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『カプチーノ・コースト』を読んで。

*ネタバレを含んでいます。

「群像」の2022年10月号に載っていた作品です。

どうやら、単行本も発売されているみたいです。

主人公の女性は会社を休職していて、ひょんなきっかけから海でゴミ拾いを始める。そこで感じるあれこれというような話です。

読んでいて、主人公が感じる「気まずさ」という部分に凄く共感しました。

「お仕事は何をしているのですか?」

ありふれた質問でも休職中の身にとってはマジョリティから外れているような感覚を感じたりします。

さらには、ゴミ拾いをしている場面でも、

「環境団体の方ですか?」とか、「そんなことをしていて何になるんですか?」

というような、特別な信念を持っている人じゃないとゴミ拾いをしてはいけない雰囲気や、何をするにしても目的を求めるような姿勢が結構刺さりました。

また、ゴミ拾いをしていると、ゴミ拾い仲間のような人たちと出くわすシーンがあります。その人たちと会話する中で互いの身分を触れない雰囲気がいいと思いました。あくまでもその場限りの関係性というのが割りきっていて好きでした。
途中で、主人公の友達の女性がゴミ拾いに参加するシーンがあります。その友達が主人公のゴミ拾い仲間に「お仕事は何をしているのですか?」と質問します。このシーンは読んでいて今まで触れていなかった場面にメスを入れられているようで胃が痛かったです。主人公のゴミ拾い仲間は会社員していますと答えますが、その時の主人公の気持ちがどこか自分と同じだったらと期待する場面も心情として理解できます。

そして、一番嫌な場面が休職中に会社の同僚と合う場面です。近からず遠からずの顔は知っているけれどもという人には確かにこういう場面では会いたくないです。相手は何の悪気がなく普通に話しているつもりなのに聞かれた側にとっては気まずい気持ちになる。さらには、同僚と合った場面はゴミ拾い中に同僚が海でバーベキューしていた所でした。バーベキューの終わりに同僚たちが主人公のしているゴミ拾いをしたいと言い出し、主人公は同僚にゴミ拾いを教えます。ゴミ拾いの終わりに、同僚がバーベキューのゴミを捨てようとゴミ箱を探しますが、海のゴミ専用のゴミ箱しかありませんでした。そこで海のゴミとバーベキューのゴミを一緒に捨てるという場面では、「いや~ダメでしょ…」と思いながら何も言えない場面も心にグッと来ました。
ゴミはゴミというのは確かにそうです。ゴミはゴミでも自分の中でのゴミごとの位置付けは違い、そこで価値観のすれ違いというようなものが起きたのかなって。何が良いか悪いかって難しいと思うと同時に、自分も他の人が思うような一線を飛び越えていることも多々あるんだろうなと思いました。

主にこの4つの部分に分かるな~と感じました。

タイトルのカプチーノ・コーストは1つの場面しか出てこない単語で、海から押し寄せくる泡のようなものという意味です。作中では、主人公はきれいなものとしていますが、ゴミ拾い仲間はきれいに見えるけれども、何が入っているか分からなく危ないものと考えています。正直、タイトルの意味としては分かりませんでしたが、一般的にきれいなものと見られているものでも実態を知ると全然きれいじゃないことを指しているのかもしれません。


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