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ドラマ「振り返れば奴がいる」を初めて見た

以前「鎌倉殿の13人」の最終回を予想したとき、「振り返れば奴がいる」の最終回と同じ感じになるのでは、と思いました。主人公が身内に近い人間(私は実行役はのえ、黒幕は政子と予想)に殺されるのでは?と。書いてるのが同じ三谷幸喜さんだし。※以下、敬称略

私は「振り返れば…」を通しで見たことがありませんでした。正確に言えばほんのちょこちょこ見てて、最終回はラスト半分くらいをしっかり見た。

司馬による石川のオペが成功。しかし容体が悪化し「石川!戻ってこい!」の叫び空しく帰らぬ人に。一人病院を去る司馬。ここで確かチャゲアスの「や~~や~や~~」が大音量で流れる。道路に突っ立ち苦悩する司馬を背後から刺す男、崩れ落ちる司馬。完。

年末~年始にチャゲアスの動画をさんざん見て「YAHYAHYAH」って「振り返れば…」の主題歌だったよな。司馬を刺す人って西村雅彦だっけ?佐藤B作だっけ?と凄い気になりだして、初めてこのドラマ全話見ました。刺したのは西村雅彦(現:西村まさ彦)ですね。

めっちゃ面白い。なんで今まで見てなかったんだろう。この病院司馬と石川以外に腕のたつ医者少なすぎへん?とか、天才外科医の司馬が患者の画像すり替えるのに男女の違いに気づかないの?とか、「もって明日までの命」の石川が病院内を歩き回ったり診察できるん?とか、正直疑問が付くけれども、話が面白ければ細かい部分はそれほど気にならない。

Wikiによると白い巨塔が元ネタであり三谷さんは「医学ものはブラックジャックしか知らない」として書かれたそうですが、うんうん、(以下BJとします)BJ好きにはたまらんですねぇ。BJを想起させるエピソードが随所に出てきます。まず主人公の司馬がBJとドクター・キリコをハイブリッドしたようなキャラクターです。司馬江太郎の名前は司馬遼太郎と司馬江漢から?石川はBJの第160話「白い正義」の白拍子医師を彷彿とさせます。

司馬の昔の恋人の大槻沢子→第50話「めぐり会い」如月恵
中川部長のメスを持つ手の震え→第71話「けいれん」
手が震えてオペ続行できず交代して貰う→第230話「身代わり」
骨折でオペできない司馬が指導だけ関わる→第157話「B・J入院す」

手塚治虫が亡くなった時に出たワイド版のBJを姉の友人経由で読み、ハマりました。男女問わずBJに恋した人、いっぱいいますよねぇ。自分でもワイド版全巻買ったのにブックオフに売ってしまいました…。だからいま思い出して書いてますが、挙げた以外にも重なるエピソードがあるかもしれません。

亡くなられた当時TVでやってた加山雄三主演の実写ドラマ「加山雄三のブラック・ジャック」も見ましたが、BJは普段は顔に傷のない画廊経営者。用があるときだけBJに変身する。全く別の話になっていてこれじゃない感が凄かった。

司馬が末期癌患者の願いをきいて安楽死させるのはまんま、ドクターキリコですね。全編を通して尊厳死について改めて考えさせられたドラマでした。自分自身も助からないと分かっているならやること終えて延命されずさっと死にたいかなあ。作家の吉村昭の最期(癌療養中にみずから点滴とカテーテルポートを抜いた)は理想的に思える。

やること終えて…自分の場合は書きたい事を全部書き残して逝く、ということか。もちろん助からないと分かっているなら、ですし、一応まだまだ生きたいとは思っています。

司馬と石川は憎みあいながらも互いの能力は認めている。ドラマを通して描かれる友情は捻くれているけれども、これは相手への真の賛辞といえるのかもしれません。小説でいえばこの作家は苦手だけど書くものはいいので読んでしまう、という事か。これって作品への最大級の賞賛ではないでしょうか。

驚くのはWikiによれば織田裕二が「刺されて死にたい」と申し出たため最終回を撮り直したとの事。普通、考えぬいて構成したラストを変えるのは嫌ですよね。織田裕二が人気俳優だから断れなかったとかの事情もあるのかもしれませんが、受け入れる三谷さんは器が大きいと思うし、だからこのように衝撃的なラストになり、割と細かい箇所まで覚えていた。織田裕二グッジョブ!!

末期癌患者を安楽死させる→自身も刺されて死ぬ

安楽死を必ずしも悪とは思っていないですが、因果応報の形になっている。
白と黒の医者は運命に導かれた二人であり白が逝くことにより黒も命を潰えた、とも解釈できます。自分の中のドラマにおける名ラスト5選に入ってます。その癖に全編見てなかったんですが;


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