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宿敵よ、待たせたな。やっと記憶が蘇ったぜ!!|『ボーン・スプレマシー』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「ボーン・スプレマシー」をベースに新しい物語を妄想します。

※「ボーン・スプレマシー」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「ボーン・スプレマシー」は、「復讐」を果たさんと奮闘する主人公が、その途中で「過去の自分の罪」に気づき、「復讐」と「贖罪」の両方をこなす物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「『ボーン・スプレマシー』 ~『カルト教団』編」でした。


案②


嘉村 それでは「案②」にまいりましょう!

三葉 はい。「案②」は、「『ボーン・スプレマシー』 ~『しつこい男』編」です。


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嘉村 しつこい男……?

三葉 詳細をご説明する前に、「ボーン・スプレマシー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、以上を踏まえて……「案②」!ストーリーをご紹介しましょう。舞台は京都。そして、主人公は男子高校生です。

嘉村 ふむ。

三葉 彼は、勉強は好きではないものの地頭はよく、運動神経抜群。また、そそっかしいところはあるが、正義感が強く、友情に厚い男です。

嘉村 「少年マンガの王道主人公」って感じのキャラですかね?

三葉 そうですね。

嘉村 なるほど。

三葉 普段は陽気で、嫌なことがあっても一晩眠れば気分爽快。すっかり忘れてしまう主人公ですが……最近、彼は悩んでいた。

嘉村 ほぉ……と言うと?

三葉 ええ。じつは、毎晩続き物の夢を見ているのです。

嘉村 夢……。

三葉 それも、気持ち悪いほどにリアルな夢です。どうやら奈良時代か平安時代らしいのですが、主人公は家族や仲間に囲まれて暮らしている。そして、時に異形の化け物が出現すると……主人公が出動!彼は超能力か、はたまた魔法なのか、超常的なパワーを駆使して化け物と戦い、彼らを蹴散らす。化け物は「おのれ、セイメイめ!覚えておれ!」と断末魔の叫びを上げ、消滅する。

嘉村 ふーむ。

三葉 当初、主人公は「随分シャレた夢を見たなぁ」「我ながら、マンガの読み過ぎか?」なんて思っていたのですが……毎晩毎晩同じ夢を見る内に、次第に怖くなってきた。もしかして、これは何か悪い予兆なのではなかろうか!?

嘉村 なるほど。

三葉 さて、そんなある日のことです。いつものように下校していると……主人公は、ふいに鳥に襲われた!

嘉村 鳥……?

三葉 3mはあろうかという巨大な鳥です。しかも、一見して禍々しい。まさに怪鳥と呼ぶべきでしょう。

嘉村 ほぉ。怪鳥が人間を襲う物語といえば、例えば「鳥葬のバベル」というマンガがありますが……。


三葉 そうですね。あんな不気味な鳥をご想像ください。

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公は仰天する。何だこれは!?オレは夢でも見ているのか?……夢。そういえば、夢の中でオレはこんな怪鳥と戦っていたっけ。……なんて考えている場合ではない!これは現実だ!主人公は慌てて逃げ出した。

嘉村 ふむ。

三葉 幸い、彼は運動神経がいい。走り、隠れ、やり過ごす。間もなく、怪鳥は姿を消した。主人公は「まったく、一体何だってんだ!」と文句を垂れながら帰宅し、夕飯を食べ、宿題……には手をつけず、マンガを読んで就寝。そして、今夜も夢の中で怪鳥と戦う。翌朝目を覚ます「本当に……一体何だってんだよ……」。彼はうんざりです「オレ、神社でお祓いでもしてもらった方がいいのかなぁ……」。

嘉村 なるほど。

三葉 しかし、彼の不幸はまだ続きます。その日の放課後、主人公が友人らと連れ立って歩いていると……また出た!あの怪鳥です。主人公は慌てて逃げ出す。ところが、友人らは怪訝な表情を浮かべるだけで、逃げるそぶりすら見せない。

嘉村 ほぉ……。

三葉 主人公が必死に叫ぶ「おい、危ないぞ!早く逃げろ!」。しかし友人らは、呑気に笑っている「アハハッ!何言ってんだよ」「寝ぼけてんのかー?」。まさか……まさか……いや、そうとしか考えられぬ。友人らには怪鳥が見えていないのだ!

嘉村 ふむふむ。

三葉 えっ、えっ……オレにだけ見えているってこと?なんで!?いや、いまはそれどころではない。怪鳥が迫っている。怪鳥は、友人らにも害を及ぼすのだろうか?それとも、ヤツの狙いはオレだけ?えっ、えっ、どうする?どーすんの?オレ?どーすんのよ!


三葉 とまぁ主人公が混乱している間にも、怪鳥は接近し……嗚呼、悲劇!怪鳥は、友人らに体当たりをかました。友人Aは3mほどぶっ飛び、足の骨を折った。友人Bは5mほど宙を舞い、肩と腕の骨を折った。

嘉村 おー……。

三葉 くっ!主人公は唇を噛む。彼の脳みそがフル回転する。……1mでもいい。たとえ30cmでも構わぬ。ここから離れるのだ!オレが怪鳥を引きつける。囮になる。大けがを負った友人らを救うにはそれしかない。さぁ、オレの大腿四頭筋よ!ハムストリングよ!準備はいいか!行くぜ!彼は駆け出した。全力で走る。怪鳥が追いかけてくる。よーし、いいぞ。さぁ、こっちに来い!

嘉村 ふむふむ。

三葉 とその時、背後から声が聞こえました「逃げるか、セイメイよ!この腰抜けめ」。驚き、振り返る。そこには怪鳥しかいない。まさか……あいつがしゃべったのか!?

嘉村 ほぉ!

三葉 「セイメイ」。どこかで聞いたような……って夢の中で聞いた名じゃねぇか!チクショウ!訳がわからねぇよ!だが、考えるのは後回しだ!いまは逃げの一手だぜ。……主人公は怪鳥を引きつけ、上手く逃げ切りました。

嘉村 ふむ。

三葉 そして帰宅後、主人公は腹を固めた。あの怪鳥はオレの友人を傷つけた!友情に厚い主人公は激昂する。よくもやってくれたな!絶対許さねぇ!オレが2人の仇を取る!……ということで、主人公の「復讐」が始まります。

嘉村 ふむふむ。

三葉 まずは、あの怪鳥の正体を突き止めよう。それに、オレを狙う理由も知りたい。謎を解き明かすヒントは……そう、夢だ!主人公は記憶を辿り、夢で見たものや聞いた言葉を紙に書き出す。いくつかの建物。紋章らしき記号。「セイメイ」という言葉。そして異形の敵。主人公はインターネットや図書館を利用して、それらについて情報を集めた。間もなく……夢に登場する建物が、平安時代に実在した神社だと判明。

嘉村 ほぉ。

三葉 今度は、その神社について情報を集める。神社自体は現存しないものの、神社に保管されていた巻物類はいまも残っているそうだ。博物館に足を運ぶ。……という具合に情報を辿る内に、やがて真実が明らかになりました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 すなわち……主人公は、平安時代の天才陰陽師・安倍晴明の生まれ変わりだった!


嘉村 安倍晴明!あー、「セイメイ」というのは「晴明」のことだったんですね。

三葉 はい、その通りです。

嘉村 つまり、主人公が連夜見ていたのは、単なる夢ではなく……。

三葉 過去世の記憶ですね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、平安時代……主人公(= 安倍晴明)はヒーローだった。人びとの幸福や安全のために、独自に編み出した呪術を用いて鬼や死霊と戦う毎日です。

嘉村 ふむ。

三葉 しかしある時、信じがたい怪鳥が現れた。さすがの主人公も後ずさりする。何しろ……その怪鳥は不死身だったのです。

嘉村 おー!

三葉 物理的な攻撃はもちろん、呪術の類も一切効かぬ。主人公の全力をもってしても殺すことができない。怪鳥は暴れ回る。人びとが傷つく。帝にも危険が及ぶ。かくなる上は……かくなる上は!主人公は腹をくくった「怪鳥よ。もう好きにはさせぬぞ」「またお前か、晴明よ。お前の攻撃がワシには効かぬということが、まだわからぬか。まったくしつこい男だ」「フフッ。『しつこい男』か。よく言われるよ。ヘビのような男だってね。しかし、まだお前はオレの本当のしつこさを知らぬ」「ん?」「さぁ、怪鳥よ。100年、200年、300年……そして1000年!オレのしつこさをとくと味わってもらおうか!」。主人公は最終奥義を発動する。

嘉村 最終奥義!

三葉 それは……「怪鳥よ、お前を封印する!大人しく眠りにつくがいい!」「ふっ、封印だと!?」「私の命と引き換えに、お前を封印する!」「くっ、この力は!……ハッハッハ!さすがだな、晴明よ。殺せぬと見るや、封印か。あっぱれだ。大人しく眠りについてやろう。だがな、お前の封印とやらは、一体いつまでもつかな?いつまでオレのパワーを抑えつけておけるかな?100年か?200年か?お前には、オレを永遠に封印するほどの力はあるまい」「フフッ」「……何がおかしい!」「さらばだ、怪鳥よ。再会の時を楽しみにしているぞ」「『再会』?おい、どういう意味だ!?」。主人公はニヤリと笑って、その場に倒れ込んだ。心臓が止まっていた。一方、怪鳥は護符に吸い込まれていった。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、主人公の最終奥義ですが……これは、単に敵を封印する術ではありません。敵が強大であれば、いつかは封印が解かれ、敵が復活するのが道理。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公が放ったのは、それをも見越した技です。つまり敵の封印が解けそうになると、主人公の魂が蘇り、その時代に転生するという大技!

嘉村 ははぁ。

三葉 例えば、主人公が怪鳥を封じてから200年後のことです。時は鎌倉時代。ついに封印が解けた!……のですが、その数年前、近々封印が解けることを察した主人公の魂が、先んじて蘇っていました。

嘉村 ほぉ。

三葉 復活して間もない怪鳥の前に、1人の若き陰陽師が現れた「やぁ、怪鳥よ。ご機嫌いかがかな?」。怪鳥は訝しむ「随分と馴れ馴れしいヤツだ。神にも等しいワシに軽口を叩くとは、じつに生意気な」「フフッ」「何がおかしい!」「そう冷たいことを言うなよ。200年ぶりの再会なんだから」「うっ……まっ、まさかお前は!」「あの時言っただろ?私はしつこいってね。さぁ、怪鳥よ。復活早々申し訳ないが、また眠りについてもらおうか!」「よっ、止せ!」。……このように、怪鳥は何度も封印を解いて復活し、そのたびに主人公の魂も転生。2人は戦い続けてきたのでした。

嘉村 なるほど。

三葉 平安時代に始まり、鎌倉、室町、江戸、さらに昭和……そして令和!ところが今回、主人公は過去の記憶を失っていました。「自身が果たすべき役割」も、「怪鳥こそが宿敵であること」も、すっかり忘れていた。さらに困ったことに……彼は、最終奥義のこともまったく覚えていない!これでは怪鳥を封印することができぬ!

嘉村 ふーむ。

三葉 長い戦いの中で、こんなことは初めてです。魂は蘇ったというのに、一体なぜ記憶が欠落しているのか?……やがて理由が明らかになりました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 前回の戦い……すなわち昭和初期。主人公は怪鳥と戦う中で、1人の女性を死なせてしまったのです。無論わざとではありません。不幸な事故です。主人公と怪鳥が渡り合う最中……偶然通りかかった女性が巻き添えになったのです。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公はショックを受けた。長い戦いの中で、犠牲者を出したのは初めてのことでした。女性は意識を失っている様子。出血が激しい。このままでは、間もなく死んでしまうでしょう。しかし、いまならまだ救命できるかもしれぬ……が!クソ!不死の怪鳥を相手にしながら女性を救うだなんて、そんな余裕はない。一瞬でも気を抜けば、主人公自身がやられてしまう。……クソ!クソ!クソ!主人公は怪鳥を封印する。そして同時に彼も倒れ込んだ。

嘉村 あー、そうか。最終奥義は彼の全力を使って放つものだから、「まずは怪鳥を封印し、それから女性を救う」というわけにいかないんですね。

三葉 ええ、その通りです。怪鳥を封印するということは、主人公が死ぬということですからね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし……しかしそれでも、主人公は何とか女性を救おうとした。這い寄る。腕を伸ばす。ダメだ。届かない。間もなく、意識が濁ってきた。視界が暗くなる。クソ!オレは女性を傷つけ、救うこともできない!オレは……オレは……クソ!彼は息絶えた。

嘉村 ふーむ……。

三葉 要するに、この時のことがトラウマになり、主人公は記憶を失っていたのです。

嘉村 なるほど。

三葉 しかしいま、主人公はすべての記憶を取り戻しました。いまなら最終奥義を放つこともできる。さぁ怪鳥よ、勝負だ!……が、その前に。主人公には、やっておくべきことがあります。

嘉村 ふむ。

三葉 彼は、あの時救えなかった女性の身元を調べた。随分昔のことだが……やがて女性の墓を発見。墓に参り、手を合わせる。

三葉 ふむふむ。

嘉村 さらに、女性には娘がいたことが判明。「娘」といってももう80代の老女ですが……彼女は存命だった。主人公は老女を訪問。そして事情を説明し、謝罪した。老女は呆然とする「母は病死だと聞かされていました……」。主人公が言った「『いまさら余計なことをお知らせしない方がいいのではないか』と悩みました。『もののけの仕業だなんてけったいなことをお伝えしない方がいいのではないか』と。しかし……私は思うのです。たとえそれがどんな悲惨なものであろうとも、人間は真実を知るべきだと」。主人公は最後にもう1度謝罪し、その場を去った。

嘉村 ふーむ。

三葉 そして……「さぁ、怪鳥よ。わが宿敵よ。待たせたな」。主人公は怪鳥と戦い、無事封印に成功した。怪鳥が眠りにつく「まったくしつこい男だ」。主人公は「だからそう言ったじゃないか」と笑い、息絶えた。……で、物語は幕を閉じます。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『ボーン・スプレマシー』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「ボーン・スプレマシー」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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