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ONE PIECEで解説!「EQリーダーシップ」~集団の力を引き出す”感情の資質”とは~

「EQリーダーシップ」(ダニエル・ゴールマンほか)を読みました。

約20年前の本ですが、役に立ちそうな考え方が盛りだくさんだったのでご紹介します。

さらに今回は”リーダーシップ論”ということで、たくさんの海賊団とそのリーダーが登場する”ONE PIECEの人物”を具体例に、解説を加えてみました!

ONE PIECEファンの方々にとっても理解しやすい内容になっていると思うので、ぜひ読んでみてくださいね。


1.EQとは

「EQとは」については本書の内容ではありませんが、初めて聞いたという方のために軽くご紹介しておきます。

EQに詳しいこちらの方の言葉を借りれば、

EQとは”Emotinai Intelijence Quotient”の略で心の知能指数のことです。
「自身の感情を認識し、上手く対処するだけでなく、他者の感情も認識し関係を調整する能力」
社内だけでなく、社外との関係も上手く調節できるので、その結果ハイ・パフォーマーとしての成果を生み出していたことがわかりました。

・・・ということです。以上をまとめると、

・チームで優れた成果を上げるには、自分や他人の感情に気づき、共感したり調整したりする能力が必要
・その能力を総称して「EQ」とよぶ

ということですね!


2.リーダーにこそEQが必要

では、リーダーにEQが必要な理由とは何でしょうか?

それは、「リーダーの重要な役割は集団の感情を前向きに方向づけること」だからです。

不安や恐怖、諦めといった”負の感情”がただようチームで息苦しい思いを経験したことのある人なら、納得できますよね・・・。

前向きな気分が共鳴しあう集団でこそ、メンバーが能力を発揮してチームの本領が発揮できる。
そのためにメンバーの感情の指針になるのがリーダーの役割である、と本書では語られています。


3.EQリーダーシップの4領域

それでは本題に入ります。

優れたリーダーがもつEQには、どんな構成要素(コンピテンシー)があるのでしょうか?ゴールマンの研究と分析の成果を見てみましょう。

ゴールマンは、EQリーダーシップを4つの領域と18項目に分けて整理しました。

自己認識

   1. 感情の自己認識・・・
    自分自身の気持ちや、それが仕事に与える影響を感じとる力。

   2. 正確な自己評価・・・
    自分の強みや限界を正しく把握する力。

   3. 自信・・・
    自分の長所や価値観に従って決断し、挑戦する力。

自己管理

   4. 感情のコントロール・・・
    ネガティブな感情や衝動を管理し、平静を保つ力。

   5. 透明性・・・
    自分の気持ちや信条を、隠さず正直に表出する力。

   6. 順応性・・・
    新しい課題や変化があっても、柔軟に考えられる力。

   7. 達成意欲・・・
    高い基準をもち、向上を目指して努力を続ける力。

   8. イニシアチブ・・・
    自分で自分の運命をコントロールできると信じる力。

   9. 楽観・・・
    他者や将来の結果について肯定的な可能性をみる力。

社会認識

   10. 共感・・・
    個人や集団が口に出さない感情を感じとる力。

   11. 組織感覚力・・・
    組織の力関係を把握し、暗黙のルールを読みとる力。

   12. 奉仕・・・
    他者のニーズや満足感を理解し対応する力。

人間関係の管理

   13. 鼓舞激励・・・
    共通の目的を掲げて仲間の心を奮い立たせる力。

   14. 影響力・・・
    聞き手の関心を引きつけ、説得し、賛同を得る力。

   15. 育成力・・・
    他者の才能を見つけ、指導し、引き出す力。

   16. 変革促進・・・
    組織の現状に疑問をもち、新しい秩序への変化を促す力。

   17. 紛争処理・・・
    衝突に対し、各個人の主張を引き出して前向きな合意に繋げる力。

   18. チームワークと協調・・・
    周囲との親密で協力的な関係をつくり、一体感をつくる力。


・・・以上、EQリーダーシップの構成要素(コンピテンシー)でした。

どれも、リーダーに限らず大切だと思えるような性質ばかりですよね。

ゴールマンによれば、実際にはこれらの全てが完璧なリーダーは存在せず、リーダーごとに得意なものをいくつか組み合わせてチームを動かしているということです。

そこで次のセクションでは、組み合わせから生まれるリーダーシップの「型」について紹介していきます!


4.「リーダーシップ・スタイル」とONE PIECEに登場する多様なリーダーの姿

ここまで、18種類のEQコンピテンシーと、その使い方によって異なるリーダーシップ・スタイルが生まれることを解説してきました。

さらにゴールマンは、優秀なリーダーは無意識に6種類のリーダーシップ・スタイルを状況によって使い分けていると説明しています。

この章では「6種類のリーダーシップスタイル」について、ONE PIECEの具体例とともに紹介していきます。


5-1.ビジョン型リーダーシップ……共通の夢に向かって人々を動かす

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ビジョン型リーダーシップは、組織が目指す夢のビジョンを言葉で描き、前向きな一体感を生み出すリーダーシップです。

「ゴールのためには手段を問わない」という特徴があり、部下たちにはやり方を自分で考え、工夫し、道を見つける自由が与えられます。
すると、自分の役割を明確に把握できるので、メンバー全員が一つの目標に努力している自覚を持ちやすいのです。

そのため、組織に明確な方向性が必要な場面に適しています。

ビジョン型リーダーにとって重要なEQコンピテンシーは「共感」をはじめ、「自信」「鼓舞激励」「透明性」「感情の自己認識」だといわれています。

加えて、組織の変革が必要な際には「変革促進」も活きてきます。

ONE PIECEに登場するビジョン型リーダーで想像しやすいのはビッグ・マム海賊団を率いる「シャーロット・リンリン」ではないでしょうか。
その狡猾な戦略性とは裏腹に、あらゆる人種が暮らせる理想の世界「万国(トットランド)」をビジョンに掲げて組織をまとめています。


5-2.コーチ型リーダーシップ……個人の希望を組織の目標に結びつける

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コーチ型リーダーシップは、メンバーがもつ人生の目標や希望を尊重することで信頼を築き、結束力とパフォーマンスを高めるリーダーシップ。

自分の夢やアイデンティティにつながる仕事には、誰でもやる気を出しやすいものです。コーチ型リーダーシップは、個人の希望を組織の目標につなげることでメンバーを育てます。

そのため、「成長の意思があるメンバーに対して最大の効果を発揮する」という特徴があります。
リーダーが自分のことを期待し、気にかけてくれていると感じるので、主体性とパフォーマンスの両方を伸ばしていけるのです。

コーチ型リーダーの中心となるEQコンピテンシーには「育成力」「感情の自己認識」「共感」が挙げられます。

ONE PIECEで例を挙げるなら、麦わら海賊団を率いる「モンキー・D・ルフィが間違いなくコーチ型リーダーだといえるでしょう。
それぞれの仲間の夢や価値観をとことん理解し、手助けし、組織の方向性に結びつけることで求心力のある組織を実現しています。


5-3.関係重視型リーダーシップ……人々を互いに結びつけてハーモニーを作る

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関係重視型リーダーシップは、部下の気持ちを最も大切にし、自分自身も周囲に感情を共有することで組織の共鳴を生み出すリーダーシップです。

パーフォーマンスに関わらずメンバーを人間として大切にするのが特徴で、このようなリーダーの下には忠実な部下が育ち、精神的な絆が強まります。

こうした絆は、ストレスのある状況でも士気を高めたり、メンバー間の亀裂を修復するときに大きな力を発揮してくれます。

関係重視型リーダーには、「共感」「チームワークと協調」「紛争処理」を中心としたEQコンピテンシーが必要だといわれます。

ONE PIECEに登場する関係重視型リーダーは白ひげ海賊団を率いた「エドワード・ニューゲート」ではないでしょうか。
部下を「息子」と呼び、家族のように愛することで、結束の文化が非常に強い組織を作っています。


5-4.民主型リーダーシップ……提案を歓迎し、参加を通じてコミットメントを得る

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民主型リーダーシップは、関係者全員を巻き込んで信頼と尊敬を育むリーダーシップスタイルです。

リーダーがメンバーの提案や意見に耳を傾けるので、合意に納得できる、全員の知恵やアイデアを活かせるといった利点があります。

特に、リーダー一人でメンバーに指針を示すのが難しい場合などには、このアプローチが最も適しているでしょう。

民主型リーダーは、「チームワークと協調」「紛争処理」「影響力」の3つのEQコンピテンシーのうえに成り立ちます。

ONE PIECEで例を挙げるなら、ハートの海賊団を率いる「トラファルガー・ロー」が民主型リーダーによく当てはまります。
ローは部下が安心して意見をいえるオープンな環境を作り、率直に話し合うことで一体感を高めています。
一見ドライに見えることもあるハートの海賊団メンバーですが、そんな多様性を認めるユルさこそ、ローの組織の強みなのかもしれません。


5-5.ペースセッター型リーダーシップ……難しくやりがいのある目標の達成を目指す

ここから紹介する2つのリーダーシップ・スタイルは、使うタイミングややり方を誤ると組織に破壊を招く危険なスタイルであると紹介されています。

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ペースセッター型リーダーシップは、優秀で徹底的なリーダーが高レベルのパフォーマンスを見せ、メンバーにも同水準の努力と結果を求めるリーダーシップ。

このやり方は、限られた場合にのみ非常に高いパフォーマンスを発揮します。

ONE PIECEでは、ドンキホーテ海賊団を束ねる「ドンキホーテ・ドフラミンゴ」が例として挙げられるでしょう。

ゴールマンは「メンバー全員が非常に有能で、モチベーションが高く、指導監督をほとんど必要としない場合」に適していると説明しています。

ペースセッター型リーダーシップの基礎となるのは、常に向上をめざす「達成意欲」とチャンスを掴もうとする強い「イニシアチブ」のコンピテンシー。

・・・しかしながら、強引にプレッシャーをかけ過ぎると、メンバーに不信感などの感情的な問題が生じやすいので注意が必要です。


5-6.強制型リーダーシップ……緊急時に明確な方向性を示すことで恐怖を鎮める

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強制型リーダーシップは、メンバーに強制的な圧力をかけ、文句なしに命令に従うことを要求するリーダーシップです。

ゴールマンはこのやり方を、「不協和感を招きモチベーションを奪う」リーダーシップスタイルであると非難しつつ、「思慮分別のあるリーダーが危機的状況を乗り切るために役に立つこともある」と説明しています。

例えば、大幅な方向転換が必要な緊急事態

一時的に強制力を行使することで、組織を修復できる可能性があります。

強制型リーダーシップを使いこなすには、「影響力」「達成意欲」「イニシアチブ」のEQコンピテンシーが必要です。

また、暴走を防ぐために「感情の自己認識」「感情のコントロール」「共感」も必要だといわれています。

ONE PIECEに登場する強制型リーダーはファイアタンク海賊団を率いる「カポネ”ギャング”ベッジ」です。カポネの組織は容赦のない命令系統で成り立っており、緊急の戦闘時などには大きな威力を発揮します。


6.まとめ

以上、EQリーダーシップとリーダーシップスタイルの分類について紹介してきました。

いかがでしたか・・・?

ONE PIECEファンの皆さんはもちろん、周囲の上司や家族に心当たりがあったという方も多いのではないでしょうか?

EQの要素は、大人になってからでもトレーニングで鍛えられるそうです。

自分の得意な型を見つけ、場面によって使い分ける練習をすることでリーダーシップを効果的に磨いていけるかもしれません。

各リーダーシップ・スタイルの詳細や具体例、EQを高める方法などさらに興味が湧いた方は、ぜひ本書を手に取ってみてくださいね。

それでは!

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