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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2018年9月の記事一覧

ジュリー・オリンジャー 『溺れる人魚たち』

★★★☆☆

 短篇小説を一冊読めば、その作家のことが大まかにわかる。

 無駄を省いた上でまとめあげる技術、物語を書くためのアイデアや舞台設定、文体、ヴォイス、モチーフ、テーマ……短篇小説を一冊書くには、そういった要素を作品ごとにまとめ上げなければならない。そうしてできあがった作品群を読むと、その作家の力量、方向性、世界観の概略をつかむことができる(もちろん、長篇小説を一冊読んでもその作家のこと

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エルモア・レナード 『オンブレ』

★★★☆☆

 今年の2月に新訳として復刊されたレナードの初期西部劇作品。『三時十分発ユマ行き』も同時収録。訳者は村上春樹。
 いわゆる積ん読状態だったのですが、ようやく読みました。

 語り手の『私』は特にどうということもない人物で、中心となっているのは『オンブレ』の異名を持つジョン・ラッセルです(オンブレとはスペイン語で「男」という意味)。このクールで、独自の哲学を持つ男を中心にして話は進みま

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エドワード・ゴーリー 『失敬な招喚』

★★★★☆

 せっかくなので、先々週に引き続き、先日出たばかりのエドワード・ゴーリーの新刊をご紹介します。訳者はもちろん柴田元幸。

 原題は『THE Disrespectful Summons』。直訳すると「失礼な呼び出し」といった意味です。悪魔がやって来る話なので、上記のようなタイトルになったのでしょう。的確です。

 ちなみに、裁判などで証人を呼ぶのは『召喚』、悪魔を呼び出すのは『招喚』の

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