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灰色の虎のあしあと_仲間

灰色の虎と「おひさま」


どのくらい色とりどりのお花と戯れていただろうか?気が付くと眠りについていた。なにやら頭の上で話し声が聞こえる。

「またこんなところでハイイロが寝てる!」
「ほんとだぁ~!ハイちゃ!おーい!」

眠い目をこすりながら、僕は声の主を探す。
何かのイキモノだろうか?

前足を伸ばすと、何かに触れた。

サラサラの毛だ。色は、前に白うさぎが飲ませてくれたおいしい飲み物「ココア」みたいな、薄い茶色。日の光を反射してキラキラと光っている。
目をよく開いて見てみると、体は小さいのにどこかどっしりとした風格のあるイキモノが、何か黒いものの上に乗っていた。

「よだれ出してる~!」

僕の自慢のヒゲを強めに引っ張っているのは、真っ黒なつやつやの毛をしたイキモノだ。白うさぎによく似ている。頭の上に「薄茶色」を乗せているのに、ちょこまかと動き回っていて、落ち着きがない。

薄茶色のイキモノは、「ハムスターのリーン」。
黒色のイキモノは、「黒うさぎのラック」。


2匹で笑いながら僕の頬や鼻や後ろ足など、いろんな所を触ってくる。僕はくすぐったくて大きな声を出して笑った。
すると2匹はびっくりしたように止まり、目を丸くして顔を見合わせた。そして、しばらくすると僕の方に向き直り、ニカッと笑い返してくれた。

『「おひさま」みたい。』

僕は、そう想った。

僕は2人の顔に前足を伸ばして、順番に肉球を押し付けてやった。僕のヒゲを弄んだ仕返しだ。


「やめてよハイ~!くすぐったいよ~!」
「逃げろ~!」

2匹の「おひさま」はキャーキャー言いながら笑い、僕の渾身の虎パンチから逃げて行った。


僕は静かになった洞窟の入り口で、頭の中の辞書を開いた。そしてこう書き足した。

『「おひさま」みたいなイキモノは、僕を弄ぶけど、やり返しても怒らない。許してくれる。よく笑う。一緒にいるとおひさまみたいに暖かくて、楽しい気持ちになる。』

そして、後から白うさぎに、2匹はチームの「仲間」と呼ばれるものだと教えてもらった。僕は頭の中の辞書にこう付け加えた。

『「おひさま」は「なかま」。』

「なかま」の横におひさまのマークをぐるぐると描いて、僕は頭の中の辞書を閉じた。



2匹の笑い声が洞窟の中から響いて聞こえてくる。後から追いかけるように白うさぎの笑い声も聞こえてきた。僕は近くに行きたくて、前足や後ろ足をバタバタさせてみたが、思うように前に進まない。

『どうして白うさぎや「なかま」たちみたいに、動き回れないんだろう?』

そんなことを思いながら、僕は自分の前足の肉球をじっと見つめた。


風が強く吹いて、色とりどりの花びらが舞い上がった。
花びらを捕まえようと前足を伸ばして顔を上げると、おひさまは雲に覆われて、空は真っ暗になっていた。


もうすぐ雨が降る。


するとその時、僕の背後から今まで聞いたことのないような大きな音がして、地響きが体の中心にまで届いた。と同時に、白うさぎの悲鳴が聞こえた。


僕は全身の毛が逆立つのを感じて、「ガオゥ」と精一杯の大きな声で鳴いた。

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