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発達検査で動揺

3番目のミコは吃音があり、療育に通っている。最初は言葉だけが心配で通っていたものの、通ううちに「発達検査を希望されますか?」と何度も聞かれるので、言葉の他に問題があるかもしれないと思われているのだろうか?と、こちらも疑問に思い、とりあえず受けてみることにした。

2番目のニンタは知的障害と発達障害があって、この検査は何度も受けている。私には見慣れた光景の中で、ミコはどんどん難しい問題を問いていき、年齢相応の結果を出した。

それは、改めて二人の違いというか、ニンタの出来ないことの多さに思いを巡らせてしまう場面だった。

ミコの結果は、特に高い点数も出ず、低くもなく、まあ、そんなものだよね、という感じで終わったのだけれど、知らされたのは意外な結果だった。

「ADHDというよりは自閉の傾向」

えっ。

えっ?また?

知的障害のあるニンタとつい比較してしまい、私は「定型発達のミコは、教科書通りにすくすく育っていくな」と感心していた呑気な親で、検査結果はとても意外なものだった。定型発達じゃなかったのー?

ショックを受けないわけではないけれど、私にはもう発達障害の知識が少しはあるので、それが「人生終了宣言」でないことはわかる。

ただ、その子の性格や環境によっては、自分の発達の偏りを気に病んだりするので、先々そうならなければいいな、という心配だけする。とてもする。

心配だ。心配だ。あー、でももう聞いてしまったし。忘れるわけにはいかないんだよなあ。

「自閉症のチェック項目」みたいなものがあって、先生にそれらも質問されたけれど、ミコはほとんどあてはまらない。

発達障害というのは、0%から100%のグラデーションとも言われ、0の人や100の人はほとんどいない。ミコも自閉の傾向があるというだけで、それは珍しいことではないんだろう。

だからこそ、どこにでもある些細なことなら知りたくない、聞きたくない、という人がいるんだな、という事を、私は初めて、本当に少しだけ理解した。

ニンタはあきらかに困りごとがあったから、検査を受けることに何の迷いもなかった。検査を受けるデメリットなんてない、迷っている人はどんどん受けたらいいのに、とすら思っていた。

ところが、ミコは、せっかく検査を受けられる環境なのだから受けておくか、という簡単な気持ちで受けてしまい、そして結果に動揺している。

そうか、こういう事なんだな。知りたくなかった、という気持ちは。

と、動揺しながらも、やはり検査は受けてよかったと思う。

もし、本人が生きづらさを感じる場面がないのであれば、親の心配損で「受けなければよかった」と思う人もいるかもしれない。

でも、もし何か困ったことがあれば、「この子は自閉の傾向があるから」と素早く動くことが出来るし、対応のしようがある。

そして一生順風満帆な事なんてほぼない。たいてい何らかの困難には出会うのだから、そこに対処するための情報を、私は今日1つ手に入れたという事になる。

療育の発達検査は「診断」ではないので、もし今後困り事が増えるようであれば、病院へ行き、正式に診断をあおぐこともできる。

それに、デメリットが「親の心配損」というだけならば、安いものだと思う。親は子供の心配をするのが役目の一つでもあろうし。

割とおおらかな性格のミコは、現在困りごとは少ない。

でも、一つ気になるのは、どうしようもない嘘をつくことだ。

お菓子を食べたのに「食べていない」と言ったりするその場しのぎのもの。それから、もっと困るのは、ニンタの大切なものを隠したりして、ニンタが「ないない」と言っているのを、一緒になって「どこだろうね?」と探してみせたりする。

結局、ミコが自分で「ジャーン!ここでした!」と出してみせ、ニンタの逆鱗に触れてミコが泣かされる。いつもそのパターンなのにやめられないのは、「いじわるがしたい」というよりも、「驚かせてみたい」という動機があるように思える。

保育園ではそんなことはしないらしく、今のところ相手を選んでいるようだけれど、動機はなんであれ、親としては本当に早くやめてほしい。

ところが、私が療育の場でそう話すと、先生は「人を驚かせたい、と嘘をつくのは、物語を作ったりするのに向いているかもしれませんね」と言った。

ほほう。そういう見方もできるのか。

もし、「驚かせたい」「嘘をつきたい」という欲求をちゃんとコントロールできれば、創作活動に活かせる。

なるほど、ねえ…。

そうか。世の中の小説や映画やありとあらゆる創作物は、「どんどん嘘が思いついて止められない」天才たちの作ったものなのか。

いや〜、困ったな。また天才を産んでしまったか。

…。

軽口はさておき。

ニンタの時にさんざん習った「発達障害児の子育て心得」をいくつかアドバイスされ、あーあ、また宿題を持って帰ってきてしまった!と、力なく笑うしかない帰り道だった。




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