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【時事】イスラーム③〈日本でのハラール需要〉

こんにちは。
前回の記事では、イスラームにおいてとりわけ有名な食の戒律「ハラール」についてまとめました。今回はその続編にあたるので、前回の記事と併せてご一読ください。

今回は「日本でのハラール需要」をテーマにまとめていきます。

世界的にムスリム人口が増え、また訪日外国人数も伸び続けているなかで、これはビジネスという側面でも注目に値する一つの業界かもしれません。

【増えるムスリム人口】

日本のムスリム人口については正確な数値こそ出されていないものの、推計として30万人程度とされており、これは日本の総人口の0.24%にあたる。
歴史的に見てみると、13世紀頃に※イル・ハン国から東方へとイスラームが伝来され、南アジア、次いで東南アジアへと広がっていった。しかし、日本では爆発的に広がることはなかった。
依然として日本のムスリム人口は少ないものの、近年は移民や外国人旅行者の増加に伴って、訪日するムスリム人口は確実に増えている。

※イル・ハン国:イランを中心として西アジアに建国された、モンゴル帝国のハン国の一つ。 都はタブリーズ。

世界史の窓 https://www.y-history.net/appendix/wh0403-021.html

以下、日本からも近い距離にある東南アジアをフォーカスしてみる。

東南アジアの総人口は約6億人と推定されており、人口は更に伸び続けることが予想されている。
また、日本の※経済連携協定(EPA)には東南アジア諸国がとりわけ含まれていることから、今後の成長市場としても注目されている。

※経済連携協定(EPA):貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定

外務省HP https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/index.html

東南アジアで最大の人口を抱えるのはインドネシアである。人口は2億5000万人を超え、これはアジア地域において中国とインドに次ぐ数字である。また、インドネシアは意外にもムスリム人口が世界で最も多い国で、国民の87%がイスラームを信仰している。

もう一つの例としてマレーシアを挙げる。マレーシアはマレー系、中国系、インド系といった複数の民族が混在するモザイク国家であるが、イスラームを国教と定めている。人口は約3200万人で、うち61%がイスラームを信仰している。

上述した国以外にも、フィリピンやタイといった国では一部地域においてムスリムが一定数在住している。

(複数の民族が混在しているマレーシアでは、多様な食事を味わえる。また、イスラームの戒律に則した食事やモスクの場所など、ムスリムにとって必要なサービスが充実していることから、世界で最もムスリム旅行者にとって優しい国の一つとされている)

(首都クアラルンプールのとあるゲストハウスに設置されていた礼拝スペース)

更にはインド、パキスタン、バングラデシュといった南アジア地域にも多くのムスリムが在住しており、これらの国々は2050年までに大幅な人口増加が起こると予想されている。とりわけインドでは2027年頃、中国を抜いて世界で最も人口の多い国になるだろうという声もある。

上述した国や地域に限らず、ムスリム人口は世界各地において他を圧倒する勢いで増加しており、2070年には世界人口の3人に1人がムスリムとなり、来世紀には過半数を超えるという予測もある。

【日本のハラール需要】

イスラーム圏からの旅行者が急増している昨今、日本の観光業界もハラールとは無縁ではいられなくなった。

上述したようなムスリム人口の増加という背景に加え、日本では今年2020年に東京オリンピックを控えている。そのため、日本においてもハラールの需要が広がり、市場が拡大し続けることが大いに予想される。

試しに「ハラール レストラン」とインターネットで検索してみると、都市部を中心に多くの店がヒットする。こうしたレストランや宿泊施設では、ハラールの条件を満たすサービスの提供が望まれており、食事だけではなく、礼拝所の設置やメッカの方角の表示など、ムスリムが必要とすることは多い。

(昨年3月26日、足柄サービスエリアなどにムスリム向け礼拝スペースが全国で初めて設置された)

最後に余談になるが、8月に一時帰国をした際、外国人居住率の高い街として知られる埼玉県の川口市と蕨市訪れたところ、ハラール食品を取り扱う店をいくつか見つけることができた。川口市に住む方によると、ここ数年は外国人の増加に伴ってハラール食品を扱う店は増えたという。

このように、都市部ではハラール食品店やレストラン、礼拝スペースといったムスリム向けのサービスが展開されつつある一方で、私にアラビア語を指導してくれた福島県在住のシリア人の方は、野菜や果物は一般的なスーパーで調達するが、肉などは通販で手に入れると話していた。少しずつハラール食品を取り扱う店も増えているものの、地方まではまだ行き渡っていないということらしい。

今回は「日本でのハラール需要」をテーマに簡略ながらまとめた。
世界的なムスリム人口の増加という背景に加え、イスラーム圏からの訪日外国人数の伸びによって日本においてもハラールの需要が広がり、市場が更に拡大していくことが予想される。
ゆえに、今後はビジネスという側面でも注目に値する業界の一つとなりうるかもしれない。

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