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1月23日、「お前はすでに死んでいる」

昨日はたまぁに話題に出す妹①の命日でした。

余命一年を宣告された少女は、毎年毎年余命を宣告されつつも、なんだかんだ今現在の成人年齢20歳を迎え、翌年の成人祝いの1月に亡くなりました。

赤ん坊の頃に首が座ることなく硬直していったこと、
何かを表現する術もなく眠り続け、しかしその心臓は絶えず動き続けていたこと、

それが
運命的なものを躱し生き延びたのか
或いは運命に抗えずに苦しんだのか
家族はおろか、本人にすら計り知れない事であります。

でも自信を持って言えることは、
「それでも、意味のある人生だった」ということです。

意味なく生きてる人間を私はまだ一度も見たことがない。みんな何かしらの意味があり生きています。

ただそこで寝てるだけの女の子から、たくさんの感情と無償の愛を知った。
私だからこそ断言できる事実です。

今年の命日は大きな法要に当たらないため、線香をあげて家族で夕飯を食べました。
思い出話に花を咲かせ、泣いたり笑ったりしました。

妹①がこっそり様子を見ていたとしたら、1人10回はビンタされるような妹①の恥ずかしエピソードも飛び出し、笑い過ぎて泣いてるような場面もありました。

妹②も社会人になり。全員が大人という状況で
ぶっちゃけ腹の探り合いをしている我が家ですが、
この日ばかりはみんな素直になれたのではないでしょうか。

ほら妹①よ
お前のおかげでみんな今日もアホみたいにハッピーだ。

ウチの両親はお酒が大好きで量も飲める人たちです。
そんな2人が気持ちよくお酒を飲んだせいで買い置きのお酒まで尽きてしまいました。

車で自宅に帰る下戸の私は素面でこのメンツに絡まれるのは辛いので、これでお開きとしたかったのですが、
父がコレクションのお酒を開けると言い出しました。

父はプレゼントに何をあげても喜ばないので誕生日やら何やらにはちょっといいお酒をプレゼントしていますが、そのお酒すら勿体ぶって開けないので、妹の仏壇には15本ほどお酒が箱のまま飾られています。
そのコレクションから一つ開けるというのは珍しい事でした。

だけどね、お父さん…

この酒はダメだわ。

「もう死んでる」じゃねーよ。命日なんよ。
現在絶賛冥福祈ってんだバカヤロー。

姉妹2人は数ある中で何故それをチョイスしたのかとツッコミ大笑い。母はあまりピンと来ておらず。
父は不貞腐れてしまいましたとさ。不貞腐れんなや。

妹①よ、今日もウチの家族はアホです。

↑帰り道コウモリを見ました。実は縁起のいい動物。
「幸運は空から降ってくる」の象徴。

夢を見ました。
妹①が生きてる頃の夢です。

夢の中ですら何の奇跡も起こらず、妹①は寝たきりの状態でした。
鼻から経鼻栄養の管が通り、頬にはその管が抜けないようテープで固定されています。首には酸素を送るための管があり、足元の機械まで伸びています。

その必要で、でも邪魔な医療器具をすり抜けて抱きしめました。
仰向けに横たわる妹は、長年の寝たきり生活で硬直しています。抱きしめ返してもくれません。

背中に手をまわすと
背骨がうまく伸び切らず、蛇ののたうつような奇形を起こしています。

痩せ細った人間は胸骨の下の部分、剣状突起が浮き出ています。そのボコッと突き出た胸の少し上に耳を当てると
トク……トク……
心臓が動いてる音がしました。


握り拳のまま硬直した手のひら。
匂いを嗅ぐと手垢の酸っぱい匂いがしました。
手だけじゃなくて全身から、生きてる人間の臭いがします。干した布団の匂いにも似ています。

四肢は乾燥しているのに、
顔だけは思春期特有の脂っぽさがあります。
そのほっぺにキスをすると角質のザラッとした質感。ぬるっとした皮脂が唇に付いてしまいました。
天ぷらを食べたかのような感じ。


それが何だか可笑しくて笑うと、
姉妹の中で1番大きくまつ毛の長い綺麗な目が、瞬きをして、それから左右対称の形のいい唇が微笑んでくれました。

笑い返してくれたことが嬉しくて泣きながら両親と妹②を呼ぶも誰も家にいません。
この時間が惜しくて探す気にもなれずもう一度抱きしめました。

トク…トク…と心臓の音がします。
鼓動の他にも血の巡る、ザーザーという音も聞こえました。私の好きな海の凪いだ波の音に似ています。

そして目が覚めました。
耳の中にまで涙が流れて気持ち悪かったです。

頬擦りしたカサカサした肌も、汗の匂いも、唇にあたった皮脂の脂っぽさも思い起こせる夢でした。

しんちゃんにご飯を用意して
私も顔を洗って青汁を飲む。

いつもの毎日が訪れます。


お前はすでに死んでいる。
でも、心の奥の海にいる。

北斗、お前は許さん。
なんかムカついたから。

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