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平塚市美術館「こどもたちのセレクション」エピソード①

 初めて開催した鑑賞会から書こうかな…と思いましたが、今、開催中の展覧会:平塚市美術館「こどもたちのセレクション」のエピソードから書きます。

 今回の展示に関しては、2015年4月~22年1月の期間、平塚市美術館主催で冨田を講師としてお招きいただいて実施した、鑑賞ツアー参加者の「記録用紙」を集計・考察しました。(「記録用紙」の作成はご家族へのプレゼントとして、20年来、書いています。そこで得た学びを、育児する方々と美術界へ還元するよう取り組んでいます)

 所蔵品を展示するということで、集計したのは、館外からお借りした作品が展示されている「企画展」を除いた「所蔵品展」での鑑賞会に参加した方々の記録。計430枚。 

 7年分。。。徐々に入力していたとはいえ、かなり膨大なデータ作業。。。しかもハプニング続出。集計後に数十人分の未入力が見つかり大急ぎで入力したり、「その作品を見た子どもの人数」を反映した分母を揃える計算を経て作品の順位を確定すべき点を失念していて集計をやり直したり、人数の合計が合わなかったので記録用紙を1枚ずつ確認したり。

 ヒ~となりながら、何とか終えることができました。
 忍耐強く協力してくれたスタッフ(NPO法人 赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会)と、たびたびの修正に快く付き合ってくださった担当学芸員さんに、感謝します!

 結果、
1章 子どもたちの反応が多かった作品を中心に、草花や動物モチーフの作品を含めて
2章 子どもたちが不思議だなと思う作品
3章 数は上位でないけれど「湘南ならではの作品・学芸員さんの印象に残った作品・私自身、子どもたちとの思い出が深い作品」
 で構成しました。

 では展示室へ。

●お出迎えは「花」をモチーフにした2作品です

・前田青邨『桃花』1961年 82.0×63.8cm  彩色・紙
・大河内信敬『薔薇』制作年不詳 53.0×45.5cm 油彩・ボード

 花の絵は子どもたちも大好き。花の絵は今回データを集計して候補にのぼった90作品の中に、いくつかありました。どれも特徴が異なるし、エピソードもそれぞれある。でもスペース的に30点前後に絞る。とても悩ましかったです。

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 前田青邨(まえだ  せいそん)さんは、昭和の日本画界を代表する作家さんの1人です。ぜひ子どもたちに見てほしいと学芸員さんも私も迷いなく決定。

 赤い花の色が、画面いっぱいに広がっています。
「赤」「お花」と、小さい子たちが見てわかって嬉しくなっちゃう要素モリモリ♡

 0歳 6ヶ月 赤い色に反応した。「おー」と声を出した
 0歳11ヶ月 花に手を振る
 1歳11ヶ月 「おはなだー」と指をさす

 想像してみてください~ 抱っこされて、絵の前で赤いお花に手を伸ばしたり、家族に伝えようとアイコンタクトする子どもたち。本当に可愛いのです!

 1歳 6ヶ月 木・雨と言っていた。色の名前を言っていた 

 たしかに。桃なので、緑の茎ではなく茶の枝が描かれています。よく見ているなぁ。
 子どもたちは、大人がスルーしてしまうようなところに気づくことが多いんです。だから子どもと鑑賞すると、大人も「よくみてみよう」という気になる。大人にも発見がある。

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 大河内信敬(おおこうち  のぶひろ)さんの『薔薇』は、白と黒の縦のラインが印象的な作品です。黒のラインの中に細く赤色も入っています。
 花びらも黒い線で縁取られていて、くっきりしています。背景一面にぬられた青と、花びらの赤、白、ピンク、薄いイエローなどの色の対比も美しい。

 このような『白黒など色のコントラストが強い作品に、0歳から1歳頃の子どもたちが注目する』という傾向は、前回調査した2012年の分析時に出ました。

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●同じテーマだから気づく、表現の違い

 『桃花』は、ほんわり優しいタッチ。『薔薇』はくっきりした印象。
 花という同じテーマで、似た構図で描かれた2つの作品を並べることで、画家ぞれぞれが目指した表現の違いなどが浮かび上がってきます。「日本画」と「油彩」の違いも感じられる。

 各地の美術館では「花」「風景画」など、テーマに沿って、いろいろな画家の絵が展示されることがあります。また1人の画家が同じテーマで描いていても、作品ごとに少しづつ違いがある。
 自分の好みにフィットする作品を見つけるつもりで展示室を巡ってみるのも楽しいです。
 子どもと一緒なら『自分の好きな作品を見つけて「せーの」で確認する』なんて方法も、「なんでなんで~?」と聞きたくなって、盛り上がります♪
 

平塚市美術館「こどもたちのセレクション」は2022年9月19日まで開催しています!

https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/20162006_00019.html

(本稿は美術館ご担当者様に確認いただき掲載しております)

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