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「ウンベルト・サバ詩集」須賀敦子 訳

<イタリア旅行記(2008年夏・ヴェネト&ドロミテ&トリエステ)no.72>

トリエステの詩人・ウンベルト・サバ(Umberto Saba)

日本に帰国後、早速、読んでみようと、彼の詩集を入手しました。

「ウンベルト・サバ詩集」
(須賀敦子 訳)

1911年に出版され、サバの名を、一躍有名にした作品です。
初めて読んだ時は、う~ん、難しい…と言うのが正直な印象で。
でも、2度目は、リズミカルな言葉の躍動感と言うのでしょうか、「旋律」を感じました。

題名「トリエステ」も、あります。

須賀敦子さんの訳された通り、ご紹介します。
是非、サバの言葉の「音」を、お楽しみください。
      (本は、縦書きですが、横書きになる事を、ご了承願います)


トリエステ

街を、端から端まで、通りぬけた。
それから坂をのぼった。
まず、雑踏があり、やがてひっそりして、
低い石垣で終わる。
その片すみに、ひとり
腰を下ろす。石垣の終わるところで、
街も終るようだ。

トリエステには、棘のある
美しさがある。たとえば、
酸っぱい、がつがつした少年みたいな、
碧い目の、花束を贈るには
大きすぎる手の少年、
嫉妬のある
愛みたいな。
この坂道からは、すべての教会が、街路が、
見える。ある道は人が混みあう浜辺につづき、
丘の道もある。もうそこで終りの、石ころだらけの
てっぺんに、家が一軒、しがみついている。
そのまわりの
すべてに、ふしぎな風が吹き荒れる、
ふるさとの風だ。

どこも活気に満ちた、ぼくの街だが、
悩みばかりで、内気なぼくの人生にも、
小さな、ぼくにぴったりな一隅が、ある。

      「ウンベルト・サバ詩集(須賀敦子訳)」(みすず書房)より

詩集は、もちろん、本もそうですが、
同じ作品でも、いつ読むか、どんな時に読むかで、感じ方、受取り方が
違います。
初めて、サバの詩に触れてから、10年経過した、今。
きっと新しい発見があるのでは、と思っています。

ゆっくり、読み直してみます。

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