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ドイツの「入学準備クラス」シュタイナー学校の場合


ドイツの「入学準備クラス(BrückenKlasse:橋のクラス)」の紹介をします。
幼稚園は卒業したものの、小学1年生に入学するには少し課題のある子どもや、幼稚園年長を飛ばしてひと足先に学校で勉強したい子どものために、1年間入学準備ができるクラスが用意されています。教室は小学校の校舎の中にあり、学校カバンを背負って登校し、机に向かって勉強をします。

シュタイナー学校に限らず、ドイツの各市町村には、このような入学準備クラスを設置している公立小学校が、少なくても一箇所あります。

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南ドイツのとあるシュタイナー学校の「入学準備クラス(ブリュッケンクラッセ)」は定員12名でした。

この「入学準備クラス」を担当する教員は、地元の幼稚園を定期訪問して年長園児を観察し、ひとりひとりの園児が、小学校生活に耐えうる発達条を満たしているかどうかを見極めます。
簡単な筆記テストや園児との質疑応答で一人ひとりの発達具合を見極め、「このまま小学校に入学して大丈夫か」どうかを判断します。
その判断により、該当の保護者に入学準備クラスからスタートすることを勧めます。

ドイツには日本のような就学時検診があり、検診では小学1年になるのに相応しい能力があるかどうかを調べます。
ドイツ語で質疑応答が出来るか、数を数えられるか、語彙力があるか、簡単な指示に答えられるか、椅子に座って落ち着いていられるか、リズム感覚はどうか(じゃんけんやけんけんぱができるか)など、身体検査と簡単な能力検査が行われます。

そのような他者からの判断がなくても、そもそもドイツでは、小学校へ入学するタイミングは人によります。
日本と同様、幼稚園年長を終えた満6歳の子ども達が小学校へ入学するのが大抵の場合ですが、保護者が「準備クラス」への入学を選択する場合もあります。より安心して学ぶ権利として、開かれた選択肢のひとつです。

準備クラス(橋のクラス)とは

小学1年生になる前の1年間の準備のクラスなので、授業内容は1年生よりも簡単で、進度もゆっくり進み、宿題も少なく、授業時間も短くなっています。また、人数も少人数制であることがほとんどです。

多くの場合、準備クラスに通っているこども達は満6歳。そして小学校を入学する時には満7歳になっており、みんなよりも歳が1つ上です。
ただ、これは「子どもたちの実態や学びの環境に配慮した制度」という認識が広く行き渡っているので、準備クラスに通って1年入学が遅れようが、ネガティブなイメージはなく、親も子どもたちも気にしません。学校への入学を遅らせる=障がいがある、発達の遅れがあるわけではないのです。

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工作、編み物、ぬらし絵をする部屋。いつでも休めるようにソファやクッションもある。

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木で小さな椅子を手作り。工具も本物を使います。

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窓辺に可愛い小人さん。こレモ子どもたちの手作りです。真ん中には水晶。

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さすがボードゲーム大国ドイツ。コミュニケーション能力を高める遊びとしてボードゲームやカードゲームも置いてありました。

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ストローで編み物。課題が終わったら、黙々と編む時間があります。

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移民の多い国だからこそ言語に対してのサポートがあり、
また、いろいろな面での多様性に対して寛容なドイツ。
教育の違いのひとつを感じました。

シュタイナー学校の入学準備クラスでは、机に向かっての勉強よりも、「学校の生活時間」「学校という空間」に慣れるための作業をたくさん行なっている印象でした。

歌を歌い、詩を覚え、ぬらし絵や編み物をし、みんなでお茶を飲み、外遊びやガーデニング。採れたもので簡単な料理をしたり、工作をしたり。
幼稚園時代よりは「自立」を目指した、ある程度時間で区切られた、規則正しい繰り返しのある活動。

教育や子どもたちの学びに対する選択肢が多いこと、そしてそれが広く常識として認知されていること。ここにいて感じる生きやすさのひとつです。「みんなと同じ」よりも「個人」を優先できる社会であることで、安心して心の準備をして学校へ通える子どもも多いと、実際に在籍する子どもたちを見て感じました。

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