諸君!忌々しきクリスマスは焼き討ちじゃ! 知識の都、本棚。#10

「四畳半タイムマシンブルース」で話題の森見登美彦さん。

今回は、森見登美彦さんのデビュー作ともいえる作品、「太陽の塔」を紹介する。

〈プロフィール〉

#1で紹介した 「太陽と乙女」を買った時に、隣にあった本。

森見さんの処女作だということは知っていたので、この機会にと手に取った。

最初の一文を見た瞬間、購入を決意した。

〈解説〉

「何かしらの点で、彼らは間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。」

主人公で大学休学中の「私」は、同じ大学の「水尾さん」と交際していたが、振られてしまう。

水尾さんについて語ろう。

彼女は、岡本太郎の「太陽の塔」に一目惚れし、「宇宙遺産」に指定するほどマニアックで、至る所で眠ってしまい、猫のような顔をしているという。

そんな彼女に振られたという事実を受け入れられない「私」は、振られた後も「水尾さん研究」と称して水尾さんをストーカーする。

しかし、意外とちゃんと研究しており、「私」が書いたレポートの数は240枚にものぼるところに、また面白さが生まれる。

そんな「私」には、3人の同志がいる。

一番の悪友で法学部生の「飾磨」。情報収集能力に長けている。彼には一度彼女がいたことがあるが、彼女とのデートで観覧車に乗る際に、先にゴンドラに入り、「これは俺のゴンドラ」と言って乗せなかった勇者でもある。降りた時には、彼女の姿はもうなかったという。

猛獣かと疑われるほどの剛毛で、髭は鋼鉄製とも呼ばれる大学生「高藪」。その見た目とは裏腹にオタクであり、酒豪である。

あらゆるものに対して怨念があるとも言われる「井戸」。自己嫌悪の鬼であるが、「私」と飾磨、高藪には心を開いている。

こんな「私」の悪友を総称して、彼らは自らを「四天王」と呼んでいる。

世にも忌々しいクリスマスが近づいているある日。

愛自転車「まなみ号」を乗りまわし「水尾さん研究」を続ける私は、いつものように研究(ストーカー)をしていたのだが…

「それ以上ストーカーをやめろ。さもないと警察を呼ぶぞ。」

その男の姿は貧弱で、あまりにも不格好だった。(「私」によると)

謎の男の正体を水尾さんの彼女だと断定した「私」は、飾磨に謎の男の情報を探らせる。

かくして男の正体は同じ大学生の「遠藤」だと判明し、「私」は彼らのクリスマスを最悪のものにしてやろうと企てるのだーー

こんな恋愛至上主義の現代社会を変えてやろうと奮闘する「四天王」が企てる作戦の数々。

それでも美しき古都を占領するカップル達。

最終手段として、クリスマスイヴに飾磨が決行した「四条河原ええじゃないか騒動」。

京都の狭い範囲を中心に、腐れ大学生が暴れ回る。

どのページを捲っても彼らは暴れまわっており、どのページを捲っても腹がよじれる、よじれる。

そんな魅力が200ページに所狭しと並んでおり許容量をオーバーしそうだ。

猛スピードで京都の街を駆け巡る彼らの後ろ姿を刮目せよ。

後ろ姿を見送ったと思えば、こっちに向かって猛スピードで撤退してきたりして。


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