見出し画像

高橋怜奈『性のはなしはタブーじゃない!小学生から知っておきたいSEX・避妊・ジェンダー・性暴力』を読んでの感想とツッコミ、雑感

この本自体はもう読み終えているのですが、読むだけ読んで文章にしないのも勿体ないと思って執筆。本も書店で注文して、買ったしね。内容の割にかなりフランクな書き口です。あと個人の感想です。

はじめに

まず、帯の「『13歳になったら性行為に同意する能力があるとみなされる』って、知っていますか?」ってところが、かなり引っかかる(帯が「日本の『 性同意年齢』は13歳って、知っていますか?」に変えられてた。小手先の事はよくやるよね)。具体的に言うと、法律を分かっていないし、法律で殴る三流法律家気取りが書いてる印象。専門家でも専門外のことは全く知らないってことは普通にあるから仕方ないっちゃあ仕方ない。弁護士の方や大学の法学部の教授はどう考えてるのでしょうね。
性犯罪に関する刑事法改正について。 - 山花郁夫 | やまはないくお 立憲民主党 東京22区 (yamahanaikuo.com)

性的同意年齢引き上げを主張するツイフェミの様子

最近、こういう親や子供を狙って書かれた性教育便乗本が多い訳だけれど、この本を読んだ感じ、全般的に再生産前提って感じがする。もうこれは本能って言ったら定義が曖昧だけど、プログラミングされているのかな。子供産むのに理由なんてないと大多数の人は考えているだろうし。このような性的同意年齢引き上げみたいな法的に無茶のある運動は結局白紙になると考えている。AV未成年者取消権も白紙になったし。

第一章「どうなる!?何が起こる!?思春期の体」

生理と射精とルッキズムのことが書かれているらしい。生理と射精、ここら辺はまあ普通ですね。

見た目のことをからかうってのは難しい問題で、ある人にとっては嬉しい物が、また別の人にとっては侮蔑になり得る両義性がね。本当に難しい。椎名ちゃん考えさせて。
「また「色白できれい」「目が青くて美しい」など、一見ほめているような言葉も、裏を返せば「はたが黒いのはきたない」「目が黒いのはみにくい」という意味にとられます(50頁)」

ヤクザ映画なんかの「俺の目が黒いうちは」とかはどうなるのだろうか。これもその国の文化や置かれた状況などが関わってくるので一概に言えないけど、例えば、欧米では(出羽守ではなく)小麦色の肌が美しいとされているし、ベトナムでは太っていることは富の象徴だったりする(今もそうかは知らないけど、多分そうじゃないかな。ホー・ゴック・ハーとかむちっとした体型だし)し、古代ギリシアだと短小包茎が美的だとされていて(だからダビデ像も短小包茎なんだけれど)、文学では中村うさぎさんだと整形しまくっていることを自虐的に描いたりしているわけで。
最近問題になったオリンピッグ騒動なんかも、あれも微妙な問題で、同意があるかどうか以前に生理的に不快だという感情が先走っている可能性もある。若い子だといじりを許容しない人とかいるみたいだし(私は理解出来ないししようとも思わない。単純に興味が無い)。私個人の考えで言えば、キャンセルカルチャーの大半はそれだよねー、と考える。

第二章「SEXってなんのためにするの?」

はい、やってきました。ロマンティック・ラブ・イデオロギー(恋愛・結婚・出産の三位一体)丸出しの記述。
「まずは二人でラブラブします」とか、ラブラブしていないセックスの場合はどうなるのだろうと。
例えばウクライナ女子がロシア兵にレイポゥされて緊急避妊薬が支給されているわけで。ウクライナに緊急避妊薬を提供 強姦被害の報告受け慈善団体 - BBCニュース
(余談だが、この5日間ってのは、Ella(旧名EllaOne)のことだな。ググると公式サイト出てくる。
ella® Morning After Pill & Emergency Contraception Advice (ella-now.com) )
「愛の言葉を伝えたり/だきしめあったり/キスをしたり/おたがいの体にふれあったり/痛いことや危ないことをしなければここはふたりの自由よ/相手を思いやりながらラブラブします(65頁)」
愛の言葉を伝えるって辺り、ジローラモさんにしか見えない。いきなり愛の言葉を伝える男性って、ナンパしまくる外人しか思い浮かばないんだけど。もしかして、ジローラモさんが監修しておられるのでしょうか!?

安心してください


そんなのでなくとも、BDSMはどうなるのかって疑問は残る。ラブラブしてないとでも?
これ、難しい問題だよね。グレーな所も多いし。日本では戦時レイプはおろか、米英でよくあるような刃物や銃を持ち出して脅すみたいなガチモンのレイプは圧倒的に少ない(だからニュースになるんだけどね)。それはデータでも実証されてる。


https://www.npa.go.jp/hakusyo/r03/honbun/index.html より引用

この手のレイプ統計って、国によって定義が違ったりするんだけれども、まあこの手のことは第五章に持っていく。本当はこの調査、第五章で提示したかったんだけどなぁ。
とまあ、そういうあからさまなレイプでなくとも、売春や10年代のHook-Upカルチャーとかあるわけで、それらには触れられていない。安心安全なセックスはセックスじゃないと思う。正しい知識が無ければセックスしちゃいけないってのもねぇ。確かにないよりかはあった方がいいけど、セックスライセンスの問題とも通じて来る気が。知識を持てない人達が追いやられますなぁ。小学生向けの本なので限界はあるけれど、大人がこの本で性を学ぶと自滅するかもしれない。もっとちゃんとしたのを読もう。

https://www.amazon.com/Human-Sexuality-World-Diversity-Books/dp/0205952275

Rathus先生のHuman Sexualityシリーズ、見てみると最新刊でも新刊無いみたいで、近いうちに出ると思う。もし新しい版出たらコロナの事書いてないか気になる。
( ∩'-' )=͟͟͞͞⊃ 🦠

第三章「自分も相手も大切だからこそ、避妊しよう」

これも性教育本の定番テーマの一つ。
この章の「自分も相手も大切だから避妊しろ」という、ロマンスの為に避妊を人質にする言説も良くないと思っていて、加藤鷹の「ゴムつけない男は挨拶できない男と一緒」みたいに道徳性と避妊をセットにする言説って、コンドームが主流の避妊法って状況でないと生まれないよね。
ピル飲んでいたりインプラント付けている子が多い国ではそもそもそんな言説成り立たないし。あと子作りしたい夫婦はどうなるのやら。でもAmazon見ると高評価多いようだし、こういうの見ると自分の持っている性規範に無自覚な人ってやっぱ多いんだなと。性のことは難しい。
椎名ちゃんのこというと、日本人同士のセックスって、いまいちよくわからないんだな。今はホルモンIUD着けてるけど、彼氏も外国人だし、今までのセックス経験も外国人が多い。流石に日本人同士のセックスは本を読んで知ってはいるけど、それを自分事として捉えられないんだな。ゴムを主な避妊法にしているとか、違う世界すぎて。そもそも何故そこまでしてセックスしたいんだろうかとすら思う。自慢じゃないけど。あと腟コーラって何時の時代の話なんだか。
混合ピル(英語でLow-dose Pillという言い方はするっちゃするが、Birth Control Pillとか、Contractive Pill, The Pillというのが主流)、ホルモンIUD(日本ではMirena(ミレーナ)のみ認可。海外ではKyleena,Skyla,Lilettaといった小さ目サイズがある)とコンドームしか書いてない。
これは国内の避妊法の限界というか、この女医さんが国内のみで学んでいる人なのかもしれない。
日本国内の話に限って言えばかつては産科医の間で人工妊娠中絶がビジネスみたいになっていた時代があって、だから罪悪感を焚き付ける水子供養みたいなビジネスも流行った。
ピルも月経調節目的で60年に認可されてたけど、医師の判断で高・中容量ピルを避妊目的で処方することがあったみたい。今のノアルテンの状況と似てますね。その間に欧米やらに先を越されちゃったり、富士見産婦人科病院事件を受けてウィメンズセンター大阪から出発した「女のためのクリニック準備会」が『ピル 私たちは選ばない』って偽科学本を出して、「ピル危ない」って主張したり、その後参入障壁を高める為にピルの薬価を引き上げてくれって請願を出したり、日本の避妊を巡る状況って本当にカオティックなんですわ。俺も調べて呆れ返った。

第四章「好きだからって、相手もセックスしたいとは限らない!」

中盤に入ってきました。この人恋愛や結婚の為にセックスを人質にするの好きですね。お次は性的同意とAVなんかのエロコンテンツの話。だるくなってきた。


「内容を判断するのが難しい幼い子供の場合もそうよ(頁)」

うーん。この問題について語るーにゃら(突然の「にゃ」)、知的発達症(知的障害)、精神疾患、身体障碍のある人間の話もしてほしいと思うんだけど、そちらは色々と難しいからパスなのかな。日本ではこの問題殆ど議論されていないと思う。あってもぱっぷすなんかがAVの問題と絡めて、「知的に遅れのある子たちが騙されている」みたいな書き方がされるぐらい。

この問題に関しては、江口聡先生のこのエントリをお勧めしたい。この人の性論考は結構参考になるので。
セックス同意年齢の問題(1) Wertheimer先生の変な空想事例 | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(2) 前提の確認 | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(3) 年の差セックス! | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(4) 強制の問題 | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(5) 搾取の問題 | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(6) ジュディス・レヴァイン先生の『青少年に有害!』 | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(7) 同意能力はなぜ必要か | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(8) 同意能力には何が必要か | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)
セックス同意年齢の問題(9) 私たちはどうやって成熟するのだろうか | 江口某の不如意研究室 (yonosuke.net)

あとなんか偏見じゃないけど、性的同意とか児童ポルノ厳罰化とか、同意年齢引き上げとかこの手のことを言ってくる人って、自身は性的に満足していないと思うんだよな。本当に性的に満足している人はグレーな問題だとわかると思うし。
アダルトコンテンツの問題については、ゲームとか漫画とかもそうなんだけど、メディアの有害性を図るのはかなり困難だったりする。メディア論学んだことある人は解ると思うけど。まあこの人は法学の専門家ではないし、仕方ない側面もある。椎名ちゃん、仕方ない仕方ないばっかり言ってる。
今の18禁の規制って、「わいせつとポルノグラフィに関する大統領委員会諮問書」が元になっていて(英語版Wikiに記事がある。President's Commission on Obscenity and Pornography - Wikipedia)、それで「ポルノは大人は無害だけど、未成年については十分な証拠がないよ(そもそも、未成年がエロを見るのは倫理的に問題だから調査してないよ)」ってなって、当時のアメリカ人も未成年がそういうのを見るのはよろしくないと思っていたのもあって、今に至ってるという話。日本だと沙織事件(男子中学生がエロゲを万引きして、有害コミック騒動の煽りを受けて騒ぎになった)があったりと、ここら辺は色々調べてみると面白いので参考資料幾つか。

  • 『性表現規制の文化史』白田 英彰

  • 『性表現の刑事規制―アメリカ合衆国における規制の歴史的考察 (大阪市立大学法学叢書)』三島 聡(ただ、この本はクッソ高い。お金ない方は図書館を利用すべし)

第五章「性暴力ってどういうこと?」

なかなかコアな所来ましたね、性暴力。
この手の調査って、スウェーデンなんかそうですが、レイプの定義が違ったりするんですよね。不同意なのもレイプって言ってるから全体として増える(グレーなのも加算される)のはまあそうだと思います。しかしこの本偏りがありますね。
痴漢やレイプを性暴力ってするのはまだ分かるけど、児童ポルノを性暴力にするのは私の立場と相容れない。勿論強制的に売春させるとか、レイプしてそれを動画に撮るとかは財産権の侵害であり、犯罪だけれども、今の児童ポルノ法って、本当に魑魅魍魎で、過去に発行された少女ヌード写真集が発禁になったり、二次元を対象に入れろという動きがあったり、もうそれリアル介在しないでしょって所まで来ている。高橋怜奈氏がここまで考えているかは怪しい。
蛇足だがこたエールってサイトもあるんだけど、このサイトは少年法とか他の法律も鑑みずに「児童ポルノ法に触れる」の大合唱で、最早脅迫行為。私あまり好きじゃない。
https://www.tokyohelpdesk.metro.tokyo.lg.jp/consult/jirei/kousai.html
性犯罪については第二章でちょっと触れたけど、日本で強制性交、レイプって元々少ない。少し古い調査だけど、
https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_6_1_2_3.html

こんなのもある。調査では暗数が相当数あるかもって書いてあるけど、12年調査と16年調査、その後と調査の撮り方が違ってたりするんで、経年比較は出来ないとのこと。引用します。


31年調査における過去5年間の性的事件の被害率は,1.0%であった(6-1-2-1図参照)。なお,性的事件について,12年調査及び16年調査では,女性のみを対象としたのに対し,20年調査以降では,男女双方を対象としていること,また,31年調査では,DV,児童虐待のうち性的な被害に該当するものについてはそれらの調査項目において回答を求めていることから,全体を通じての経年比較はできない。

https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_6_1_2_3.html
より引用

日本性教育協会の40年間の調査をまとめた『 青少年の性行動はどう変わってきたか 全国調査にみる40年間』って本を読むと、「青少年女子の性被害は、露出被害以外は性のイメージにプラスの影響を与えている」という二項ロジスティックス(基準の数(ゼロ)より多いか少ない(マイナス)か)調査の結果がありまして、これが誠に興味深い。理由も「日常的に性的客体として見られる立場にある女子にとって、それらの被害は、重大な結果をもたらすもの(レイプなど)でない限り、価値を認められるから」だという。みんなもこれ読んでみるといいぱよ。THE・性科学。

第六章「恋愛と性別にはさまざまな形がある」

この本で特徴的なのは、SOGI(Sexual Orientation, Gender Identity,性的指向と性同一性)だったりLGBTについて触れているところ。ここんとこ最近の本らしいですね。
私は学校の性教育一切受けなかった(殆ど特別支援学級行ってたから初経教育も受けた覚えがない)ので、最近の子たちはこうやって性知識を学ぶんだろうと思うと椎名ちゃんは暗澹たる気持ちだったり「うーんこれ」って気持ちだったり「そうなのかー」って気持ちだったりで、複雑な心境です。
アウティングはあれですね。一橋大学でゲイの大学生がストーカーまがいのことをしたら相手がブチギレてばらしちゃったやつ。ウィキに記事あります。
一橋大学アウティング事件 - Wikipedia
これ口外禁止条項が裁判で出ているので、これ以上は解らないけれど、和解となっているのと、今までの情報を総合すると、大学生側にも非があると思う。こういう性関連のことは舌平目…おっと下調べが必要ですね。
性自認至上主義については、他の方も言及しているので詳細は触れないけど、ここらへんの問題点はリア・トーマス(Lia Thomas)や
「Detransition(性別を移行した人が性別を元に戻すこと)」でググったり、日本でもBlahさんや松浦大悟さんが書いていらっしゃるので興味ある方はどうぞ。本題とずれちゃうのでここではあまり書かないけど。
でもこういうTGismに沿った性教育本は、10年後には過去の物になっていると思う。やっぱり教育って日々進歩するんで。最近気になってる『性の絵本』もそうだけど、2~3年後とかなると新品では買えなくなるので気になる方は今のうちに買っといた方がいいと思う。そもそも読まないと批判も批評もできないし。読まないで批評する香具師(古い)は節穴乙としか言えない。ジェンダー系炎上とか本当そういうの多いから注意しないと。
何回も言ってるけど、この本ロマンティック・ラブ・イデオロギーが前面に出てる。どうでもいい事だが、私が子持ちだったら子供にこんな本与えていない。正直性教育便乗本より宮台真司とか読んだ方がいいと思うんだよね。アロマンティック、アセクシャル、ロマンティックアセクシャルは出して、アロマンティックセクシャルは出さないのって、これはちょっとどうかと思う。やはりこういうロマラブ思想の人は傷ついちゃうのかな。私の超偏見だと、ロマラブ思想を前面に出す人って性愛でいい思いしていないからこういうの書けちゃうんだろうな。
序に言っとくと「男らしさ・女らしさに縛られるな」もなんか変。恐らく善意なんだろうけど、逆にまた別の規範になっているんだなこれが。

総合的に見て
ロマンティック・ラブ💞乙。


この記事が参加している募集

読書感想文

多様性を考える

記事を読んでくださりありがとうございます。 少しの間お時間を頂けますか。 100円、200円と言ったほんのお気持ちでも構いませんので、サポートは力になります。 無論、それ以上支援して頂けるのであれば、私は有難く受け取ります。 サポート代は、食事代や生活費に主に使います。