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アラジール症候群

・肝臓内の肝細胞その中の胆管が少ない
・心臓の動脈が細い(肺動脈狭窄)
・背骨に黒い筋がみえる(脊椎蝶形)
という診断を受け、医師から伝えられた病名は
「アラジール症候群」

(前回の話し⬇︎)

全く聞いたこともない病名だった。
入院してから色々買い集めた病気の本などにも載っていない珍しい病気。病気の深刻さや大変さが全くわからない。

 正直、病名を聞いたときの感想は覚えていない。病名を聞いてはじめに、治る病気なのかを医師に聞いた事は覚えている。医師の返答は「治る病気ではない。しかし、病気の症状によっては今後もある程度普通の生活ができる。」と、いうものだった。すごく複雑な心境だった。
 揚げ足をとるつもりはない。医師は言葉を選んでくれたのだろうが、何もわからない。「症状によっては、ある程度普通の生活が出来るかも?」「症状によっては?」「ある程度普通の?」将来が何もイメージできない・・・
 そして「症状によれば今後肝臓移植などを行わなければならない。」とも説明を受けた。
「移植・・・」
突然のこと過ぎて理解ができない。

日々の様子、今後の成長の過程をみていき、一つ一つの問題を解決していかなければならないということだった。親として、目の前の我が家の宝物を失わないために、症状が軽く今後普通の生活を送れるようにと、ただ願うことしか出来なかった。

アラジール症候群としての生活が始まった。
病名がわかり治療をすることになった。といっても、ただ毎日薬を打つだけ。使用する薬は、ステロイドなどの副作用(免疫力の低下や骨が弱くなったり様々副作用が起こる可能性があります)が心配となる薬とビタミン類など。その後、2ヶ月半程の入院でようやく退院許可がおりた。

 今だから言える事だが「退院許可をもぎ取った」っと表現した方がいい。毎日薬を飲み経過観察、採血をするだけなら病院でなくてもできる。病院にいた方が安心なのだが、我が家には真翔以外にも2人の子供がいる。長男の小学校入学が迫っているので、今の真翔の状況であれば退院させて欲しいと医師にお願いをした。(何てワガママな患者だ)でも医師は退院を許可してくれた。
今思えば感謝しかない!

 退院と言っても、毎日3回薬を飲み続け、定期的に病院へ検査に行かなければならない日々。(初めの方は週2回程度通院していた。当時車がなかったので、病院まで片道2時間半程かけて・・・)でも、本当に家族が待ちわびた退院だった。
 入院中、上のお兄ちゃんは、突然お母さんと弟がいなくなって本当に毎日泣きっぱなしで、遊んでいても急に泣き出してしまったり。少し不安そうで、どこかさみしそうな顔が毎日続いていた。そんな顔、姿を見ると親としても本当に辛い日々だった。どうしたらいいのか?何をしたらいいのか?早く真翔を帰してくれ!と思う毎日だったからだ。

 そして決して真翔の体調が良くなっているわけではない。身体も同じ月齢の子に比べれば小さく、黄疸の数値も安定はしてきているものの6.9 (平均は0.3~1.4 入院中最高で16もあった)痒みのせいで身体をかきむしりシーツはいつも血まみれ、眠れない毎日が続く。総コレステロール値も1,000を超え1647まで上がった事もあった。(成人平均200~220)さすがに数値が良くないので肝臓移植の話もでてきた・・・

 肝臓移植をし100%体調が良くなるのであれば、肝臓移植もする。しかし実際は多くのリスクを伴い、必ずしも移植をし体調が良くなるとは限らない。最終的に移植をしなければならないとわかっているのであれば、真翔のこと、苦しみを考えて早めに移植をした方が良いのだと考えていた。しかし、親としては何とか自力で体調が良くなってもらいたいと願う気持ちもあった。
 移植をするのであればドナーはどうする?当たり前の疑問。担当の医師からは「必ずしも親がドナーになる必要はない。リスクがつきものなので。」とは言っていただいたが、当時の日本では脳死移植はまだ症例が少なく、「他人の肝臓よりかは、やはり自分の肝臓をあげたい」と、思うのが親の心理だ。
 しかし、ドナーや真翔にもリスクは伴う。考えたくはないが、真翔やドナーが今後体調を崩したらどうするのか?移植をしても真翔の体調が良くならなければ、ドナーに負担をかけるだけ?色々な不安がよぎる。早急に移植をしなければならないと迫られれば、こういった不安も考えず移植に踏み切ることが出来たのかも知れないが、真翔のように移植をした方が良いのか、それとも自力で良くなってくれるのかの判断が難しい場合、日々不安だけが募っていく。

 移植後のことに関しても色々と担当医からお話を聞かせてもらった。真翔の病気「アラジール症候群」は身体全体の病気だ。肝臓移植をしたからといって全ての症状が治るわけではない。移植をすれば黄疸での痒みや栄養吸収がよくなり成長障害も少しはよくなると思われる。しかし、肺動脈狭窄や血管が細くなる傾向、脊椎蝶形による成長障害、知能障害までは肝臓が良くなったからといって治るわけではない。素人考えで移植の様な大きな手術をすれば、リスクは伴うものの病状が治ると考えるところだが、実際はそうあまくはなかった。

【アラジール症候群とは】
肝内胆管の減少に特徴的な肝外症状を伴う先天性疾患です。
主要症状 以下の3つ以上が当てはまれば診断されます。

【主要症状】
・慢性胆汁うっ滞
・特異顔貌
・心血管系の異常(末梢性肺動脈狭窄)
・椎骨の異常(前方弓癒合不全)
・眼科的異常(後部胎生環)

その他下記の様な症状を伴う場合があります。
・腎障害(低形成腎、腎動脈の異常など)
・高コレステロール血症
・精神運動発達遅滞
・骨の異常

肝臓移植や腎臓移植、心肺移植を必要とする場合もあります。

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