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人生100年時代、シニア人材は競争力になり得るのか

 2020年、日本社会は高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)が28.7%と過去最高を更新し、世界第一位を維持し続けています。また2035年には約3人に1人が65歳以上になると言われています。
特に就業状況について見てみると、男性の場合60~64歳で79.1%、65~69歳で54.8%、女性の場合60~64歳で53.6%、65~69歳で34.4%と60歳を超えても多くの人が就業しています。仕事に対するパフォーマンスやモチベーションはマイナスの評価をされることが圧倒的に多いシニア人材ですが、実はむしろポジティブに評価できる点が少なくありません。今後日本の企業に求められるのはこうしたシニア人材の戦略的な活用であることは言うまでもないでしょう。

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■加齢による能力の変化
 人の知能を、言語理解・ワーキングメモリー(情報の一次的な記憶と処理を同時に行う能力)・知覚推理・処理速度の4つに分類した場合、言語理解とワーキングメモリーは加齢による影響を受けにくいことが研究で明らかになっています。つまりシニアは語彙力や説明力、思考力が高い傾向にある、ということです。もちろん個人差はありますが具体的には、職場における指導的な役割や、社内外に説明が求められる場面において能力を発揮しやすいということです。

■加齢によるモチベーションの変化
 まずモチベーションを「強さ」と「質」の2つの観点から見ていきます。

 仕事に対するモチベーションの指標として「ワークエンゲージメント」を使用します。ワークエンゲージメントとは、「活力」「熱心さ」「没頭」を特徴とした仕事に対する前向きな心の状態を指します。下のグラフはワークエンゲージメントについて年代別の推移を示したものです。

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(出典:Diamond Harvard Business Review, April 2019)

驚くべきことに、このグラフを見ると年齢が上がるにつれ仕事へのエンゲージメントは上昇する傾向にあることがわかります。実はシニアは若手や中年層よりもワークエンゲージメントが高い、という実態があるのです。

 「質」の変化として、30歳までの若年層では、個人の行動は「情報探索」や「知識獲得」に動機付けられる一方、30歳以降では「感情調整」に動機付けられると言われています。つまり、若いうちは新たな知識を得るために何をすべきかと考えますが、年齢が上がるにつれ感情を安定させるために何をすべきか考えるようになる、ということです。当然この変化は人脈形成にも影響を与えます。30歳というターニングポイントを過ぎると、自身の成長を促す新たな人脈を築くことよりも、慣れ親しんだ人たちとの継続的な交流を重視する、ということです。

■シニア人材はイノベーションを生み出す源泉になり得るか
 ここまで見てきたように、シニア人材にはポジティブな評価ができる点が少なくありません。シニアが持つ能力のうち、特に注目すべきは「専門性」と「応用力」です。長年の経験により蓄積された専門的な知識やスキル、その経験を新たな領域や分野に活かしていく力です。これらはイノベーションを生み出す際に重要な能力と言われています。シニアが持つこれらの能力を活かす形での仕事や役割の割り振りが不可欠でしょう。
例えば2018年1月世界最大の食品飲料会社のネスレの日本法人、ネスレ日本が「シニアスペシャリスト採用」を導入しました。これは他者で関連した経験を持つ60歳以上のシニアを契約社員として新規採用する、という制度です。これにより企業のダイバーシティの推進につながり、イノベーションを誘発する環境を作る狙いがあります。

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■若手・中堅も「将来のシニア」である
 当然1人の人間が同じ企業に長く勤めていれば、本人のモチベーションにも変化が表れてきます。前述の通り、早ければ30歳から質的な変化は始まります。自分に残された「チャンス」「時間」は限りがある、というようないわば「心の高齢化」を防ぐことが、企業にとってカギとなってくるでしょう。企業にできることとしては、単に定年延長という物理的な時間を延ばすことではなく、シニアになっても活躍できる場があることを社員に積極的に見せていくことです。

■内面のマネジメントの時代
 日本の少子高齢化はこの先かなり高い確率で続いていくと思われます。その中で企業にとってシニア人材の活用は喫緊の課題です。この課題に向き合うためには、いかにしてシニアが持つ経験と知識を活かす形でイノベーションを生み出せるか、またシニア以外の社員の心の高齢化を防いでいくことができるか、いわば内面のマネジメントがポイントです。

いま企業に求められているのは、シニア向けの雇用体制の変革だけでなく、人生100年時代に沿った1人1人の働き方に対する意識改革ではないでしょうか。

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