【写真】DIC川村記念美術館 ①屋外作品,雨上がりの庭園
都内では曇り空、時折雨の日。現地の天気は知らなかったけれど「雨の美術館と庭園も、いいかもしれない」と思い、千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館に向かった。再訪だ。
電車で進むほどに天気は回復し、陽射しが痛いくらいの青空に。
以前にも書いたけれど、DIC、旧社名「大日本インキ」といえば、出版まわりで働く人にはおなじみだ。個人的には、DICの小さな色見本を校正紙に貼って印刷所にゲラを戻す作業、は懐かしい。
美術館までは、最寄りの「京成佐倉」、「JR佐倉」駅から無料バスが出ている。上に引用した説明のとおり、同社総合研究所の敷地内にあり、無料バスも社員の方の通勤の足でもあるようなので(つまり、駅からかなりの距離がある)、社内見学に伺う気分になる。
後述していくが、広大な敷地には研修施設?を思わせる雰囲気もある。ともかく、一般公開してもらえるのは、とてもありがたい。
30分ほど乗車して、美術館前へ。
飯田善國「動くコスモス」(1968年)
来訪者が最初に鑑賞することになるのが、ロータリーに設置された、飯田善國「動くコスモス」(1968年、ステンレススチール265.0 × 170.0 × 170.0)だ。
じっと立ち止まり、また、場所を変えて眺めると、この静かな作品は、ダイナミックな動きを伴っていることに気が付く。空を映り込ませながら、静かに回転していく。まるで、世界を取り込んでいるかのようだ。
そして、ついこの前で長い時間を過ごしてしまうことになる。
ちなみに夕刻には暮れなずむ世界が映り込み、それもまた美しい。
作品の表面にこれだけクリアに景色が映り込むということは、それだけメンテナンスをきちんと行っているということだろう。
旅のなかで、打ち捨てられたような状態の屋外アート作品が侘び錆びていくさま(※あえて放置し侘び錆びを狙った作品もあるけれど、おそらく不本意にも)、に遭遇している。それに対して、きちんとした状態が保たれ、管理する人の愛が感じられる作品もある。
本作は後者だと伝わってくる。
ロータリーから散策路へ
チケットセンターで開催中の企画展、ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室 のチケットを購入。
散策路を進み、美術館へと向かう。
まず見えてくる建物は、小さなギャラリーだ。
展示は行われておらず、休憩室として開放されていた。
研修施設っぽい雰囲気。冷房が効いていて救われる。どこに行っても人混みに遭遇する昨今、がらんとした部屋そのものが、気分を落ち着かせる。
窓からは、これから行く池の周辺が望める。
休憩室を出て、散策路を進む。目の前には大きな池。
そこから振り返ると、休憩室のある建物はこんな感じだ。
ジョエル・シャピロ「無題」(1988-89年)
池。
その岸辺の芝生に佇むのが、ジョエル・シャピロ「無題」(1988-89年、ブロンズ 330.0 × 180.0 × 210.0)。
本作は屋外作品らしい大きなものだし、そこからは二者の関係性を(わたしは)感じるところだが、もっと小さなタイプで、かつ単体の「無題」(2013年)とは、直島でも出逢っている。
こんなふうに、「前にも逢ったね!」という作者、作品が増えていくのは嬉しいことだ。
フランク・ステラ「リュネヴィル」(1994年)
美術館の隣に設置されており、入館しようと通り過ぎようとする足を止めて、長い間、あちこちから鑑賞したくなるのが、この作品だ。
ミニマル・アートの先駆者とも呼ばれる、米国のアーティスト、フランク・ステラの「リュネヴィル」(1994年、ステンレススチール、アルミナブロンズ 717.0 × 640.0 × 609.0)。
1991年、97年には企画展も開かれていたようだ。
清水九兵衞「朱甲面」(1990年)
いよいよ入館しようとすると、今度は向かって左側の赤い立体作品が気になってくるだろう。
清水九兵衞「朱甲面」(1990年、鋳造アルミニウム、ステンレススチール、コンクリート、アクリル 330.0 × 250.0 × 160.0)。
もう少し大きめの本作は、東京都庁の「第一本庁舎1階外 中央公園側歩道脇」に展示されており、その近くの高層ビルには模型展示もあるため、自分にはおなじみではある。(甲殻類っぽい、昆虫っぽい形と質感は、あまり得意ではないのだが…)。
ただ、作家が陶芸家から彫刻家になり、このような大作を創り上げていくことを知ると、興味が湧いてくる。昨年が生誕100年だったようだ。
ただ美しい、池と庭園の風景
入館しようとして、またふと振り向けば、ただ美しい風景が目を捉える。
アートの世界にたっぷりと浸り、さあ帰ろうと現実に戻るとき、この風景が再び迎え入れてくれる。
建築と企画展、常設展については次回
美術館の「外」を語るだけで、でだいぶ長くなってきた。
建築と企画展、そして、今回再訪した目的でもある「ロスコ・ルーム」については、次回述べていこうと思う。
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