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何かがおかしい

2020年がもう終わろうとしている頃、僕の身体はとにかく重かった。重かったというのは体重の話ではない(帰省する度に少し痩せたんじゃない?と心配されるくらいに痩せている)。何をするにも身体が思ったように動かない。夜もなかなか眠れず、脳も正常に働いていないように感じた。

その頃は嵐山にあるホテルの仕事が大詰めを迎えており、体力的にも精神的にも限界だった。

正月休みを終えても尚、身体の重さ(特に首から肩甲骨にかけての凝り)が酷く、思考と身体の動きが伴っていない。

仕事のミスも増えて、作業効率も上がらず怒られてばかりいた気がする。何も上手くいかない。休日も何もやる気は起きず、家に籠ることが増えていった。映画すら観る気が起きず、お酒もビール一本飲んだだけで気分が悪くなっていた。何かがおかしい。

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2021年3月、平日の午後7時過ぎまだ仕事は終わる気配はない。徐々に呼吸が苦しくなり、動悸がする。長距離走を走った後のように息切れし、立っていられない。朦朧とする意識の中、作業台をつたってなんとか休憩用のスツールにたどり着く。呼吸が上手くできなくて苦しい。

このとき人生で初めて過呼吸というものを経験した。

とにかく呼吸を落ち着かせなければとするが、上手く息が吐き出せず、かえって苦しくなり焦る。

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どれくらいの時間が経っただろうか。

息苦しさを必死に耐え少しずつ深く呼吸ができるようになる。酸欠なのか手足が痺れ水筒すら持てない。心身ともに限界を迎えた瞬間だった。これまで溜まりにたまったものが一気に溢れ出したようだった。

2021年4月2日、生まれて初めて心療内科を受診した。

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診断結果は過労とストレスによる自律神経の不調だった。この診断に特に病名みたいなものはない。医者言わくこの身体の重さと過呼吸は今の仕事でのストレスも大きい要因ではあるが、あくまでも要因の一つであって引き金にはなったかもしれないが、これまでの積み重なってきたものが原因という事だった。

思い返してみると大学4年次からだいぶ無理をしてきたように思う。卒制に追われ就活に疲弊し、バイトに体力と時間を奪われていた。早朝の5時大学からの帰り道、駐車場に猫がいると思って近づいたら駐車番号の6番だった。

デザイン事務所に勤め始めてからも22時〜23時帰りは当たり前だったし、高山に行ってからも毎日とにかく必死だった。

言わずもがな京都に来てからも常に失敗できないという緊張下の中、薄給でストレスを感じながら働いている。

当然の結果だと思った。逆によくぞここまで持ち堪えてくれたとも思う。

そして、ジアゼパムという薬が処方された。

この薬を飲み始めてまず夜眠れるようになった。肩凝りも劇的に改善された。それでもこの薬を飲めば完全に症状が治まるという訳でもなく、薬を飲んでも駄目な日は駄目だった。症状にも波があるようで長期的に付き合っていく必要があるようだった。

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今はフレックスタイムのような状態で働いている。夜眠れるようになった分、朝身体が動かなくなることが多くなったからだ。

そして、休みも増やした。

これまでは日曜日と祝日が基本的な休みだったが、隔週土曜休みから始め7月からは完全週休2日にした。正直なところ今まで働いていた土曜日分の給料が減るのでかなり生活は苦しいし、加えて受診料と薬代がかかるが、自由な時間が増えた分、個人制作と個人で受けた仕事を進められると割り切っている。

自由に工房を使わせてもらえるのはありがたいが、最近はここまで給料が安いと仕事をするのが馬鹿馬鹿しく感じることが多い。早く個人としての安定した収益をあげられるようになりたい。

今年の目標は「整える」だったが、まさか強制的に心身を整えなければならなくなる状況になるとは思いもしなかった。

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工房準備中 @craftsmans_harbor
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