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ママたちを悩ます「子どもとゲームの問題」

「遊び」を中心とした子育てをしていく中で、避けては通れないのが「ゲーム(ゲーム機)」の問題。私がファシリテーターをしている「親学習」という子育て支援講座でも、「子どもとゲームについて話し合いたい」という要望はとても多い。

ゲームにまつわるママたちの悩み

まず、最初に親御さんが何に悩んでいるのかについて整理してみる。子育て講座で、よく話題に出るのは以下のような悩み。

・何歳から与えてもいい?

・使用時間などのルールはどうやって決める?

・子どもがルールを守らなくて困る

・ゲーム機の管理(紛失など)

・ゲーム依存について

・ネットに繋がることへの不安

親御さんたちが気になっていることをざっくり分けると、使用時間や方法などの「ルール」についての悩みと、もう一つはネットに繋がることによるトラブルへの懸念。ネットに繋がることについては、次回の「スマホ」についての記事で詳しく書こうと思うので、今回は「ゲーム」の使い方について考えみる。

親たちの間にも温度差アリ

親御さんたちの間でも、ゲームに対する考え方は人それぞれ。私のように「ゲームはなるべくならやらせたくない」という強硬派はどちらかというと少数で、「ある程度ゲームで遊ばせるのは良いけれど、やりすぎはよくない」という温和派が最も多い。もちろん中には親がゲーム好きで、「子どもにもどんどんやらせる」という推進派もいる。

子どものいる家庭の約9割はゲーム機を持っており、ゲーム機がなくてもスマホでゲームをしているというお子さんも多い。ゲームは子どもにとって欠かせない遊びの一つである。

しかし、ウチがかつてそうだったように、約1割の家庭にはゲーム機がない。もちろん経済的に買う余裕がないという場合もあるだろうが、「あえて買い与えていない」という家庭も一定数いることがわかる。

「ゲームは良くないもの」というモヤモヤした不安

ゲーム機のある家庭、ゲーム機のない家庭、それぞれに悩みは異なるだろうが、色々話を聞いているとどちらも共通して「ゲームは子どもにとって悪いものなのでは」という不安を根底に抱えているように思う。

「ゲーム機は子どもにとって悪い」という説は、実は私自身もかつて抱いていたもの。なぜそう思っていたのかと聞かれれば、以下のように答えたと思う。

1.そもそも、心身の発達が未熟な幼児などには、ゲーム機は刺激が強すぎる。

2.ゲーム機は刺激が強く、子どもを引きつけるので、外遊びや、ウチでの創作遊びの時間を奪ってしまう。

3.感覚として、幼い子がゲーム機に没頭しているのを見ると、「良くないのでは」と感じてしまう。

4.目が悪くなるのではという心配

1.に関しては、新聞やネットなどで散見される「ゲームが子どもの脳に与える悪影響」といった情報から。例えば、ネットを検索するとこんな情報が目に入る↓

「テレビゲームの利用時間が長いほど、子どもの攻撃性が高まる」「使用量が多いほど向社会的行動が抑制される」「テレビゲームに長く接している子どもほど自己肯定感が低い」:(「メディアと子どもの発達」帝京科学大学 子ども学部児童教育学科)

正直に言うと、私の場合3の「幼い子どもにとってゲームが良くないのでは」という母親としての直感が最優先されていて、その裏付けとして上に挙げたようなネットや新聞での記事を利用していたように思う。

しかし、リサーチャーとしての仕事もしていた立場から言うと、これだけでは実はリサーチ不十分。調べれば、ゲームは子どもの発達にとって良い影響を与える、という研究や調査もちゃんとある。

1時間以内なら良い影響を与えるとの研究結果

ゲームを良くする子ども学業成績が高く社会性もあるとの調査↓

で、「結局ゲームは良いのか悪いのかどっちやねん」ということになるのだが、話はそんなに単純ではない。研究や調査が捏造でなければ「悪い影響」「よい影響」どちらもあるというのが正しいのだろう。

要は、これらを知った上で「ゲーム機」を使う遊びをどの程度取り入れるかを、各家庭で判断するしかないのだ。

ウチの子どもたちの場合を検証

子どもたちにとって「遊びが大切」と思っていた私は、子どもが小さい頃は「ゲーム機」による遊びよりもその他の遊びを優先したいと思い、ゲーム機を買い与えなかった。

ゲーム機を購入したのは長男小学校6年、次男小学校2年。もちろん、周りの子どもたちはゲーム機を持っている子ばかり。友達とゲームをすること自体は禁止していなかったので、子どもたちは友達のお家でゲームさせてもらっていた。そして、いつもそれが「とっても楽しかった」と私に報告していた。

よく「携帯ゲーム機を持っていないから仲間はずれにされる」と言う話を聞くが、実際長男も体験していた。私もそれは可愛そうだなあ、と一瞬心が揺らいだが、少し見守っていたら仲間はずれはそう長く続か無かった。というのも、実際には子どもたちはゲームだけでなく、外遊びやその他の遊びも色々とやっていたのだ。

あのまま仲間はずれが延々続いていたら、私もゲーム機を買い与えることになったのだろうか。ウチではそもそも「他人と同じであること」に重きを置く子育てはしていなかったので、おそらく「皆と同じにするために」ゲーム機は買わなかったと思う。

そんな感じでゲーム機のない生活は続いていたが、子どもたちの「ゲームをしたい」という気持ちはじわじわフツフツと水面下でくすぶっていたようだ。

ウチではゲーム機は買い与えていなかったが、パソコンは小さいうちから触らせていた。ある時、子どもたちはパソコンでもゲームができることに気づき、WEBのゲームを見つけてし始めた。「おお、その手があったか」と私も後から気づいたが、子どもたちが自分たちで「なんとかゲームをしたい」と考えてやったこと。私も「そこまでやりたいのなら」と時間は制限した上でWEBゲームを解禁することにした。

そして、ようやく長男6年生のときにWiiを買った。でもゲームソフトをどんどん買うわけでもなく、ゲームにのめり込む様子もなかった。あくまで、遊びの中の一つ。そうこうしているうちに、長男は高校に入って自らゲームを作るようになった。

今頃になって時々長男が「ゲーム機を買ってもらえなくて不満だった」と漏らすことがある。「私がもしゲーム機やソフトをどんどん買い与えていたら、きっとあなたはゲームを作る側に回ってなかったかも」と言うと、本人笑って否定しなかった。

ちなみに、次男は年齢差によって長男より早くゲーム機に接することになった。そして、彼の方がゲーム好きで、とても上手い。きっと、次男は囲碁という壮大な「ゲーム」を極めている人なので、「勝敗」や「作戦」などゲーム的な要素に興味や関心の強いタイプであることも影響しているように思う。現在は、PCでするゲームが大好きで、時間を制限された中ではあるが、存分にゲームを楽しんでいる。

結局、遠ざけようが禁じようが、子どもたちにとって、ゲームは魅力的なものであることは明らかだった。そして、高2、中1になった今は二人とも「適度にゲームをする子」に育っている。

ママ、実際にゲームをやってみてハマる

私がゲームを遠ざけようと、やっぱりゲームをしたい子どもたち。「そんなに魅力的なのか」と、ようやく私も重い腰をあげて、子どもたちがやっているゲームをやってみた。

その昔、ファミコンを買ってもらってゲームをしたことはある。でも、得意ではなかったし、のめり込むほど楽しいとはとても思えなかった。久々にコントローラーを触ったら、まずは画面との一体感にびっくりした。

自分が操作している「感覚」と画面内世界との距離が、昔より格段に近い。もちろん、映像もキレイで、音楽もカッコいい。私がやった「スプラトゥーン」というゲームは、見知らぬ誰かと一緒にチームを組んで対戦するが、オンライン上でも、互いに「ナイス!」と声を掛け合ったり、協力してプレイしたりと「他人と一緒にプレイする」楽しさが満ち溢れていた。

まあなんとも「よくできている」。私が見たのは数少ないゲームだが、作られている世界観、実際にプレイしているときの臨場感、映像、音楽すべての完成度が高く、エンターテイメントとして、とても優れたものだと認めざるを得ない。そりゃあ、優秀な大人が本気で創っているのだから当然といえば当然。

というわけで、私は「チーン」といとも簡単に素敵なゲームの世界に降参してしまったのだ。

実際にゲームをやってみてわかったこと

いとも簡単にゲームの魅力にハマってしまった私だが、実際にプレイをしてみて気づいたことがある。それはゲームの「中毒性」。

ゲームに中毒性があるのは、エンターテイメントとして優れているだけでなく、より実体験に近い「達成感」や「快感」を得ることができるから。もちろん実体験には勝てないが、「手軽さ」という面では、ゲームに軍配が上がる。

ちょっと時間が空くと、ついついやってしまう。そして、やり始めると集中するので、時間があっという間に過ぎる。時間のコントロールは子どもに完全に任せておくのは危険だなと実感した。

特に幼い子どもは、現実と非現実がしっかり区別できていなかったり、「時間の経過」の感覚が十分になかったりすることを考えると、ゲームを与える年齢については、親が慎重に考えなければならないと思う。

あと、ゲームの内容も気をつけないといけない。一口にゲームと言っても、シューティングゲームやアクションゲーム、RPGなど色々ある。そして、年齢制限がついているような、グロテスクな描写を含むゲームもある。こちらも当然、年齢に応じたものかどうか親がチェックする必要はあるだろう。

ゲームの良さを認めた上でのルール作り

ゲームをやらせたほうが子どもの社会性がアップしたり、勉強への集中力が上がったりする、という研究や調査があるが、これは「ゲーム機の使用」という直接的な影響というより、子どもが「やりたい」という気持ちを尊重されたことによって生まれた結果だと思う。

つまり、子どもたちがどうしても「やりたい」というのなら、時間などルールを子どもたちと一緒に決めた上で、親が気持ちよくやらせてあげたほうが子どもたちにとって良い影響を与えることになる。

そして、ルール作りは親子で一緒にやったほうが断然いい。「子どもがルールを守らない」という声も多いが、親が一方的に押し付けたルールは子どもに不満が残っていることがほとんんど。ルールづくりには話し合いが必要と考えると、やはりゲームを与えるのは小学校に入ってからの方が良いかなとも思う。

私の場合、かなり一方的にゲームを制限してしまっていたので、長男に不満が残ったのだと反省している。ゲームの魅力や、子どもたちが「ゲームをしたい」ということをもっとちゃんと認めてあげて、一緒にルール作りをすればよかったな。

ルールづくりのポイント

■子どもが「ゲームをやりたい」という気持ちは否定しない。

■親は子どもがどんなゲームをしているのか、ちゃんと関心を持つ(できればやってみるのもおすすめ)。

■子どもの希望と親としての判断(ゲームの内容や時間)をすり合わせて、納得できるルールを作る。

■子どもの年齢や状況が変わったら、適宜ルールを見直す。

ゲームはあくまで「遊びの一つ」

ゲームは必ずしも子どもたちに悪い影響ばかりではなく、良い影響を与える可能性もあることがわかった。それに、ゲームは人間の叡智が結集した素晴らしいエンターテイメント。そのことはまず、ちゃんと認めよう。実際、eスポーツが注目されるなど、ゲームの競技性は、他の競技に負けず劣らず認められている。

その上で、子どもの遊びがゲームだけに偏ってしまわないように、外遊びや創作活動、ボードゲームなどの遊びなど、「遊び」の幅が広がるような環境づくりも必要だと思う。

ウチの場合は、大人数でできるボードゲームやカードゲームを色々買い与えたので、友達が家に来たときは、ワイワイと楽しそうにやっていた。昔懐かしいアナログなゲームは子どもたちには新鮮だったようで、意外と子どもたちの食いつきが良かった。アナログなゲームがいいのは、ゲーム機で遊んでいるときより、コミュニケーションが活発になること。必要に応じてルールを変更したり、点数を付けて競ってみたり、子どもたちなりに色々と工夫をして楽しむ余地がたくさんある。

ゲームは「遊びの一つ」として、親も子も納得した上で、気持ちよくゲームをする時間を作る、というのが最良の方法なのでは、と私の反省も込めて提案したい。

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