テーマ発表！！

　第1回、第2回に引き続き、映画「ボーン・アイデンティティー」をベースに新しい物語を妄想します。

※「ボーン・アイデンティティー」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。

妄想開始！

嘉村　「ボーン・アイデンティティー」は、記憶喪失で、その上なぜかヤバい組織から命を狙われる主人公が、「自分の正体」と「組織の正体」を明らかにすべく奮闘する物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは？」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう！

三葉　承知しました。

嘉村　前回ご紹介したのは、「『ボーン・アイデンティティー』 ～『異世界で記憶を失う』編」でした。

案②

三葉　まずは、「ボーン・アイデンティティー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。

三葉　……ですね（より詳しくは第1回の記事で）。

嘉村　ふむふむ。

三葉　さて、「ボーン・アイデンティティー」の主人公（ボーン）は、記憶喪失に陥っています。彼は、自分が何者かわからない。なぜ記憶を失ったのかもわからない。さらに、彼は「複数の言語を操ることができる」「メチャクチャに強く、素手の戦いはもちろん、銃や刃物でも誰にも負けない」といった「スキル」を持っているのですが……なぜ自分にそんな力があるのかもわからない。

嘉村　ふむ。

三葉　かくして、ボーンは「自分の正体」を明らかにすべく旅に出ます。ところが途中、彼は謎の組織に命を狙われる。相手は誰だ？なぜオレを狙う？……わからない。したがってボーンは、「自分の正体」と合わせて、「敵の正体」も追究することになります。

嘉村　ええ。

三葉　最終的に明らかになったのは……まず、ボーンが「CIAが養成した無敵の暗殺者」だったということ。「無敵の暗殺者」だからこそ、語学に精通していたし、メチャクチャに強かったわけですね。

嘉村　ふむ。

三葉　もう1つ、敵の正体が「CIA」であることも明らかになりました。CIAは、いわば「暗殺者ボーンの生みの親」です。はて、なぜわが子を殺そうとするのか？じつは、ボーンはとある任務に失敗し、大けがを負って記憶を失ったのですが……CIAは気が気ではない。「ボーンと連絡が取れなくなったぞ！」「まさかあのヤロウ、裏切ったのではあるまいな！？」「まずい！ヤツは知りすぎている。我々の秘密が露呈しかねないぞ！」「えーい、殺しちまえ！」ということで、ボーンはCIAから命を狙われていたのでした。

嘉村　ふむふむ。

三葉　さて、以上「ボーン・アイデンティティー」の骨子をおさらいしてまいりましたが……これ、「主人公の正体」や「敵の正体」、そして「舞台」を替えるだけでいろいろと面白い物語が作れると思うんですよね。

嘉村　ほぉ……例えば？

三葉　舞台を「戦国時代」にしてみましょう。そして主人公の正体を「忍者」、敵の正体を「忍者の里」「主人公が仕える武将」に置き換えてみると……。

嘉村　つまり、「忍者版『ボーン・アイデンティティー』」ですね。

三葉　はい、おっしゃる通りです。主人公は、ある日気づく「せっ、拙者、記憶がないでござる！」。主人公は呆然とする。拙者は一体何者なのか？そして……拙者はなぜ忍術を使えるのか！？

嘉村　なるほど。

三葉　なお……「ボーン・アイデンティティー」にしろ、いまご説明した「忍者版」にしろ、主人公が「暗殺や戦闘のプロ」で、「暗殺・戦闘用のスキル」を持っているという点が共通しています。

嘉村　ええ。

三葉　ただし、「『ボーン・アイデンティティー』風物語の主人公は、暗殺・戦闘のプロでなければならぬ」ということはないでしょう。

嘉村　もっとソフトな主人公でも問題ないと……？

三葉　ええ、その通りです。ということで「案②」は……ズバリ！「『ボーン・アイデンティティー』　～『ハニートラップ♡』編」です。

嘉村　ハニートラップ！

三葉　ストーリーをご紹介しましょう。主人公は若い女性です。ある日気がつくと……「マッ、マジで！？記憶がない！」。彼女はショックを受ける。さらに不気味なことに、彼女はおそろしい「スキル」を所有していました。

嘉村　ふむ。

三葉　すなわち……彼女の体には「モテテクニック」が染みついていたのです！

嘉村　……ん？

三葉　彼女は、目の前の男性の「異性の好み」を一瞬で見抜くことができました。さらに、その嗜好に合わせて、自らの表情やしぐさ、姿勢、言葉づかいなどを完璧に調整することができた。

嘉村　ほぉ。

三葉　当然、男性はメロメロです。

嘉村　でしょうねぇ。

三葉　つまり彼女は、相手がどんな男性であろうとも……そう！ロリコンだろうと、シスコンだろうと、マザコンだろうと、あるいは甘えたいタイプだろうと、甘えられたいタイプだろうと、叱りたいタイプだろうと、叱られたいタイプだろうと、愛されるよりも愛したいタイプだろうと……わずか数秒の内に、そのハートを鷲掴みにすることができたのです！

嘉村　そりゃすごい。

三葉　主人公は戸惑い、困惑する「私はなぜこんなにモテるの？」「なぜこうもあっさりと男を手玉に取ることができるの？」。

嘉村　彼女は真剣に悩んでいるのでしょうが……アレですね。ややイラッとしますね。

三葉　かくして、主人公は自分の正体を明らかにすべく旅に出ます。そして、何者かに命を狙われつつも……やがて真相にたどり着く。彼女は、「CIAが養成したハニートラップのプロ」だった！

嘉村　ハニートラップのプロ！

三葉　ハニートラップ……男性を誘惑し、時には性行為を通じて懐柔し、機密情報を入手することです。要するに、男性を口説き落とすプロ。彼女の体に「モテテクニック」という「スキル」が染みついていたのはこのためです。

嘉村　なるほど。

三葉　そして……「ボーン・アイデンティティー」同様、ある日彼女は任務に失敗して大けがを負い、記憶を失った。一方、彼女が行方不明になったことで、CIA上層部は動揺した「まさか裏切ったのでは……」。そして、「えーい、殺しちまえ！」と追っ手を差し向けたという次第です。

嘉村　ふむふむ。

三葉　つまり……「ボーン・アイデンティティー」と比較すると以下のようになります。

案③

嘉村　続いて、「案③」にまいりましょう。

三葉　はい。「案③」も「ソフトなスキルを持った主人公」の物語です。すなわち……「『ボーン・アイデンティティー』　～『贋作』編」！

嘉村　贋作！

三葉　ストーリーをご紹介しましょう。ある日、主人公は気づいた「うっ！記憶がない！」。彼にはわからない。自分が何者なのか。なぜ自分に記憶がないのか。

嘉村　ふむふむ。

三葉　そしてまた不気味なことに、彼には人並み外れた「スキル」が備わっていました。すなわち……主人公は異常なほど絵が上手かったのです。

嘉村　ほぉ。

三葉　彼は困惑する。まったく……オレは何者なんだ！？かくして、彼は自分の正体を明らかにすべく旅に出る。そして、何者かに襲われつつも、やがて真実にたどり着きました。主人公は……そう！天才贋作者だった。

嘉村　贋作者……。

三葉　彼は幼い頃から絵が上手く、画家に憧れていました。そして努力に努力を重ねた。食費をケチり、みんなに小バカにされながらも絵を描き続けた。しかし……いつまで経っても、賞を得ることができなかった。画商は取り扱いを拒否した。彼らは言った「きみの絵は粗野だ」「知性が感じられない」「いい加減諦めたまえ」。彼はショックを受ける。粗野？知性が感じられない？ふざけるな！

嘉村　ふーむ。

三葉　そんな時です。1人の男が訪ねてきました。男は言った「きみは天才だ。ところが、美術界はきみの才能を認めない。まったく嘆かわしいことだ。きみは美術界に復讐すべきだよ」「復讐……？」「そうだ。贋作を作ってみる気はないかな？」「がっ、贋作だと！？」。男がうなずく「きみが作る。私が売る。どうかね？」。主人公は戸惑った。いくら何でも贋作とは……。しかし、男は札束を差し出しました「手付金だよ」。主人公は思わず生唾を飲み込む。「どうだい？オレと組む気になったかな？」。主人公は、もう随分と貧乏暮らしをしていました。腹が減った。老親に楽をさせてやりたい。幼い妹を学校に行かせてやりたい。……こうして主人公は贋作の世界に足を踏み入れたのでした。

嘉村　なるほど。

三葉　間もなく、ビジネスパートナーの男がマフィアの一員だと判明しますが……主人公は動じない。一度蜜の味を知ってしまったのです。もう引くことはできぬ。彼は、贋作ビジネスの世界でのし上がっていきました。

嘉村　ふーむ。

三葉　ところがある時……主人公は、敵対組織から銃撃を受けた！運よく一命を取り止めたものの、彼は記憶喪失に陥りました。一方、マフィアは彼が行方不明になったことに驚き、彼の裏切りを疑う。そして、「ヤツはいろいろ知りすぎている。口を封じろ」。かくして、主人公は命を狙われることになったのでした。

嘉村　ふむふむ。

三葉　つまり、「ボーン・アイデンティティー」と比較すると以下のようになります。

嘉村　なるほど。

三葉　以上、「主人公が暗殺・戦闘のプロではない『ボーン・アイデンティティー』風物語」のアイデアをご紹介しました！

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　「ボーン・アイデンティティー」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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　最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

（担当：三葉）