壷中天

You are what you ate...人はその摂取したものの総体であるなら、同…

壷中天

You are what you ate...人はその摂取したものの総体であるなら、同時に、見たもの、読んだもの、聴いたもの、感じたこと、考えたこと、さらには為したことの総体でもあるだろう

最近の記事

天使の分け前ふたたび:グレイトフル・デッド"From The Mars Hotel: The Angel's Share"

グレイトフル・デッドの50周年記念天使の分け前シリーズの、Wake of the Flood篇については何回にも分けて詳細に書いたにもかかわらず、まだ完了していないのに、もうつぎのFrom The Mars Hotel篇がリリースされてしまった。 元盤のリリースは1974年、たしかに半世紀たったのだが、それにしても、あまりと云えばあまりな光陰矢の如し、「♪あれから50年」じゃあ、ただのジジイとババア、歌にもならない! ただただ落莫果てしなし。 しかし、今回は、これまでの三

    • 古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』

      二十歳前後に読んだきりだったモームの『アシェンデン』(Ashenden or The British Agent)を再読した。 ◎外套と短剣からの離陸 アシェンデンを「ミステリー」に分類するのは据わりが悪く感じるかもしれないが、昔は、エスピオナージュ小説の古典ということにされていたのだ。再読してみて、やはり、それはそれでかまわないだろうと感じた。 実物を読んだことはないが、19世紀から20世紀はじめにかけて盛ったという、「外套と短剣」Cloak and Daggerなど

      • 本物の人間と本物の蒸気機関車:チャールズ・ブロンソン主演『軍用列車』

        ふと、アリステア・マクリーンを読みたくなった。しかし、手元にはもう一冊もなく、じゃあ、映画にするかと探して、HDDの肥やしになっていた2本のうちのひとつ、チャールズ・ブロンソン主演のBreakheart Pass(『軍用列車』1975)をプレイヤーにドラッグした。 ◎アメリカン・ウィルダーネスを疾駆する機関車 時代が時代なので、タイトル・デザインはよろしくなく、大丈夫かよ、と不安になったが、話に入り、列車が登場したとたん、よしよしこれなら大丈夫だ、と腰を据えて見る気になっ

        • 58年目のビーチボーイズ大棚卸 2. Please Let Me Wonder:スペクターへのロード・マップ

          先日の「無音部に流れる時間:ハル・ブレイン、大滝詠一、ブライアン・ウィルソン、ティファナ・ブラス 」という記事でブライアン・ウィルソンのことを書いていて、すっかり忘れていたことを思いだした。 昨夏、わが家にある、ブートをのぞく、合計61.7GBにおよぶビーチボーイズの正規盤全エディションを聴き直す、という大棚卸について書くつもりで、その前説の部分(「58年目のビーチボーイズ大棚卸 1. 裸にされたDarlin'」 )はポストしておきながら、その直後にグレイトフル・デッドのW

        天使の分け前ふたたび:グレイトフル・デッド"From The Mars Hotel: The Angel's Share"

        • 古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』

        • 本物の人間と本物の蒸気機関車:チャールズ・ブロンソン主演『軍用列車』

        • 58年目のビーチボーイズ大棚卸 2. Please Let Me Wonder:スペクターへのロード・マップ

          暑い! 一昨日まではエアコンを入れていたし、今朝だって冷え込んで、一時間ほどヒーターをつけていた。それから五時間後には夏! まるではっぴいえんどのアレだ。 「♪暖房装置の冬が行くと、冷房装置の夏が来た、ほんにーはーるーは来やしない、おや、まあ、また待ちぼうけ」(『春らんまん』)

          暑い! 一昨日まではエアコンを入れていたし、今朝だって冷え込んで、一時間ほどヒーターをつけていた。それから五時間後には夏! まるではっぴいえんどのアレだ。 「♪暖房装置の冬が行くと、冷房装置の夏が来た、ほんにーはーるーは来やしない、おや、まあ、また待ちぼうけ」(『春らんまん』)

          無音部に流れる時間:ハル・ブレイン、大滝詠一、ブライアン・ウィルソン、ティファナ・ブラス

          大滝詠一のEach Time40周年記念盤を聴いた。このセット全体を検討しはじめると、先般のグレイトフル・デッドの記事(「文字盤上の天使の分け前 Grateful Dead - Wake of the Flood: Angel's Share 」以下、「続」、「続々」、「続々々」など、数回にわたって書いたのだが、じつはまだ完結していない!)の轍を踏んで、またしても終わらなくなること必定なので、それはしない(呵々)。ささやかなディテールであれこれ思いだしたことがあるので、そのこ

          無音部に流れる時間:ハル・ブレイン、大滝詠一、ブライアン・ウィルソン、ティファナ・ブラス

          再びハープ・ジャズ:The Daphne Hellman Quartet - Holiday For Harp, 1959

          ハープ・ジャズというのは一握りなのだと「楽器コンビネーションの冒険:マット・マシューズのSwingin' Pretty and All That Jazz, 1960 」では書いたが、求めよ、されば与えられん、探してみると、不思議に見つかるもので、またひとつ、楽しいハープ・ジャズ盤に遭遇した。落語「山号寺号」の旦那のセリフじゃないが、「あるものだねえ」である。 このところ、しじゅうInternet ArchiveのLPリップを見ているのだが、IAでは何かのページを見ると、下

          再びハープ・ジャズ:The Daphne Hellman Quartet - Holiday For Harp, 1959

          バディー・モンゴメリーのA Love Affair in ParisとThe Montgomery Brothers in Canada

          ◎ヴァイブラフォーン・クレイジー 中学の時に最初に買った4ビート盤は、ゲーリー・バートン・カルテットのDusterだった。 ラリー・コリエルが聴きたかっただけなのだが、バートンのヴァイブラフォーン・プレイにも魅了されたし、さらにはスティーヴ・スワロウのベース(この時点ではまだストリング・ベースのみ)にも感心した。その勢いで、70年だったと思うが、日比谷公会堂でのゲーリー・バートン・カルテットも見に行った。 中年になって4ビート蒐集を再開した時も、まずバートンで、あの時代

          バディー・モンゴメリーのA Love Affair in ParisとThe Montgomery Brothers in Canada

          楽器コンビネーションの冒険:マット・マシューズのSwingin' Pretty and All That Jazz, 1960

          「マット・マシューズの4 French Horns Plus Rhythm」という記事の最後に触れたアルバム、Mat Mathews - Swingin' Pretty and All That Jazz, 1960のLPリップのFLACファイルをInternet Archiveで手に入れ、ノイズ・リダクションをかけた。 IAのMat Mathews - Swingin' Pretty and All That Jazzファイル IAのLPリップの大多数は非常に状態が悪く

          楽器コンビネーションの冒険:マット・マシューズのSwingin' Pretty and All That Jazz, 1960

          マット・マシューズのアコーディオンと4 French Horns Plus Rhythm

          ブライアン・ウィルソンの影響なのか、主流派ではない楽器が好きで、しばしば、ただその楽器のサウンドだけを目当てに音楽を聴くことがある。アコーディオン、ハープ、ブズーキ、ツィター、サントゥール(ハンマー・ダルシマーの親戚)、サロッド、その他もろもろ。 楽器は民族に根ざし、それが周囲に波及していくもので、楽器を基準に音楽を聴けば、民族音楽へと向かうことになるが、逆方向も存在する。その典型が、さまざまな楽器を集め、それを組み合わせることによって、新しいサウンドをつくろうとした、ブラ

          マット・マシューズのアコーディオンと4 French Horns Plus Rhythm

          Bumble Bee Twistとリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee棚卸 その2 クラシック篇

          ヴェンチャーズを先にと思ったのだが、正体不明トラックの調査はいよいよ泥沼、一向に曙光見えず。よって、先に、調査など不要、こちらがたいしたナレッジ・ベースを持ち合わせないため、突っ込むに突っ込めず、ただそこにある音を聴くだけですむ、クラシック関係を片づける。いや、その前に前回の「ポップ篇」の補足を。 ◎(たぶん)最初のヒット・ヴァージョン、フレディー・マーティン&ヒズ・オーケストラ盤Bumble Boogie 前回の記事を読んだ友人から、タイトルが違うせいで、このヴァージョ

          Bumble Bee Twistとリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee棚卸 その2 クラシック篇

          Bumble Bee Twistとリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee棚卸 その1 ポップ篇

          (これは「サーチャーズとラヴァーン・ベイカーのBumble Bee、ついでにリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee」という記事の続篇、ないしは枝分かれなので、気になる方はそちらのほうもご参照あれ。) Everythingで検索して転がりだしたBumble Bee Twist=The Flight of the Bumble BeeをただFB2Kにドラッグして、聴きくらべ、それを書くだけの簡単なこと、のはずだった。 ところがどっこい

          Bumble Bee Twistとリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee棚卸 その1 ポップ篇

          サーチャーズとラヴァーン・ベイカーのBumble Bee、ついでにリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee

          The Girls Got Soul 1960-69、という、アトランティックのカタログからオブスキュアな曲をサルヴェージして、小銭稼ぎを目論む(という意図ざんしょ?)ケント・レコードのWhere It's Atシリーズの一枚を聴いた。 タイトル通り、60年代女性R&Bシンガー集。昔、日本ですらかなりエア・プレイがあって、ぜんぜんレアじゃないスウィート・インスピレーションズのヒット、Sweet Inspirationsがオープナーだが、あとはまあ宣伝通り、覚えていなかった曲

          サーチャーズとラヴァーン・ベイカーのBumble Bee、ついでにリムスキー=コルサコフのThe Flight of the Bumble Bee

          マルセル・ビアンキと灰田晴彦・勝彦兄弟:フレンチ・ハワイアンとジャパニーズ・ハワイアン

          幼児から小学校にかけて、日本ではマンボなどのラテンとハワイアンが非常に盛んで、ロカビリーなどより身近な音楽だった。 ◎「日本的に訛った音楽」? それは60年代なかばのビリー・ヴォーン・オーケストラ「真珠貝の歌 Pearly Shells」の爆発的ヒットまでつづいた(アメリカでは1960年にバール・アイヴズ盤がマイナー・ヒットした。日本では数年遅れて異なるヴァージョンがヒットしたことになる)。 長じて、エスニック・ミュージックの紹介が盛んになったころ、ギャビー・パヒヌイ・

          マルセル・ビアンキと灰田晴彦・勝彦兄弟:フレンチ・ハワイアンとジャパニーズ・ハワイアン

          デッカ時代のリック・ネルソン  For You: The Decca Years 1963-1969

          MP3で持っていたリック・ネルソンのデッカ時代の集大成、For You: The Decca Years 1963-1969をロスレスにアップデイトしたので、改めて全6枚、聴き直した。十年以上前に聴いたきりなので、こんな曲をやっていたんだっけ、と思ったものもいくつかあるし、おや、そうだったのか、と納得したこともいくつかある。 ◎ Fools Rush In 改めて聴くまでもなく、昔からこのリックのカヴァーが大好きだが、やはりヒットしただけあって、デッカ全録音というコンテク

          デッカ時代のリック・ネルソン  For You: The Decca Years 1963-1969

          Back to Mono or Go Stereo? 50年代モノ音源のステレオ化

          50年代から60年代前半までの、シングルはモノが当たり前だった時代のヒット曲を、リアル・ステレオ化したものを聴いた。 ふつう、モノかステレオかといわれれば、ステレオを選ぶのだが、きちんとマスタリングされたものながら、この盤は聴いていてなんだか尻がムズムズしてきた。居心地のよくないマスタリングがつづくのだ。そういえば、あれのステレオもよくなかった、これのステレオも貧相だった、などと過去の駄目ステレオ化盤のあれこれがよみがえってしまった。 しかし、記憶にある音と、いまそこで鳴

          Back to Mono or Go Stereo? 50年代モノ音源のステレオ化