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大罪詩篇

7
七つの大罪をモチーフにした詩篇です。
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記事一覧

【詩】嫉妬(大罪詩篇⑦)

【詩】嫉妬(大罪詩篇⑦)

俺は奴より汚くは無い
俺は奴より馬鹿では無い

俺は奴より軽薄では無い
俺は奴より無神経では無い

俺は奴より不誠実では無い
俺は奴より不真面目では無い

俺は何かを見落としているのか
俺には分からない醜さがあるのか

朝日の後に夕日がやってきて
朝日の美しさを全て簒奪する

俺に理解させて欲しい
奴に対しそうである以前に

俺に優しさを期待して欲しい
奴に向ける視線の柔らかさ以前に

依然俺が前

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【詩】暴食(大罪詩篇⑥)

【詩】暴食(大罪詩篇⑥)

飢えを耐え忍び
砲火をくぐり抜け
精神科の隔離病棟で
バナナフィッシュに
うってつけの日を読み
それなりのPTSDを
患ったこともあったが
文学サロンの会食で1度
ステーキを品評したのが間違いで
やがて自分の食ったものが
美味いか不味いかそれだけしか
判別できない老兵と成り果てた
生き抜いたということは
命を食い尽くしたということだ
軽く見積もったということだ
いつか全てを返済しなければ
命を命と

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【詩】傲慢(大罪詩篇⑤)

【詩】傲慢(大罪詩篇⑤)

とある国家の話
社会に弓引く教育を
国家の正義は洗脳と呼び
社会に組み込む洗脳を
国家の正義は教育と呼んだ
社会の維持それ自体が
国家の正義の主な職務で
それは所謂傲慢の悪魔の
為せる技と同じく
正義とは
主体の言語で記された
禁書であり
人であり社会であり
正義であり悪魔である
たったそれだけの
ちょっとした魔界の真理
それを理解する子等が
地獄や煉獄に魅了され
やがて成熟し誰もかれも
例外無く

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【詩】色欲(大罪詩篇④)

【詩】色欲(大罪詩篇④)

わぁぁーーむ わぁぁーーむ
真っ黒な雲が唸っている
街路樹が風に吹き晒される
道路に面して6機並列された
室外機たちがフル回転している
走るバスの最後部の私の隣席に
若い女が蹲って眠りこけている
先の停留所で乗り込んできたのだ
とてつもなく美しい女だ
この上なく無防備な女だ
私は身を乗り出し女に
覆いかぶさって髪に触れ
彼女の唇をぬめりと……
女が目を覚ます
「今、何をしようとしたの?」
とてつも

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【詩】強欲(大罪詩篇③)

【詩】強欲(大罪詩篇③)

強欲の
チキンレースは一生涯

【甲】
茹で卵、ゴーヤチャンプルー、焼肉、美味し
【乙】
風呂上がり、女のシャンプー、肉焼、香し
【丙】
おっぱい、キューティクル、膣、肉棒、快感し
【丁】
風鈴、アマデウスモーツァルト、肉焼、良音し
【戊】
夏の雷光、流線Beautiful、腿肉撓む、眼福し

5種だけの
感覚器官拗らせて
何年飽きず過ごせるだろう

【詩】怠惰(大罪詩篇②)

【詩】怠惰(大罪詩篇②)

虎の佇まいは美しかった
女神スクルドの助力を得て
纏う紋様を織り込んだのだ
自らの死期を意識しながら

【選者:甲】
虎の作品は完璧な構成だ
美しい調律に満ちていて
大賞受賞に相応しい

【選者:乙】
虎の作品は構成に過ぎる
衝動より技巧が勝ち過ぎて
大賞受賞に相応しく無い

評論や賞レースには嫌気がさした
臆病な自尊心もしくは尊大な羞恥心
怠惰と言いたいならそう言えば良い
厭世的帰結として虎の創

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【詩】憤怒(大罪詩篇①)

【詩】憤怒(大罪詩篇①)

【甲】
真面目で優しく
繊細で傷つき易く
純粋な感受性

【乙】
利己的で鈍感で
思慮浅く図太く
単純な思考性

甲が不幸であると
知らない者は乙だ
甲を魅力的だと
感じる者も乙だ

甲は不幸であると
知っている者は甲だ
乙に苛立ちや憤りを
感じる者も甲だ

わたしと恋人は
社会を憎んでいる
縁のない人たちは
社会に適応している

本物の恋人たちは
社会を焼き尽くしたい
縁のない人たちはそれを

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