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行き場を失う視線の先 -佐藤誠高[Reality -Dancing on the Edge-]@銀座 蔦屋書店

 佐藤誠高個展「Reality -Dancing on the Edge-」@銀座 蔦屋書店(-2/14)

 まるで目隠しのように、顔を覆われた人の顔。

 モノクロ写真への加工? とも思えるが、

 近寄って観ると、写真でなく、手法を変えて描いているようだ。

佐藤誠高は、実在の人物や花などをモチーフとし、写真と見間違えるほど精密な鉛筆画に、大胆な絵具使いで抽象的なペインティングを施す作風で近年多くのアートコレクターから注目を集める一人です。一般的に人々がもっとも美しいと感じる“目”や“花弁”などの部位を絵具で覆い隠すことで、モチーフ自体がもつ本来の美しさを表現しています。2021年秋にSCÈNEにて開催した個展「Dancing on the Edge」のステイトメントでは、このように語っています。
「リアルとは、例えば表面的な美しさに表れるものではなく、そのうちに潜む狂気と社会性、本能と優しさなど、様々なものごとの狭間で保たれている危うい均衡の上にこそ見えるものである。」
この個展から約2年の時を経て、リアリティへの飽くなき追究を重ねてきた佐藤が、現時点での集大成として作品集および個展タイトルに選んだフレーズが「Reality -Dancing on the Edge-」です。本展では、より研ぎ澄まされた佐藤の感性が生み出した立体作品を含む新作の数々を展示します。さらに本展開催に合わせ、エディション作品の付属する特別限定版作品集を発表します。佐藤誠高が描く作品世界を、展覧会、作品集の両面からご堪能ください。

【展覧会】佐藤誠高個展「Reality -Dancing on the Edge-」 より

視線の行き場

 脳はエネルギー消費が非常に大きいため、できるだけ負担を減らそうとするという。

 自分の場合に照らしてみれば、たしかに日常生活のなかで、人の顔を見るときは目を見る。そのほかのディテールは、よほど注意を惹くものがない限り、服装などの記憶もおぼろげだ。

 だから、こうして目を隠されてしまうと、視線の行き場は、普段はあまり注意を向けないほかのパーツに向く。そして、奇妙な感覚が訪れる。

 花にしても然り。


立体感の秘密は

 鑑賞していて同時に気になってくるのが、作品から感じる立体感だ。

 人物の目、花の花弁を覆う勢いの良い筆致の絵の具にしても、そこだけ飛び出しているような、覆う存在は覆う存在なりの力を放つ。

 それについては解説があった。

彫刻家を夢見て美術の道に進んだ佐藤は、常に粘土でイメージをつくり上げる感覚で絵画を描いています。ペインターとしての自分が描く形を、彫刻家としての自分が「実在するもの」として創作したのが、今回の出展作品《Woman's Head 1》です。絵画的人物イメージを立体作品に昇華させた自身初の試みです。

同上

作家のステートメント

[アーティストステートメント]

人は見たいと思う現実しか見ていない。 それは見ないようにしているところにある事実を置き去りにし、空想の世界に浸ることになります。 複雑に絡み合う現実を偏った視点からだけでなく多面的、重層的に見ることで事実が明らかとなります 。

もともと「実在感」への憧れから彫刻家になりたいと思い美術の道へ進んだ影響で、常に塑造をする感覚で絵を描いています。絵を描くときは塑造をするように、塑造をするときは絵を描くようにと、互いの感覚を分け隔てなく行き来させています。

人物を描くときにイメージしているものを実在する形として表現することは今回が初となります。
本展覧会のタイトルである「Reality- Dancing on the Edge-」は、私が追い求める表現を端的に表している言葉です。一つの空間に異なる形式の作品が並ぶことで、私の見ている世界をより強く伝えることができると思います。

佐藤誠高

同上




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