ふわふわのホットケーキが作れるホットケーキミックスを買う。
フライパンの上で２つが一緒になっちゃって、ハート型のどデカいホットケーキができあがる。
「これはこれでいいや」と少し黒くなった表面を見て笑う。
いちごとバナナとホイップクリームとシュガーパウダー。アポロチョコとマーブルチョコとチョコソースも用意。
シャンメリーを用意して、「メリークリスマス」。

全ての欲を詰め込んだようなケーキが出来上がる。
フォークに、生地とクリームとチョコとイチゴとバナナとアポロチョコとマーブルチョコが一緒くたの“欲のかたまり”を刺して食べる。
「やべえ、むちゃくちゃに美味い。」
全小学生が喉から手が出るほど食べたいであろう見た目のケーキは、想像をさらに超えるほどウマイ。

「大人っていいな。」
「大人って楽しい。」

シャッフル再生のスピーカーから「ラパパンパン」と聞こえる。今月の初めに、出演 : 松たか子さんと神木隆之介さん他、演出 : 松尾スズキさんの演劇『パ・ラパパンパン』を観に行ったことを思い出したりする。松たか子さんの歌声に感動した。

口の中いっぱいに広がる“夢”。
「夢を食べている。」
全ての子供が思い描く夢を食べている。
マーブルチョコが思ったよりも口に突き刺さることが可笑しくて爆笑する。

「この先、頑張っても何にもならない気がするんです。何かをしたって意味はなくて、だから全てどうでもよくなるんです。」
この前、後輩がそう言っていた。
その感覚はとても分かる。同情したいとかそういうわけでもなく、僕も同じような感覚を持ったことが何度もある。
当時の僕が聞きかった言葉はなんだろう。
今度、伝えてみようかな。

大人は食べたいものだけを詰め込んだスーパーのカゴを作ることができる。
大人は無造作に美味しいものが乗った“欲のかたまり”を作ることができる。
大人はクリスマスソングを流しながら、夜ご飯に好きなジュースを飲みながら、大きな大きなケーキを食べていい。

歳を取るのも悪くないと思えるだろう。
「頑張っていこう」とか「大丈夫」とか「今やったことはいつか役に立つ」とか、そういう言葉を投げてしまいそうになるけれど、そんな言葉は耳が痛くなるほど世の中に流れていて、きっと大切なのは「楽しいよ」と伝えること。
大人って楽しそうだなって。
生きていると、ため息が出るほど呆れることも、どうしようもなく辛い時も寂しい時もあるけれど、何より楽しいよって。
いつかはどデカいホットケーキを作ってみてよって。
いつかは口の中いっぱいに夢を食べれるよって。
いつかは好きな人と、楽しいクリスマスを過ごせるよって。
シャンメリーをおかわりしてもう一度「メリークリスマス」。
また「ラパパンパン」とクリスマスソングが部屋中に流れた。

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