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鹿狩りフラミニヤ―創作

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自然発生的に生まれた掌編や散文詩ともつかない「創作」寄りのもの、およびお題をきめて書いた習作をこのマガジンで販売しています。不定期的に更新され、原稿用紙で二百枚程度になったらひと… もっと読む
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#文学

ルイーズと森の道(仮題)―前

ルイーズと森の道(仮題)―前

※無料

 世の中には幽霊を信じる者と信じない者とがある。ルイーズはその立場の上で、截然と前者の態度をとっていたが、それは単純な幽霊とは性質を異にしていた。もしも万が一、それについて踏み込んで話を聞くわけしりがいたものならば、彼はルイーズの身の周りに起こっていることについて卒然と感得させられ、理解を促させられていたはずだった。ルイーズの幽霊はルイーズ自身と切って離せなかった。そのルイーズの幽霊は人

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十二月上旬の景観

十二月上旬の景観

 いずれ世界を底抜けに滑稽に染め抜く小唄ともつかぬ、饒舌と哄笑の遊戯でさえなくなった惰性の遊戯に包まれて、この日本という島国でもっとも夜が夜であるという繁華街の中央、危なっかしく均衡を保とうとすることに私はそのころ、疲弊していた。疲弊? 今更なにが疲弊であったと云うのだろう?――こうなることを選んだのは自分だったではないか。交遊も酒も喧噪も、持って回った言い方も。問題は、ふと醒めたようにしてそれら

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十一月半ばに書かれたパスティッシュ風の幕間的掌編

十一月半ばに書かれたパスティッシュ風の幕間的掌編

「そうですか」
 それは広く長い河川の流れとは異なっている。
 それは地下からしみ出す水がいずれなにかのはずみに、掘り抜き井戸を溢れるのとも異なっていて、そしてまた海辺におとずれる潮の満ち干とも決定的に性質をたがえている。
 あらゆる意味においてそれらの比喩は、適切さに欠ける。

   □

 ただ私はみていたのだ。穏やかな波頭のうねりをみつめているうち、時をかけてなにかが漂着する「時」の訪れその

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