なぜこんなにも洋服に魅了されるのか
私はとあるレディースブランドのデザイナーの仕事をしている。
どんなに自分の好きなファッションの傾向と違ったとしても、会社員のうちは“売れる洋服”を作らないといけない。
一部の人だけがキャアキャア言うような服を作ることは上司からの許可が降りないし、「一般的な人々が着やすいもの」を知っておくことは私のスキルとして多いに必要。
でも私自身は一般の人が少しハードルが高く感じるであろうデザインも好きで、もちろんトレンドのものは新鮮で心も躍る。
自分軸で一人よがりな服作りをしないように周りを見て、でも自分の好きなものは好きなまま。そんな生活をもう5年以上も続けている。
どんな服作りも楽しいし、自分が好きなファッションを着ることも両立しながら、ずっと洋服が好きでいる。
仕事が嫌だと思ったことはあるけれど、洋服を嫌いになったことは無い。
どうしてこんなにも、私は洋服に魅了されているんだろう？
洋服の魅力や価値、「洋服って私にとってなんなんだろう？」って、真剣に考えてみた。
自分を写す身近な鏡
クローゼットを開けた時の色味が、昔よりも落ち着いた。
シンプルで上品なデザインのアイテムも増えてきた。
そうやって確実に年齢を重ねて選ぶものが洗練されてきたことに気付かされる。
そんな中で煌めくようなイエローやピンクの服を選ぶ日は、決まって気分が明るい時。
デートの時は、デニムだろうとどこかに女性らしいデザインのあるトップスを合わせる。
その日に会う友達に、少しだけテイストを合わせてみる。
私の成長と気分に、何よりも合わせてくれる存在。
時代に左右されない、運命のアイテム
古着屋さんで買ったワンピースを、流行りのアイテムと合わせて着こなすの大好き。
運命みたいに吸い寄せられて、見事に私のサイズにぴったりだったそのワンピースは、いつ生み出されたのかもわからないもの。
それでも綺麗にこの時代まで残されて、こうして私が大切に着ている出来事自体が、私にとっては奇跡のように感じる。
その時代に合わせたトレンドは確実にある。そのトレンドを追いかけることがおしゃれの醍醐味でもある。
だけどその中でも、“変わらないもの”としてクローゼットに居座る数少ないアイテムは誰の手にもきっとあって。
時代に左右されずに持ち主のスタイルに合わせて一緒に時を過ごす、その運命のワンピースを私はずっと愛している。
脳内がざわつくような直感的な“ときめき”
頭の芯から「素敵！」「こりゃあおしゃれだ…」「たまらない！」と言葉が溢れ出してしまう洋服との出会いがある。
心のときめきなのか、脳が興奮しているのか、体のどこがどう繋がってどんなふうにこんな気持ちになっているのかわからない！笑
そうやってIQが3くらいになってしまうような、落雷みたいな、降ってくるみたいな、フラッシュモブみたいな、
私の全神経に刺さるような“ときめき”を起こしてくれる存在だったりする。
価値があるかは、買う人が決める
私がどんなにときめいたとしても、友人が「ふーん」って言うこともある。
私が素通りしてしまうようなものに、「かわいい〜！！」って走っていく人もいる。
これは絶対売れそうだ！！って自信を持って発売したアイテムが全然売れないことも、
「あなたがこんなにヒットするなんて！？」なんて失礼なこと言ってしまうアイテムもある。
どんなアイテムにも、買い手にとってのストーリーがある。
憧れの人が来ていたものとか、待ち侘びていたものとか、ドンピシャで探していた色味だとか。
洋服の価値に、決まった基準は無い。買い手や着る人が決めるもの。
その不安定さや気まぐれさが、難しくて愛おしい。
アートであり、日常
洋服がアートなのか、着ているその人がアートなのか？
どちらにせよ洋服があってこそ、私の思うアートの枠はずっと広がる。
絵画や写真など、いわゆる“本当のアート”を手に入れられる人は限られているけれど、
洋服は誰もが手に入れられて、好きに組み合わせて、個人を表現出来る一番身近なアートだ。
気分でお花や絵画を部屋に飾るみたいに、気分で自分を飾り付けることができる。
日常に必ず必要なものでは無いけれど、大切に思えば思うほど日常が彩られる。
そんな気がしている。
心を潤す必要不可欠な存在
私にとって洋服は必要不可欠な存在。
自分を表現させてくれるものであり、生きる世界を彩ってくれるもの。
「ただ着るものだ」って思う人もたくさんいるだろうけれど、それも正解だと思う。
その「ただ着るもの」が、確実に日々私の心を潤してくれている。
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