死ぬことすら出来ない辛さ 29 〜吸引
5月も半ばに差し掛かる。
夫は5月中は在宅勤務と言っていたのに会社に行くようになってしまった。
朝7時過ぎに家を出てコンビニでコーヒーを買ってから行くらしい。
朝のコンビニコーヒーが至福なんだとか。
私よりコーヒーを優先するなんて信じられない。
訪問看護が来る8時まで一人。何かあったらどうするのよ。
最近は痰や唾液が増えてきている。
持続吸引機を使って唾液を吸い続けている。
痰が絡んでも上手く出せないし、少し粘ついた物だとチューブが詰まってしまうから困ったものだ。
吸引圧を高くすれば痰が詰まりにくくはなるけど、今度は口の中に潰瘍ができやすくなる。
口の中のチューブが組織を刺激してしまうので圧を高くしすぎることは出来ない。
つまり、詰まったら詰まったままになる。
つまり、詰まり・・・
・・・なによ。
8時に訪問看護が来た。
「 吸引して 」
吸引機はベッドの横にあるからすぐに使える。
手袋を装着し、アルコール綿を取り、吸引チューブを吸引機のルートに接続して吸引する。
「 あ、指に酸素のつけて 」
『 サチュレーションですね。はい 』
吸引によりサチュレーションの数値が下がることがあったり、痰が取れたら数値が上がるから見ながらやってもらう。
「 最初から奥には入れないで、手前から吸って 」
病院ではいきなり喉の奥に入れられて苦しい思いをしたから先に言っておく。更に。好き勝手にやられるのは嫌だから指示を出す。
「 下になっているほっぺた 」
「 喉の手前 」
「 舌の下 」
「 またほっぺた 」
「 どう?痰取れた? 」
『 喉の奥に入れないと取れませんよ 』
「 喉の奥は苦しくなるからダメ 」
全く、何で看護師はすぐ奥に入れたがるのかしら。
『 奥に入れないなら持続吸引でいいように思いますが? 』
「 それだと粘っこいのとかは詰まっちゃうのよ。だから吸引してほしいの 」
吸引が面倒だからそうやって言うのよね。
持続なら何もやらなくて良いから楽だものね。
『 サチュレーション96から98になりましたよ 』
「 それじゃあもう終わりでいいわ 」
「 寝る前にまた吸引してね 」
最近は点滴の最中に寝ている。
話すことがないから静かにしていた時間が大切な睡眠時間に変わった。
別に気を許した訳ではないけど不思議なものね。
誰かが居ると気を使うけど、居ると安心している自分がいる。
そんな訳ないか。
痰が増えてきたから夜は余計に熟睡出来なくて疲れているだけよね。
朝寝から始まったって良いじゃない。
だって、私だもの。
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