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読書まとめ『ヤバい集中力』→自己効力感を高め、内なる獣とうまくやる

『ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45』鈴木 祐



一言で言うと

自己効力感を高め、内なる獣とうまくやる



概要

『集中できないのは、部屋のせい。』を読んで、集中力に対する興味が沸いたので読んでみました。部屋を片づけてノイズ(外的要因)を減らすことはもちろん重要ですが、それだけで集中力が持続するのか、という疑問があったんですね。集中を妨げる内的要因や、集中力が落ちたときの対抗策など、他にも学ぶべきことがあるのではと考えました。


本書は、最新の研究に基づいたエビデンスが豊富に紹介されているのが特徴です。ちょっと頭ワルそうなタイトル、と思っちゃいましたが、中身は極めてインテリジェント。『YOUR TIME』の著者でもあるサイエンスライター・鈴木祐さんの著書と知って、ちゃんとしたエビデンスをもとに展開していくはずだと確信して読みました。


本書を通じて、集中力を高めるためのキーワードは「自己効力感」だと感じました。つまり、「自分ならできる」と信じること。ちょっと意外ですね。


本書では、人間の本能を獣、それに対する理性を調教師に喩えています。人間の内側には、相反するこれらの思考が共存し、せめぎ合っています。集中力の文脈で言うと、おやつを食べたりSNSを見たりしたいのが獣、仕事に集中しなきゃと考えるのが調教師ですね。

残念ながら、調教師は獣に勝てません。獣=本能は、身体能力で他の動物に劣る人間が、生き延びるために進化させてきた武器のひとつです。食べ物や新しい情報を手に入れるチャンスがあるなら、迷わずそれを手に入れるのが生存本能というわけです。本能の進化よりもずっとあとに発展した理性では、生存への本能を制御しきれません。


重要なのは、獣に勝てないことを前提に、獣とうまくやることです。完全にコントロールしようとしたり、勝とうとしたりするのは無理な話。自分の望む方向に獣を導きつつ、獣の衝動が強くなってきたら正面からは戦わずにやり過ごす戦略が有効です。

獣を完全にコントロールできないことを気に病むと、自己効力感の低下・自己嫌悪に陥る危険性があります。集中力を高めたい・自分は集中力がない人間だと考えてしまうと、獣がその感情を真実だと捉えて、本当に集中力がないように振る舞ってしまうそうです(The Self-Control Irony: Desire for Self-Control Limits Exertion of Self-Control in Demanding Settings)。完璧主義にならずに、適度に諦める勇気も大事ですね。


本稿では、本書からの学びから私が実践したいことを3つ共有します。本書に掲載されている45個のライフハックのうち、調教師としての自己効力感を高く保つことにフォーカスしています。



① 間食の記録をつけて視える化

間食の記録をつけることで、自己効力感の向上と食事のコントロールを図ります。最近、私がコントロールできていないと感じるのが、在宅勤務中の間食。記録をすることで、間食しすぎの改善にアプローチしたいと思いました。

何かを記録し続ける行為は、自己効力感を高める効果があります。この効果は、私は「時間の家計簿」で強く実感しています。コウペンちゃん風に言うと、記録を続けられてエラーい。エビデンスとしては、シェフィールド大学の研究(Does Monitoring Goal Progress Promote Goal Attainment? A Meta-Analysis of the Experimental Evidence)が下記の結果を示しています。

  • 毎日の行動を記録したほうが、健康的な食事の量は増える

  • 記録の回数は、多ければ多いほど食習慣は改善する

そもそも「健康的な食事」って?については、MIND食事法に基づいて脳によい食品・悪い食品が掲載されています。MINDのスコアでは、お菓子・スナック類はマイナス5で、揚げ物・ファストフードと並ぶ最低評価です。お菓子・スナック類を減らしつつ、間食したい時はナッツ類(プラス2)・魚介類(プラス4)あたりを食べるようにします。

実際に記録をし始めてみて、やっぱり食べ過ぎだなとわかりました。ダイエットがうまくいかない男女を対象に食事内容を精密に記録した研究(Discrepancy Between Self-Reported and Actual Caloric Intake and Exercise in Obese Subjects)では、本人の感覚よりも摂取カロリーは47%多く、野菜の摂取量は51%少なかったといいます。人間の感覚はアテにならないので、記録をつけて視える化する重要性を改めて感じました。



② 質問型アクションでタスク管理

やるべきことに対してやる気が出ない場合の対策です。

質問型アクションの形でタスクを書き出すことをやってみようと思いました。質問型アクションの書き方は、「◯◯は、午前5時にリビングのテーブルで△△の読書まとめ作成をするか?」といった感じ。いつ・どこで、を明確にしつつ(実行意図効果)、言い切りではなく質問文の形にしています。

質問文にすることで、獣へ訴えかける力が強くなります。文章が完結していないので、獣が無意識に答えを探し始め、タスクが「自分ゴト」になる効果が期待できます。これは「問いかけ行動効果」と呼ばれるテクニックで、過去40年のあいだに何度も妥当性が確認されているとのこと(A Meta-Analytic Synthesis of the Question-Behavior Effect)。

タスクを自分ゴトにするには、タスクを完遂できるという自信が必要だと感じました。タスクへのやる気が出ないのは、自分はこのタスクを完遂できる、という自己効力感が不足しているからかもしれません。タスクの難易度を、難しすぎず簡単すぎず、ちょっと難しいレベルに設定することも大事ですね。



③ 誘惑から5分遠ざかってやりすごす

やるべきでないことをやってしまう場合の対策です。

誘惑をやり過ごすテクニックとして「5のルール」が紹介されています。誘惑にさらされたとき、あと5分だけ待つ・あと5回だけ続ける、といった小さな我慢をしてみるテクニックです。

獣の衝動は長続きしないので、ちょっとだけ無視する感じですね。獣の衝動は長くても10分しか続きません(The Taming of Desire: Unspecific Postponement Reduces Desire for and Consumption of Postponed Temptations)。感情の動きを客観的に観察し、「仕事に飽きた獣が誘惑に引っかかってるな、とりあえず5分だけ放置しよう」とやりすごすのがよさそうです。衝動買い対策として「モノが欲しくなったら1週間待って、それでも欲しかったら買う」みたいな戦略もありますね。

こういった小さな我慢を積み重ねると、「誘惑に耐えられる自己像」を強化することにつながります。本書で「心の筋トレ」と表現されているとおり、調教師にもトレーニングが必要です。利き手とは逆の手でマウスを操作する、背筋が曲がっていたら伸ばす、などの小さな我慢を乗り越えることで、集中力アップの効果が確認できた実験(Longitudinal Improvement of Self-Regulation Through Practice: Building Self-Control Strength Through Repeated Exercise)もあります。



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