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美味しかったものと喜怒哀楽

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カフェやパン屋さん、ティーショップ、ドーナツ屋さんなどなど、"何処か"を訪れるとき、必ず小さいドラマがある。思い出のお店を訪れたときの内面を語るマガジン。
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静寂と躍動が同居する場所で、波のゆくさきを見た。

静寂と躍動が同居する場所で、波のゆくさきを見た。

私は、これから何がやりたいんだろう。

10代の頃から熱中していた歌を辞めた。

年齢は26歳。

"若いときには、若いときにしかできないことをやりう”と、インディーズレーベルでCDを作ったりライブで歌ったりしていたが、結局私は最後まで表現者として殻を破れず、中途半端に終わってしまった。

仲間たちが眩しく見える。
メジャーデビューが決まった人、他にない独特の世界観を持っている人、テクニックだけで

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今のモヤモヤなんて、数年後には覚えちゃいないよね。

今のモヤモヤなんて、数年後には覚えちゃいないよね。

彼女が京都から東京に遊びに来ると知ったのは、夏も終わりに近づいた9月の頃だった。
「吉祥寺に行ってみたい」というリクエストに答え、私は以前に三鷹で一人暮らしをしていた頃によく訪れていたこともあり、LINEでオススメのお店やスポットを提案した。

商店街にあるカレー屋さん。
芸人の又吉さんがよく行くと有名な喫茶店。
オーダーメイドのリングが作れるアクセサリー店。
お昼のワイドショーで特集されていたお

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真夏の太陽に想いを重ねた季節。

真夏の太陽に想いを重ねた季節。

クリームソーダ巡りをしよう。

毎年恒例の京都一人旅でのこと。
夏に訪れるのはまだ2度目だ。

暑さにとにかく弱い私は、初めて夏の京都に来た数年前に見事に盆地の熱気に殺られ、ホテルから出られなくなったことが軽くトラウマだった。

それなのに何故この季節にまた来ることにしたのかというと、この日の前日、友人と大阪ドームにライブを見に行く予定があったためである。

三連休を取っていた私は、万全の熱中症対

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オリーブ塩が香る指定席にて。

オリーブ塩が香る指定席にて。

私がそのパン屋さんの存在を知ったのは、5年ほど前の秋のことだった。

当時密かに憧れてた人が、大学時代を京都で過ごしていたと聞いて、一週間後に京都一人旅を控えていた私は、即座にオススメのお店を聞いた。

そこで名前が出てきたのが、「ル・プチメック」だったのだ。

✱ ✱ ✱

「ル・プチメック」は、烏丸御池駅から歩いて10分くらいのところにあった。

東京とは違い、碁盤の目になっている京都の道。

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