松下幸之助と『経営の技法』#17

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.3/3の金言
 悩みに負けてしまわない。新しい解釈を見出して、乗り越える。

2.3/3の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 例えば、長雨が嫌で悩んでいるときに、この雨で豊かな水が供給されて役立つ、と言うように考え、味方の転換をし、新しい解釈をする。難しい場合には、何時間も何日間も悩むことになるが、これは仕方がない。悩みに負けてしまうのではなく、このようにして悩みを乗り越えていく。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでの松下幸之助氏の金言は、会社経営が壁にぶちあたる場合があることと、それを乗り越えるためには経営者が解決策を考えなければならないこと、が示されていると思われます。
 もちろん、経営的にはこの解決策が実際に通用するのかどうかが重大問題であり、さらに、この解決策を会社組織が一体となって遂行できるかどうかも問題となります。後者は、経営者の統制力が問われる問題です。
 そのために、経営者は従業員一人一人に対して目標に応じた役割を与え、具体的な業務指示を与えますが、その遂行のために業務目標の設定と、その達成度の人事考課を行います。さらに、組織に必要な機能を分担させ、必要な相互牽制を働かせるように上手く組織設計を行います。
 このような、組織設計と人事が経営の統制力の重要なツールとなりますが、それだけでなく、従業員それぞれの意欲を引き出すための、企業文化を作り上げること等も重要なツールです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 経営者に経営を託している以上、投資家としてできることは、問題の克服を見守るか、経営者を取り換えることです。
 さらに、ガバナンスに関わる手法が問題克服のために用いられることがあります。
 資金調達のために、新株を発行する方法や、他の会社を買収する方法などが、その典型となります。会社がグループを形成していて、グループを再編する場合もあるでしょう。
 このように、ガバナンスに関わる経営戦略も、重要なツールです。

5.おわりに
 経営者の立場に話を戻しましょう。
 結局、経営上の問題に直面したときに、克服策を考え出し、実行する責任は経営者にあります。『経営の技法』に関する2つの三角形は、上記のように、必要な対策が講じられたのかを検証し、概観するうえで有効であることが、お判りいただけたと思います。
 経営者は、何日も悩んで解決策を考えなければならない、という松下幸之助氏の金言の背景には、組織を動かし、多くの人を巻き込んで問題を解決する経営者の責任があるのです。


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