恋人がほしいんだよね。

「恋人がほしいんだよね。」

君は突然そう言った。
突然だった。
いらなそうじゃん。って頭をよぎったけど黙った。


「どんな子がタイプなの?」
でも、ひとまず聞いてあげた。


「んー。わかんない。」

君らしい曖昧な答えで少し安心した。

「それじゃあ。選ばれる相手がかわいそうだよ。」
「なんとなく好かれたらたまらないじゃんか。」
「なんか基準はないの?」

「えーーー。決めなきゃダメなの?」
やっぱり君らしい。

「決めなきゃダメってことはないけど
わざわざ恋人ほしいって言うからタイプくらいあると思うじゃん。」

「ないんだよね。」

「真面目に聞いたのがばかだったー」

「ばーか。」

「なにー言ったなー」

結局この話はこれでおしまいだった。


なんで思い出してるかって?
君がこの時私にカマかけたって手紙で残して
旅に出たから。

ずるすぎるよ。

然有琉 湊(さあり みなと)


<あとがき>
ただの旅行の旅かもしれない。
行先はタイかもしれない。(カマ…)
手紙はただの手紙じゃないかもしれない。
最期の別れの挨拶だったかもしれない。

読み手次第っていいよね。

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