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名津乃 綾【季節】

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季節を感じて書いた作品を 集めております 春夏秋冬…。
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2021年2月の記事一覧

結び目

結び目

今年の初めに作った結び目が
ほどけぬようにと過ごした冬
切ろうと思えば簡単で
ほどこうと思えばとても簡単で

でも
その一歩手前で
やはりそれが出来ずに
やはり 切りたくなくて
ほどきたくなくて
気づけば 冷たい強風の中
しっかりと結び直しておりました

明日からは もう3月
また新たな季節が始まるのですね

最初は少し緩かった結び目も

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移りゆく季節

移りゆく季節

春一番の風に
早くもはらはらと舞い散る梅の花弁
日暮れの空には
orange色の雲がふんわり浮かぶ
ひと月程前のこの時間には
既に陽は沈み
暗い道を街灯が照らしていた
確実に季節は移ろい時が流れていく
如月とは思えぬ温かさに
重ね着してきた服の下で 汗ばむ肌

来週はもう
弥生3月…

家路にて…

家路にて…

葉の無い木々の間から
差し込む茜の夕陽が
ゆっくりと光を弱め
空は群青色へと変化して
一番星が輝き 暗く寒い夜がやって来る
時折吹く寒風が肌を冷やし
息は白く夜気に溶け
疲労と眠気が身体を包む

家路を急ぎながら
思わずついた大きなため息は

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牡丹

牡丹

幾重にも重ねた
花弁で心の奥底を
隠しているから
美しいのでしょうか…赤い冬牡丹

色香漂うその花は
重厚な存在感で人々を魅了するのです
わたくしも
そのような花になりたかった
幾重にも色艶やかな花弁をまとい

暗い心の奥底は隠し誰にも見せずに
ただ鮮やかに優雅に咲くのです

そして

もし誰かに振り向かれたなら
そっと囁きましょう

春は

もう近いのよ… と

梅が咲き…

梅が咲き…

如月とは思えぬ暖かさに
マフラーを外しコートの襟元を少し開け
住宅街を歩くと
家々の軒先から梅の木が覗いていて
ついこの間まで蕾だった花が
水色の空の下
白、ピンク、紅と
ちらほら咲いており
その優しい色は静かに冬を彩りながら
寒い季節が間もなく終わる事を
教えてくれています
まだ時折吹く寒風にも耐え
しとやかに咲く梅の花の愛らしさ

聞こてくるのは日に日に近づく
明るく柔

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読みかけの…

読みかけの…

縁があって出会っても
縁なんて簡単に切れる物だと知った
夢見る頃を過ぎた日に…

それなのに
眠れぬ長い冬の夜に
忘れたはずの

いえ…

忘れようとしていたはずの声が

聞こえた気がしたから

読みかけのままの本を置いて
走るように外へ出た

氷雨降る冷たく寒い暗闇には
誰もおらずに
風に揺れる木がざわざわと音を立てているだけで

空からは

静寂の中

青い三日月が笑うように

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