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認知症のおじいちゃんから教えてもらった友達をつくる方法

「友達ってどうやってつくればいいんですかねー」そんなことを同僚にぐちぐち相談していたら、人がわらわらと集まってきて図らずも『友達をつくるには』プチ座談会みたいになってしまった。

 街コンにでろ、習い事をはじめよ、一人で飲みにいけ等々の好き勝手言いたい放題の応酬がつづくなかで、そのうちのひとりがたまたま近くにいた入居者のAさんにふざけて「Aさーん、友達をつくるにはどうすればいいんですかねー?」ときいた。

 Aさんは認知症がめちゃくちゃ進んだ78歳のおじいちゃんで、朝食や夕食を食べたかどうかも覚えてない。それでいつも周りとトラブルを起こしては「ごはんも食えんなら自殺する」と宣う、いわゆる困った気難しいおじいちゃんだった。だから私達はなーんにも期待していなかった。申しわけないがAさんにきいたのは単なるその場のノリだ。しかし、Aさんは口を開いた。

 「自分がいちばん馬鹿になればいいんよ。ひとはみんな上に立ちたがるから自分がいちばん馬鹿なフリをすればいいんよ。」

 その瞬間、その場にいた全員がハッとし、直ちに反省した。認知症になってそのひとが日々の出来事をすべて忘れたとしても、そのひとの78年の人生がなくなったわけじゃない。そんな当たり前のことを思い出すには十分すぎる出来事だった。

 目にみえることだけに囚われていたら、そのうしろの目にはみえない大事なものまで取りこぼしてしまうよ。友達のつくりかただけではなく、そんなことも認知症のおじいちゃんから教わった1日でした。

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