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きむちの創作

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私のきまぐれな創作をあつめたものです。
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「ま、人生どう転んでも」 創作

「ま、人生どう転んでも」 創作

「じゃ、俺が帰国したら住処提供してよ」
「は、どういうこと?」
「家賃半分払うから、一緒に住まわせて」
「ぬぬ。家賃はんぶん・・・それは大きいかも」
「ま、前向きに検討でよろしく」

 高校の時に付き合っていた元彼であり、ダチ。
お互い恋人がいない時には、たまに電話をしたり、ご飯に行ったりしている。ぶっ飛んだ話もできるし、何気ない悩みも吐き出せるから都合がいい。お互いに恋愛感情はないけど、ないから

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プレゼント

プレゼント

その子は、レジ横にある玩具が詰め込まれた段ボールのてっぺんから、僕を見つめていた。これから店内に陳列されるであろうウサギのぬいぐるみ。悩み顔のうさぎが、赤ちゃんみたいなパンツを履いている。そのうるうるとした瞳が僕を離さない。

よく見ると可愛い、というより気持ち悪いキャラクターだなとも思う。

どこかの家の子供が腕に抱いていた、あるいは枕元に置いていたであろうぬいぐるみ。あるいは、僕みたいなイケオ

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宇宙の子がいるよ

宇宙の子がいるよ

コンクリートの壁に押し込まれた卵。

宇宙柄の卵です。

質感は、マットと艶の間くらいで、

殻の表面にいる惑星たちは、なぜか透き通って見えます。

卵を割ると、銀色の粉と群青色の水が溢れ出ます。

真ん中には黄身ではなくて、白く閃光を放つ小さな星が一ついます。

その星の直径は3ミリ程です。

白い星を握り潰そうとすると、アメンボのように宙を飛んで逃げます。

まるで生きているかのよう。

どこ

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ひとびと (創作)

ひとびと (創作)


待合室

「失礼します。こんにちは~」
シャランとした柄物の羽織をまとった小太りの中年女性が診察室へ入っていく。

心療内科の待合室は、ピアノのゆったりとした音楽の波が満たされている。

オフィスにいるはずの平日のど真ん中にこの場所にいることは、私をどこか浮世離れした気分にさせてくれる。

会社というピリピリした檻の中から引っ張り出されて、心を調整するためのあたたかい空間にちょこんと置かれたみた

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