わざとらしい温もりについて
春なんて嫌いだ
親切そうな顔をして手を振って、いざ近くに来ると残酷なまでにも現実を突きつけてくるじゃないか。まるで選挙の時だけいい顔して馬鹿みたいに名前ばかり叫んでいる国会議員みたいだ。ずっと一緒にいようなって言ってた奴もどこかに行ってしまったし。若者もいい年した大人も社会までもが浮かれて木の下でブルーシート広げたりしてさ。恋とか友情までもが新春セールみたいに安売りされる。みんな上辺だけ満たされたふりして本当はみんな深い所に沈んでるんだろ?そう言ってくれたら少しは心も軽くなるのかな。
僕らみんな誰かの真似をしているだけなのにどこか特別になろうとする。そんなことしても意味ないのは分かってるけど生きる意味とか考えたりしてさ。花は毎年綺麗に咲くけれど僕らは年々濁っていくみたいにうまく生きられなくなっていく。少し違うだけで変わってるねって一言でまとめたりして。
みんなして幸せになろうと強制してくる春。行動しないと置いていかれるような春。暗さを許さない春。変化を求めて新しさを求めて上辺だけで狂ったように騒ぐ春。こんなことなら暗さを許してくれる冬のままでよかった。震えながら寄り添ってた冬のままでよかった。缶コーヒーで温もりを感じていた冬のままでよかった。
やっぱり春は嫌いだ。春なんて嫌いだ。
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