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エンドロールの後も人生は続く(一条岬:『嘘の世界で、忘れられない恋をした』)

一条岬さんの『嘘の世界で、忘れられない恋をした』(メディアワークス文庫)という青春小説を読みました!

今作は難病を抱え、余命わずかとなった主人公・誠が映画制作を通して、彼が片想いしている女子・翼との仲を深めていく物語となっていました。
大切な人を失った悲しみを読者も驚くようなアイデアで乗り越えていくところが一条さんの作品の魅力だと思うのですが、それは今作でも健在でした。

「泣ける」系の恋物語は、恋人が病気などで亡くなる場面で終わる作品が多いと思います。物語は一旦そこで終わるけど、現実はそうではありません。映画でいうエンドロールの後も私たちの物語人生はまだまだ続いていきます。

短い間ではあったけど、翼にとって宝物のような時間だった誠と過ごした日々。誠がいなくなってからも、彼の思いを映画という形で繋げていく翼と仲間たちの奮闘に心が揺さぶられました。

誠がこれから先の人生を翼と歩んでいけなくなってしまったのはとても残念でしたが、彼が生きていた証は大人になった翼たちが作った映画を通してしっかり読み手の私にも伝わりました。

また、作中にて「星は過去からの光」という言葉がよく出てきたのですが、この言葉になぞらえた終盤のシーンも物語にいい味を出していました。
亡くなる前の誠が書いた手紙が大人になった翼のもとに届いたことによって、数年越しに2人が再会できた瞬間は、私にとっても宝物のようなページとなりました。

日常のきらめきを集めた恋愛映画の世界と現実を行ったり来たりしているような素敵な物語でした!

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