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女の子も稼げないと結婚できないらしいよ──約半数の男性が女性の経済力を重視する

先日テレビを点けたら、作家の古市憲寿氏が
女性が経済力をつけて一人で生きていけるようになったから結婚しなくなり、少子化になった
ということを言っていました。

このように信じている人って結構多いと思います。
本当にそうなのでしょうか?

少子化の原因はまた別の機会に回しますが(少しこちらで触れています)、
経済力のある女性は結婚しないのか?」を検証したいと思います。

正規社員同士で結婚する割合が高くなり、パワーカップルが生まれやすい令和

男性の年収と未婚率に相関関係があることはよく知られていますが、女性はどうでしょうか。
総務省の「就業構造基本調査」を元に内閣府が作成した「男女別にみた年収区分別の未婚率」を見てみましょう。

女性は年収200万円台が最も未婚率が高い

令和5年度 年次経済財政報告(内閣府)

男性は、よく言われているように、年収が高いほど未婚率は低いです。
弱者男性が生まれやすい状況ですね。

女性は、年収200万円台が最も未婚率が高く、300万円台以上は未婚率が微減していきます。

つまり、「経済力のある女性は、一人で生きていけるから結婚しない」というのはウソ
稼いでいる女性のほうが結婚する傾向が、10年前よりも強くなっています。

古市氏は、一体何の根拠があって冒頭の発言をしたのでしょうか?

派遣女性は1,000万プレーヤーをつかまえられるのか?

国立社会保障・人口問題研究所は、「現代日本の結婚と出産-出生動向基本調査」という調査を行っています。

2023年8月に公開された第16回の調査では、夫婦の就業形態の組み合わせ状況が発表されました。


国立社会保障・人口問題研究所「現代日本の結婚と出産-出生動向基本調査」

これによると、妻が30〜39歳の場合、
2010年は
夫:正規社員×妻:パート・派遣」という組み合わせが26.4%
夫:正規社員×妻:正規社員・自営業」が18.1%でした。

一方で2021年は
夫:正規社員×妻:パート・派遣」という組み合わせが29.5%なのに対し、
夫:正規社員×妻:正規社員・自営業」が34.1%と、
正規社員(または自営業)同士の組み合わせが大幅に増えています。

つまり女性は、正規社員のほうが正規社員の男性に選ばれやすいということ。
派遣で働く女性で、親から「派遣先で正社員の1,000万プレーヤーをつかまえてこい!」と言われる人がいるようですが(都市伝説? ただの毒親では?)
派遣よりも正社員になったほうが「つかまえられる」可能性が高いのですね。

正社員同士が結婚するので、世帯年収1,000万円以上のパワーカップル(パワーカップルの定義はいろいろですが)が生まれやすい状況のようです。

これは個人的な肌感覚としても納得できます。
大学の同級生を見ても、正社員は正社員を選ぶことが多いですね。
パワーカップルが生まれる一方で、年収が低い未婚男女との格差がどんどん開いていくわけです。

48%の男性がパートナーに経済力を求める

なぜ正社員の男性は、パートナーに正社員の女性を選ぶのでしょうか?

結婚のメリットは「経済的に余裕がもてる」こと

未婚者は何に結婚のメリットを感じているかを見てみます。

前出の「出生動向基本調査」によると、結婚の利点として挙げられたのは「自分の子どもや家族をもてる」が歴代で第一位ですが、
第16回(2021年)はこれが減少し、代わりに「経済的に余裕がもてる」が微増しました。

国立社会保障・人口問題研究所「現代日本の結婚と出産-出生動向基本調査」

前々回(第15回)は2015年なので、6年間で結婚に経済的なメリットを見出す人が増えたということですね。
経済状況がどんどん悪くなり、未婚者のマインドがシビアになったと感じます。

男性はパートナーに何を求めているのでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所「現代日本の結婚と出産-出生動向基本調査」

結婚相手に求める条件として、男女ともに
・人柄
・家事と育児の能力や姿勢
・仕事への理解
が多いのですが、妻となる相手に「経済力」を求める男性が年々増え、2021年では48.2%が重視する・考慮すると答えています。

個人的にはこの結果、結構ショックで…。

もちろん、女性が男性に経済力を求める割合は91%と高いのですが(高い理由はまた別のところで書きます)、男性も「女性に稼いでほしい」と思っているわけですね。

そうすると、冒頭の内閣府のデータの
「女性は年収200万円台が最も未婚率が高く、300万円台以上は未婚率が微減する」
という理由が明らかになるのではないでしょうか。

男性は女性に出産後も働いてほしい

未婚男性がパートナーに望むライフコースとして、
出産後にも仕事を続ける両立コース」が39.4%に増加し、これまでで最多となりました。

国立社会保障・人口問題研究所「現代日本の結婚と出産-出生動向基本調査」

つまりは、日本の経済状況が厳しくなり、男性の年収だけでは暮らせなくなった
男性は自分の稼ぎだけでは暮らしていけないと思っているから、妻となる女性の経済力も重視する
そして出産後も女性には働いて家計を支えてほしい。

こういうことですね。

女性は女性で厳しい状況をわかっているようで、今や「主婦になりたいなんて高望み」という感じではないでしょうか。

未婚女性も「両立コース」を望む人が39.4%で、過去最多。
男性の収入だけでは厳しい生活になることがわかっているから、自分も働きたい(働かざるを得ない)と思っているのですね。

出生動向基本調査は面白いデータが満載なので、また記事にしたいと思います。

働く女性が増えたから少子化が加速したのか?

まあ何が言いたいのかというと、こういうデータを無視して
「働く女が増えて、一人で生きていけるようになったから少子化が進んだ」
という言説を垂れ流す、古市氏のような人が大嫌い!! なんですよね。

どんだけ呑気なのか、現実を見ていないのか、この記事を読んでくださった人にはおわかりになるはずです。

呑気な言説に立ち向かうためにも、データをしっかり見たいと思っています。



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