原料も製造過程も成果物も、お湯と白湯(さゆ)は何一つとして変わらない。
 しかも最近は大手飲料メーカーから白湯(さゆ)がペットボトルで販売されているらしい。これはもはや人肌温度ですらないから、一度沸騰した水だろう、ただの水だろう。

 人肌の温度のお湯を飲むことが体に良いということはよくわかる。お湯によって体温をあげることで内臓の機能を向上させ、老廃物の排出を促す。それはごもっともなことである。
 ただ、「名称は別にお湯でいいだろう」と言いたい。と、いつまでも文句を言っていてもアレなので、さすがに調べてみた。

お湯と白湯(さゆ)の違い

 なるほど。一度沸騰させたかどうか、ということか。

 結局、両者ともお湯では?

 化学の本に書いてあった、鉄に酸素を取り込むと酸化鉄になったりとか、鋼を硬くするために「焼入れ」をし炭素を多く取り込むという技術(アレンジ)とか、そういう明確な変化ならば言わんとすることはわかる。
 水を温めて、お湯の段階を通り越して一度沸騰させてから、人肌の温度にまで下げる。これによって水の中の不純物が減るということだが、私から言わせればこれは白湯(さゆ)ではなく、「高純度のお湯」である。化学式も変わらないし、三態変化することもない。お湯が一度沸騰したのちにお湯になっただけだ。

 これを白湯(さゆ)と呼んで崇められていることがもう私には理解できない。てことはこの定義に照らし合わせたら、温泉とかも白湯(さゆ)になるんじゃないのか。もう考えすぎて、頭がフットーしそうだよおお。

 

 


 


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