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ドイツのシュタイナー教員養成大学院について

私は現在Freie Hochschule Stuttgartという大学院のInternational Master Programに在籍中で、休学をしています。大学院期間中はとにかく忙しくて学びを発信をすることもなかったので、時間ができたことは幸せで、詰め込んだことをゆっくり振り返るいい機会だなと思っています。

卒業すると、世界中のシュタイナー学校で担任をする資格、または修了した科目の教科担任ができるという教員養成プログラムで、1年4ヶ月びっちりと予定の詰まった全日制のインテンシブなクラスです。

現在世界中にシュタイナー教員養成プログラムはあれど、英語で学べる全日制の修士コースは世界でここだけだと思います。(実はアメリカにもありますが、驚くほど高額で規模も小さいため、アメリカ人もドイツに学びに来ています。)

教室。いつもコの字型。授業は朝8時から週5日です。

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インターナショナルプログラムなので、全ての講義は英語で行われ、ドイツ語のレクチャーは英語に翻訳されます。英語の資格証明はB1以上、とのことだったのでTOEIC700、IELTS5.5程度と、英語の基準は他の大学院のように高くはないです。
英語を母語としている人は少なく、語学の習得が目的でもないので、「母国で担任として働く」「シュタイナー教育の理解を深める」ことを目標に、語学を壁と捉えず、みんなで学び合っています。先生たちも英語は流暢ですが、ネイティブではない方が多いです◎ 日本人だけでなく、世界のみんなの大半が、第二外国語としての英語で学んでいます。

また、コース修了後に母国で教職に就く人には、授業料が半額になる奨学金も用意されており、お金に関しても敷居は低いと思います。

私は第4期に在籍しており、クラスの人数は25人前後でした。
日本人は1人で、クラスメイトの出身国はインド4人、アメリカ4人、香港2人、タイ2人、中国、韓国、ネパール、フィリピン、イギリス、フランス、フィンランド、スウェーデン、ブラジル、チリ、エジプト、ウガンダ、ナイジェリアでした。

アジアから来ている人たちは私以外、「子どもをドイツのシュタイナー学校に入れたい」というシュタイナー母で、母国を離れ、この後もドイツに何年か住みたいという、教育に関心が強く経済的に豊かな人たちがほとんどでした。
(母の学生ビザがあれば、子どももドイツのシュタイナー学校に入学できる。)
お母さんクラスメイトは、自分の子どもを大学院の敷地内のシュタイナー学校に通わせていました。

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Thinking,Feeling,Willing どんな授業でも思考、感情、意思を育むためにどうバランスをとって授業を組み立てるかを考えていきます。

クラスメイトの年齢層は高く、一番若くて25歳、最年長は65歳。平均で40歳くらいのクラスでした。みんな母国の公教育に携わっていたり、キャンプヒル(共同体)での経験があったり、シュタイナー学校で担任をしたりしており、教員養成大学院というだけあり、全く人智学やシュタイナー教育に関して未知の状態で入学してくる人はいませんでした。

午前中は朝8時から12時50分までの3コマ、アントロポゾフィー(人智学)に基づき担任をするための授業、
午後はそれぞれの教科ごとに16時まで授業があります。

午前の授業は『Theosophy』(人智学)や『Foundation of Human Experience』(教育のための一般人間学概論)を読み、議論をしつつ理解を深めるところから毎朝始まります。一般人間学については1週間に1講、1年間じっくりかけて読み進めていきます。

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スカルプチャーの時間。授業で読み進めていた「一般人間学」の第2講と深く関わっていました。1つひとつの学びは、教科が違えどしっかりと続いており、アートの時間を通して本の内容の理解ができたことも感動でした。

シュタイナーの本は「読了」するだけだと理解できません。
とにかく読んだ上で、「話し合う」「ともに理解を進める」「理解したことを行動に移す」ことが重要とされており、本当に難しく、頭の痛い、面白い学びの時間です。
毎日みんなで頭がパンクしそうになりつつも、感動しながら学び合っていました。

2コマ目、3コマ目はメインレッスン(算数、文字、フォルメン線描、動物学や植物学など…)についての実践的な教え方の授業です。
また、4つの気質について、Child Observation(実際にシュタイナーの特別支援学校に子どもの観察に行きます)、シュタイナー学校のカリキュラム、呼吸やリズムを整える授業の組み立て方、メディアとの付き合い方や性教育、Creative Speech、ストーリーテリング、アートの鑑賞について等も深く学びます。
実際に身体を動かすオイリュトミー(身体芸術)やぬらし絵、彫刻や音楽、Clowning(道化師)の授業もあります。

午後の教科担任になるための授業は、外国語(英語・フランス語)、ガーデニング、手仕事、音楽、木工、体育の中から1つ選び、大学院期間を通して学んでいきます。教科担任制の授業は、インターナショナルコース以外のドイツ語で履修しているクラスの学生と同時に受講するため、外国語の授業以外はドイツ語で行われていました。
私は英語専科の授業を選択しており、「第二外国語としての英語」をリズムや身体感覚を使って1年生〜12年生までがどう学んでいくかを学んでいます。

シュタイナー学校の英語の授業では、小学1年生〜3年生までは文字を書くことはせず、ゲームや手遊び、歌や詩の朗読で英語を学んでいきます。もちろん教科書もノートもありません。(これがとても面白いので、また別記事に書きたいです)
4年生で「読み書き」が始まり、簡単な宿題が出ます。また、5年生になると文法を習い始め、小テストも行われるようになります。
子どもの発達段階を考えて構成されているシュタイナー学校独特のカリキュラムを21世紀の世の中でどう進めていくか、またその国に合った文化や背景と絡めてどう融合させるかなど考えられて、とても面白いです。


大学院期間中には、2回の教育実習が義務付けられています。
①ドイツのシュタイナー学校での実習(子どもの観察)、3週間〜
②英語圏または母国での実習(実際にクラス担任として実習)、8週間〜
が必要になっています。

個人的なことですが、私はイギリス2週間と日本で8週間、実習をしたかったのですが、COVID-19の影響でヨーロッパの学校では、2月あたりから実習受け入れができなくなり、早々に日本行きの飛行機はキャンセルになり、また全世界的な学校休校により、実習自体がそもそも無期延期(中止)となりました。
また、私は公教育の現場での経験はあれど、シュタイナー学校卒業生でもなく、実践的な経験は0で、今年Teacher Trainingを修了しMasterを取得したところで経験がない中、今後シュタイナーのフィールドで働く自信が無いと思いました。また、実習中に研究やインタビューしたことを元に論文を書きたいと思っているので、日本に帰国し、学びを続ける予定です。この大学院は学生一人ひとりの学びに対してフレキシブルなので、私は状況が落ち着くまで数年休学することとしました。

シュタイナー教育の学びは、人生かけての大きな学びになるなぁと楽しみです。


それぞれの国から、自分の国の公教育に疑問を持ち、「子どもたちにとって幸せな教育を学びたい!」と同じような目的の強い意志ではるばるドイツまで来ているパワフルな人たちと過ごす大学院生活は、それはそれは濃いものです。朝起きてから寝る直前まで教育について考え、本を読み、話し合い・・・文化の違いで面白さも感じつつ、「好きなことの勉強」だけをできる幸せを噛み締めていました。

またStuttgartに帰ってくるときには、違うクラスメイトと学ぶことになりますが、それもまたとても楽しみです。
・・・興味がある方、世界で一番歴史のあるシュタイナー学校で、一緒に学びませんか?

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ガーデニングの授業で作ったリース。材料は全て学校のガーデンから。

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