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読書まとめ『世界史の教科書 経済編』→世界をつなげたお金と労働

『一度読んだら絶対に忘れない 世界史の教科書 経済編』山﨑 圭一


一言で言うと

世界をつなげたお金と労働



概要

年号を使わない世界史の教科書シリーズの、無印・宗教編に続く3冊目とのこと。著者は公立高校教師でありながら、「ムンディ先生」としてYouTubeでも授業動画を配信されている方です。日本史や地理の授業も配信されていて、全部見るにはボリュームがありすぎるので、学びたい内容の動画をピンポイントで見てみようと思ってます。


本書を読んだきっかけは、共通テストを自主受験してみて、世界史の理解不足を痛感したことです。世界史Bだけでなく、日本史・地理・政治経済・現代社会を理解するためにも必要な教養だと実感しました。「日本人は国際感覚が足りない」とひろゆきさんも言っていたなーと思い出し、学び直しのために読んでみました。


物価やヒト・モノの往来を切り口にして各地・各時代を解説しているのが本書の特徴です。経済の豊かさは国力・軍事力に直結していますし、経済力がついて国内が安定すれば文化も醸成されやすくなります。

その点、歴史のHow・Whyにフォーカスしたシリーズと言えるのではと思います。学校での歴史の勉強というと、When=年号や、Who=人や王朝の名前を暗記しがち。一方、本書では、How=国を安定させるための政策や、Why=歴史的事件が起きた経済的背景の説明が中心です。飢饉・戦争→増税→反乱・革命、この流れがテッパン。

また、地図や図解が豊富で、各地方の関係性がわかりやすいと感じました。世界の各国が強いつながりを持っていることを再認識させられますね。ウクライナで戦争が起きて日本の物価が高騰というような、地域を超えた影響の伝播は、現代特有のことではなく、はるか昔から当たり前に起きていたことを学べます。

本稿では、印象に残った学びを3点でまとめます。



① 遠いようで近い、東西ユーラシア

紀元1世紀、中国からローマ帝国に使者が派遣されていたことをご存じでしょうか。『後漢書』西域伝・安息伝には、後漢の使者・甘英が大秦(ローマ帝国)に派遣され、現在のシリアあたりまで到達したと記されています。また、2世紀にはローマ帝国からの使者が現在のベトナムに来ており、ローマの金貨も出土しています。

世界はたしかにつながっていて、広いようで狭いのだなと再認識しました。今から2000年前に、ユーラシア大陸東西の大国が交流を持とうとしていたことに驚きました。インド洋・東南アジアを経由した海の道に加えて、ユーラシア大陸は陸路で東西に移動しやすいことも、東西の交流を促したと考えられます。時代を少し下れば、日本の正倉院にもペルシア伝来のガラスなどが収められていますね。



② 機械化は生産性と格差を生む

18世紀イギリスから始まった産業革命により、経済は大きく発展することになりました。人間の作業が機械に置き換えられることで生産性が向上し、モノの大量生産へとつながっていきます。労働者にとっては、作業の熟練を必要としなくなった一方で、賃金が低下することになりました。資本家は安い賃金で労働者を雇って大きな利益を上げ、労働者と資本家の間の経済格差が拡大していきます。

現代において、産業革命と同じことが起きようとしているのかもしれません。2022年は、AIの本格的な普及に踏み出した年でした。生産性を高めるアイデアが次々と生まれる一方、「AIに仕事を奪われる」懸念も強まっているように感じます。過去の産業革命と同じような状況になるのであれば、歴史を学ぶことで自分がどう行動するべきかを考える助けになると考えられます。



③ 勤労意欲に依存しない経済は可能か

経済を動かすための原動力として扱うには、人間の勤労意欲は繊細すぎると感じました。近現代に入って、平等の理念を掲げた社会主義や、「ゆりかごから墓場まで」の高福祉政策が取られました。しかし、これらの政策は、たくさん働いても貰える額は一定or高い税金を取られることから、人々の勤労意欲を削ぐ結果になったと言われています。現在では、資本主義の世界観での自由競争によって勤労意欲を高めることが主流になっていますが、超富裕層の発生や環境への悪影響などの懸念もあります。

経済の発展は、食い扶持を得るための労働ではなく、自己実現のための労働から生まれると考えました。AIによる生産性向上とベーシックインカム導入によって、食い扶持を得るための労働を排除する形が理想的なのかなと。『ブルシット・ジョブ』で感じたように、個の人間としても社会の一員としても、私たちは労働に依存しすぎているのかもしれません…



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経済とは切っても切れない、労働についての興味深い一冊。


経済の中でも、特に税金にフォーカスして世界史を解説した本。ただし、世界全体ではなく、西洋史に偏っています。



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