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「デジタルでアナログを豊かに」子どもとスマホ(インターネット)の問題

子どもと遊びについて色々と書いてきたが、ゲームと並んで子どもの自由時間の中で大きな存在感を増しているのが、スマホを使う時間。「スマホ」と書いたが、実際に親御さんを悩ます原因となっているのが、スマホがインターネットという大海原に繋がっているということ(厳密に言うとゲーム機もネットに繋がるけど)。スマホの問題を考えるということは、子どもたちとインターネットの問題を考えるのとほぼイコールになる。

インターネットに対する感覚の違い

物心ついたときからネットが生活にある子どもたちを育てていて、一番感じるのがネットに関する感覚の違い。

大人になってからインターネットを知った私は、遠くの知らない人と繋がるネットに、未だに「得体の知れない怖さ」を感じることがある。また、私の友人でSNSなどをしないという人は、皆口を揃えて「不特定多数とつながること」に対して違和感や不安を感じると言う。

それが、今の子どもたちは物心ついたときにはネットがあり、日々会ったことのないユーチューバーが発信する色々な世界に触れている。今の子どもたちにとってネットはもはや空気のように存在しているのだ。

インターネットの怖さって?

私が感覚的に感じている「インターネットの怖さ」だけでなく、実際に子ども達が無防備にネットの世界に出ていくことで、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があることは事実。

・イタズラで自分が投稿した動画があっという間に拡散される。

・SNSを通じて知り合った人に騙されて犯罪に巻き込まれる。

・SNSの投稿が原因で内定取り消しにされる。

これらのトラブルに近いことは、ネットを介しない身近な社会でも起こりうることだけど、ネットが持つ「規模の大きさ」「即時性」「匿名性」といった特性によって、事が大きくなるという怖さは知っておくことが必要だ。

実際、子どものスマホ使用やネット利用については、学校や家庭で子どもに使い方やルールについて話す機会もかなり増えていると思う。

子どもにスマホを与えるにあたって、最初はフィルタリングをする、使用時間や場所を決めるなど年齢に応じて使い方を広げていく、ということは必須だろう。

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「ネットの怖さ」<「ネットの面白さ」

ウチではスマホを使う前にパソコンやiPadを触らせていたので、最初は閲覧できるページに制限を掛けたり、使用時間を制限していたりした。

しかし、実際にルールを作っても、「どうしても見たいページだから制限を外して」とか「使用時間を延ばして」という交渉が頻繁に行われ、時には親子でぶつかること多々もあった。

子育て講座などでもよく耳にするのが「子どもたちがルールを守らない」という声。守らないと罰則を設けている家庭もあるようだが、またすぐ破るので困っているとのこと。

子どもがルールを変えてくれと主張したり、ルールを破ったりするのは、何故だろう?私が子どもたちとのやり取りの中で感じたのは、子どもたちにとって、外の世界と繋がるネットはとてつもない魅力を持っているのだろうなということ。

もちろん、大人だってそう。ネットがあるおかげで、海外の友達ともリアルタイムで繋がれるし、家にいながら必要な情報を簡単に入手することができる。子どもたちは、本能的にインターネットの素晴らしさをわかっていて、それを欲しているのだ。

実際、ウチではスマホを与えていなかったせいでLINEができなかったのだが、長男は「友達とLINEで繋がりたい」一心で、パソコン上に仮想のAndroidを立ててLINEを動かすという手段に出た。それを見た時、「そこまでしてやりたいのか」と、子どもの純粋な欲求に敵わないなと降参したのを覚えている。

ウチでもネットトラブルなどについて、危険性は十々伝えていた。親としては、色々制限をかけることで、危険から守っている感覚があったが、ネットを賢く使えるようになるためには、やはり年齢に応じてどんどん使わせていった方が良いのでは、という風に考えるようになった。

結局は、やりながら覚えていく

スマホやネットの怖さを教えることは大切だけれど、ネットに繋がることで出来ることは日進月歩。それを親が完全に把握しているかといえば実際は難しい。

先日も、親がYouTubeへの投稿を必死にブロックしていたつもりが、子どもはTikTokに自宅で撮った動画をガンガン上げていたという話を聴いた。ウチでも、今や親がフィルタリングをかけようとしても、子どもの方が知識をつけて「なんなら解除できますけど?」的な状態になっている。

スマホでできること、ネットでできることはどんどん広がっている。使い方や危険性は、その都度「使いながら覚えていく」しかない。

「使いながら覚える」という観点で考えると、スマホを与えるのは親子でちゃんとコミュニケーションが取れるのなら、むしろある程度早くてもいいのかも。親の目の届くところで一緒に使い、その上で、困ったことがあれば一緒に解決していく。これからは、そういうスタンスで使い方を学んでいくという方が現実的だと思う。

賢く使えるようになるために必要なこと

実際にやりながら使い方を学んでいく上で大切なことは「情報が正しいかどうか判断する力」や「相手とちゃんとコミュニケーションを取る力」「トラブルが起きたときに誰かに相談する力」など。

これらは、学校や家庭、地域などのふだん子どもたちが生活している中で徐々に身につけていく「生きていく力」。スマホやネットの問題に限らず、ふだんから色々な問題が起きたときに、親子で考え話し合うことができていれば、ネットでのトラブルがあったとしても、ちゃんと解決していくことができるはずだ。

ウチでもLINEを使いだしてすぐに、「友達をふざけてグループから外したけど、どうしよう」というトラブルが起きた。LINE上では息子が外したということが、記録に残っている。「それが本意なの」と聞けばそうではないと言う。そこで、本人とどうしたら良いのかを考えて、直接会って謝って誤解を解くという結論に達した。使い方を間違うのは仕方ないこと。間違ったとき、トラブルが起きたとき、どうすればいいか親子で考え話し合うことができるような環境が必要だなと感じた。

実体験の場を奪われている子どもたち

子どもたちがインターネットの世界に引き込まれるのは、ネットが子どもたちの知的好奇心を満たす部分があるからだが、もう一つの理由として、子どもたちが様々な実体験の場所を奪われているという現実がある。子どもたちは、本当はもっと色々なことを実際に体験することを欲している。

なのに習い事や塾で、自由に遊ぶ時間がない。それに実際遊ぶとなると「道路で遊ぶな」「公園でボール遊び禁止」とあちこち禁止だらけ。社会や大人が子どもたちの遊びの時間や場所を大きく奪っていることを考えると、子ども達が画面の中にそれに近い何かを求めるのは必然とも言える。

ウチの例【釣りゲーム動画→実際の釣りへ】

ある時、次男がYouTubeで釣りゲームをしている人の動画を見て「釣りがしたい」と言い出した。

私は「いやいや、ゲームの釣りと実際の釣りとは全然違うよ」と思い、「生きた魚を触れるの?」と聞いてみた。というのも、次男は小さい頃から自然の中に連れて行っているわりに、虫も触れないような人だったので。

意外にも「触れる」と根拠のない自信で答えてきた。
ほほう、それならばと「魚を自分で掴んで竿から外すこと」「釣った魚は自分で捌いて食べる」という条件をクリアするなら釣りに行ってもいいよ、と提示すると、次男は「全部やる」という。

それではと、手始めに「南郷水産センター」というお魚のテーマパークのような所へ連れて行った。

次男は、とりあえず一番ハードルが低そうな「金魚釣り」を選び、結構な匂いのするエサを自分で付け、釣り糸を垂れた。しばらくすると、一匹の大きな金魚が釣れた。私が、「自分でやるんだよね?」という視線を投げかけると、次男は竿を上げて、金魚を掴み、悪戦苦闘しながらも丁寧に針から外した(金魚はキャッチ&リリースのルール)。

その時の次男の「ドヤ顔」は今でも忘れられない。動画で観ていた釣りが、現実の釣りと繋がった瞬間。

その後、次男はマス釣り、鮎の掴み取りと次々と魚を手中に収め、「楽しい」を連発して、自ら釣ったマスを美味しく食べた。

次男がちゃんと約束を果たしたので、その後、釣り道具を購入。本当の釣りデビューへと漕ぎ着けた。虫も触れない次男だったが、実際の釣りではエサとなる虫を掴んで針に付けたり、釣った魚もちゃんと捌いて料理した。

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本人が「やりたい」と自発的に言い出したことだが、きっかけはネットの動画。漫画→囲碁の流れと同じで、きっかけはなんだっていい。大切なのは本人がどれだけそのことに純粋に興味を持てるか。ネットから入った世界を現実に繋げる部分を親がサポートしてやれば子どもは自分でちゃんとやる。

それに、自分の知らない世界を知るきっかけとして、インターネットは本やテレビよりはるかに情報量が多い。子どもの知的好奇心の幅を広げるという意味では、インターネットを利用しない手はないなと思う。

デジタルでアナログを豊かに

今回の次男の例だと、動画見て行きたいと言い出したとき、そこからさっと現実の世界に持っていったので、スムーズにリアルな釣りに入っていけた。

もし、「どうせ、ホントの魚は触れないでしょ」と本当の釣りに繋げていかなければ、おそらく次男は釣り動画をもっと見たり、釣りゲームにハマったりという形で、釣りへの興味を満たして行ったかもしれない。現実の釣りにには勝てないかもしれないけど、それなりにネットやゲームの世界でも釣りは楽しめる時代。

それでもやっはり、可能な限り子ども達には本物を体験させてあげたい。そして、本物の釣りをより楽しく充実させる上でネットを使わない手はない。実際、「釣りの道具の選び方」「仕掛けの作り方」「おすすめの釣り場」などといった情報はネットからたくさん仕入れた。

私も夫もちゃんと釣りをしたことが無いのに釣りを楽しめるのは、ネットのおかけだとも言える。

子どもと達が未知の世界を知る入口として、さらには、現実の世界、体験をより良いものにするために、ネットは本当に便利だ。

身の回りにあるテクノロジーも同じ。基本は私達のリアルな生活や行動をもっと便利に楽しくするためにあるもの。

落合陽一さんが言っていたが「デジタルでアナログを豊かにする」。まさにそう。親としてはネットの怖さを教えるだけでなく、子どもと一緒にスマホやネットを使い、現実の生活や体験を豊かにしていけたら、と思っている。

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