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音楽で紐とく《にほん》

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日本にはとても優れた音楽様式があり、幾代の歳月を経て受け継がれているのですが、そうした文化が日常の生活で触れることができなくなったのは何故なのでしょうか。音楽を通してにほんの歴史… もっと読む
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音楽で紐とく《にほん》

音楽で紐とく《にほん》

千葉県佐倉にある文化芸術教室「茶琴神明」では、音楽を通してにほんの歴史や文化を学ぶという試みをスタートしました。

ヴァイオリンでの米国音大留学を経て、帰国後転身、邦楽の世界に足を踏み入れた茶琴神明オーナーが数年間で培った知識や芸事をyoutube チャンネルでご紹介しています。※現在youtubeは会員のみ公開

本マガジンでは、茶琴神明オーナーの杵屋彌十代(きねややそよ)先生にご指導頂き、右も

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ふとしたご縁がありまして、長唄を習い始めました

ふとしたご縁がありまして、長唄を習い始めました

長唄を習っています。お教室は城下町にある古民家で、カフェを営業しながら雅楽や邦楽の演奏会も主催されます。普段はひっそりと静かな空間です。

先生から紹介して頂いたお道具屋さんで写真の三味線と出会いました。慣れない三味線を相手に、正座をしては足がしびれるわ、バチの持ち方も分からないわ、糸の替え方も分からないわ、と四苦八苦している私に、優しい先生が色々と教えてくださいます。

長唄はきっと楽しく学ぶこ

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たまたま長唄に出会ったから

たまたま長唄に出会ったから

長唄を習うきっかけ

何故、長唄を習い始めたのか?それは、
たまたま長唄に出会ったから、です。

縁あって、東京での生活から抜け出して、千葉県に越してきました。ゆっくり過ごす時間はとても大事なひとときです。

城下町で古い歴史もあり、田園風景も穏やかです。東京から電車で1時間ですが、その距離感がとても居心地のよいものでした。

そして、駅前の商店街にある古民家カフェ「茶琴神明」のオーナーさん(いま

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日本人なのに、何故日本の音楽を学ばないのか?

日本人なのに、何故日本の音楽を学ばないのか?

城下町にある古民家カフェ「茶琴神明」では、定期的に演奏会を開催していました。オーナー(写真)自らによるレクチャー演奏会や、演奏者をお招きしてのライブ演奏など。

米国の音楽大学でヴァイオリンを学んでいたオーナーは、米国人に「日本人なのに、何故日本の音楽を勉強しないのか」と聞かれたそうです。

海外の有識者には、日本の文化はとても優れていることが知られています。けれども日本人がそのことを知らないのは

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線香花火のように、繊細な音色

線香花火のように、繊細な音色

都心から約1時間。師匠が生まれ育った築100年以上の古民家で長唄を習うことができるということ。木や畳のぬくもりに、琴や三味線の音色が染み透ります。

「一度体験レッスンを受けてみたら」と師匠に誘われて古民家に訪れたのは、3月でした。師匠は、地唄、長唄と様々なにほんの音楽の歴史や、琴や三味線にまつわるお話しを丁寧に教えてくださいます。

「では、弾いてみましょうか」とおもむろに師匠の三味線を渡されま

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とうとうたらり たらりら

とうとうたらり たらりら

とうとうたらり たらりら
   たらりあがり ららりとう
ちりやたらり たらりら
   たらりあがり ららりとう

まだ観たことはないですが、能の「翁」の冒頭は、このような出だしで始まるそうです。

とうとうたらり、意味のない言葉を音に乗せて節をつけて歌うのは、何かのおまじないかのように、聴くものを彼方に引き寄せます。

それは、さかのぼって、経文に旋律や節をつけた声明や、雅楽の乱声の流れにたどり

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いないいないばぁ

いないいないばぁ

にほんの音楽の源流のひとつとして雅楽があります。何故だか、雅楽は神社で行われる様式と思い込んでいましたが、お寺の法要や供養でも、唄や舞といった雅楽が演奏されることもあるのだそうです。

きっと昔は、もっと自分の中に唄や舞が入り込んでいたのでしょう。地元でお祭りやお祝い事があれば、唄をうたい、踊ったり、というのは、ある種の信仰心のようなものが誘発されるかもしれません。獅子舞がうちを訪ねて厄払いしてく

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自然とひとつになること

自然とひとつになること

音楽が好きです。でもこれまでは、雅楽を聴く機会はありませんでした。
若い頃は、電気を通して増幅された音楽や、アンダーグラウンドに興味を惹かれていました。やがて、西洋音楽(クラシック)を聴くようになります。オーケストラや室内楽の鑑賞や、演奏家の音源を通して、西欧の文化に触れることができます。また、世界の民族音楽の原始的なリズムや旋律も心地よく聴いていました。

そして、にほんの伝統音楽。にほんの音楽

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岸の柳

岸の柳

長唄のお稽古で初めて習ったのは、「岸の柳」です。1873年頃に書かれた曲と言われ、両国付近の歓楽街だった柳橋風情が艶やかに描かれています。柳橋から、隅田川を吉原、深川へと、船で行き来していたそうです。

戦争で焼け野原になってしまった一帯は、江戸時代の町人文化も焼き付くしてしまいました。芸能や工芸、町づくりや衣食住といった、人びとが穏やかに暮らすための知恵が、華やかな文化として発展したのに、それら

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にほんの姿かたち、豊かな自然とともに

にほんの姿かたち、豊かな自然とともに

長唄の師匠によるyoutube 「音楽で紐とく にほん」のシリーズ第3回は「伝統音楽のジャンルについて」です。
※現在youtubeは会員のみ公開

その昔、にほん古来のアニミズム(自然崇拝)や、大陸から渡ってきた礼楽思想など、さまざまな流れを汲み、雅楽が体系化されたそうです。

雅楽や能、歌舞伎は伝統芸能の主流として知られていますが、それだけでなく、にほんでは、あちらこちらで歌や舞の様式がつくら

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三味線で初めて教えて頂いた曲は松の緑でした。今年のお正月には、習い始めて9か月の演奏を録音してみました。まだまだぎこちないですが、毎年弾き比べてみたいと思います。

「松の緑」
嘉永5年(1852)の作品で、4世杵屋六三郎が、娘せいの襲名披露のために作ったご祝儀曲だそうです。
廓(かむろ)という遊女の世話をする見習いの少女は、萌え初めた二葉のように幼い少女だが、いずれ最上位の松の位まで出世するほど

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かろうじて長唄を聴いたことがある

かろうじて長唄を聴いたことがある

幼い記憶。祖父母を囲んだお祝いの会が催されました。お座敷に親戚一同の家族が並びます。芸事が好きな祖父母の影響からか、おもむろに親戚たちの余興が始まるのです。長唄や小唄、日本舞踊からカンツォーネまで、惜しみ無く披露します。

そこで初めて聞いたのが、長唄との出会いでした。叔父様と父が二人並んで唄っているのです。叔父の渋い唄声に比べて、父の調子外れはご愛敬。わたしは訳もわからず、お座敷をヨチヨチと歩き

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音楽で紐とく《にほん》第三回レクチャーライブ

音楽で紐とく《にほん》第三回レクチャーライブ

千葉県佐倉市にある文化芸術スペース「茶琴神明(ちゃごとしんめい)」でレクチャーライブが開催されます。

4月4日(日)第1部13:30~、第2部15:30~
3,500円

特別出演として10代目家元の杵屋彌十郎先生、杵屋彌之介先生がいらっしゃいます。

長唄の家元が、佐倉で演奏をされます。新作ではわたしの師匠が筝の手付けをされています。そして師匠が店主を務めるカフェ茶琴神明で初演が行われます。

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茶琴神明 第三回伝統音楽レクチャーライブ

茶琴神明 第三回伝統音楽レクチャーライブ

コロナ禍とともにスタートした「音楽で紐とく《にほん》」は、昨年のコロナ禍で、何とかオンラインでにほんの音楽について発信しておきたい、と師匠自らがyoutube 動画で始めた講話シリーズです。そして、今回は満を持して、家元をお招きしてのリアルな演奏会と相成りました。

まずはじめに、箏曲「春の曲」。古今和歌集の春の和歌を吉沢検校が琴の調べに乗せて、紡ぎ出す春の情景。いつの代も巡り来る春を想い、こころ

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