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白昼夢:鳥居

 どうも、サラリーマンです。二十代最後の一年を過ごしている独身です。冴えないながらも穏やかな日々を過ごしています。

 好きなものはお酒とゲーム。食べること全般、好きです。運動は苦手です。
 今まではいくら食べても飲んでも健康でした。しかしこのところ、お腹回りが気になってきています。動かなくても、たくさん飲み食いしても太らなかったのになぁ。これがアラサーということでしょうか。

 健康のために体を動かしたいですが、激しい運動は気が乗りません。ということで、まずは軽いウォーキングから始めることにしました。

 私の家から一キロもないくらいの場所に、小さな神社があります。往復で二キロ弱。ちょうど良いんじゃないですか。
 さて歩こう、と思ったのですが。十一月だというのに、この暑さ。昼間に行くのはやめました。夕方ようやく涼しくなってきたので出発します。神社までは緩やかな登り坂。途中にあるコンビニの誘惑を乗り越え、歩きます。ところで、暑さのせいで忘れそうになっていましたが今は十一月、日が落ちる早さを侮ってはいけませんね。神社に着く頃にはずいぶん薄暗くなっていました。

 本殿に続く階段を上り、鳥居をくぐっていくと、カラスがうるさく鳴きました。右手に森があるからでしょうか。あまりにもうるさいのと『夕暮れの神社』という状況があいまって、警告のように聞こえてしまいます。
 こういうところは怖い。オバケの類いが、ではなく、人間、不審者が、ですね。
 幸いにも私は身長が高く、肩幅もあり、どちらかといえばガタイが良い方です。だから不審者に襲われるということはそう無いでしょうが、こういう小さな、無人の神社で誰かに出くわしたらやっぱり怖いでしょう。私に出くわした方も怖いでしょうけど。

 相変わらずカラスはうるさいものの、誰にも出会わず階段の上までたどり着きました。お賽銭(本当は五円を入れたかったのですがあいにく財布に入っておらず、十円にしました)を投げ、お参りを済ませます。
 世界が平和でありますように。
 振り返ると、あたりはさらに暗くなり、今にも日が沈みそうでした。
 カラスの声を聞きつつ、上ってきた階段を下ります。鳥居をくぐって本殿の方を向き、一礼。顔を上げました。

 そこで私は、なんだか、奇妙な感じがしました。

 鳥居越しに見える景色が、なにか違うようだったのです。

 どう違うのかは説明できません。でも、そこだけ明るいような、景色がずれているような、別世界のような。そんな感覚がしたのです。
 まばたきをするともうあたりはすっかり暗くなって、鳥居の向こうの世界も普通に戻ったようでした。
 あれは、私の見間違いだったのでしょうか。わかりません。

 神社の境内を出ると、あんなにやかましかったカラスの声がいつの間にか聞こえなくなっていました。 
 頼りない街灯が光る道を、私は行きよりも早歩きで進みました。暗くなり、涼しくなっていましたが、私は汗をかいていました。
 途中のコンビニについつい寄ってアイスクリームを買ってしまいました。仕方ありません、少し歩いたご褒美とします。

 これからまた寒くなるでしょうから、ウォーキングは続けられそうです。でも、これからはもう少し早い時間にしようかな。

 以上、サラリーマンでした。









 

 

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